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2型糖尿病患者の「栄養不良の二重負荷」問題 ビタミン・ミネラル不足が明らかに

過栄養・肥満の関与が大きいと捉えられることの多い2型糖尿病だが、実際にはビタミンやミネラルが不足している患者が少なくないことが、システマティックレビューとメタ解析により明らかになった。経口血糖降下薬のメトホルミンが処方されている人では、ビタミンB12の不足が多いことも示されている。著者らは、「糖尿病患者において、栄養不良の二重負荷が生じている」としている。

2型糖尿病患者の「栄養不良の二重負荷」問題 ビタミン・ミネラル不足が明らかに

2型糖尿病における栄養不良の二重負荷の実態は?

2型糖尿病の患者数は世界的に増加しており、その原因の多くは、運動不足と不適切な食習慣、より具体的には過食による肥満にあるとされている。その一方で、微量栄養素の不足がインスリン抵抗性の発生に関与することを示唆する研究結果が報告されている。ただし、2型糖尿病患者の栄養状態に関する研究の大半は、主要栄養素の過剰に焦点を当てており、微量栄養素の不足は顧みられることが少ない。

近年、世界中で肥満や2型糖尿病の増加に象徴される過栄養が健康課題となっているのと同時に、依然として多くの人々が低栄養に苛まれている実態を「栄養不良の二重負荷(double burden of malnutrition)」と呼び、対策が急がれている。この問題は通常、ある国や地域内で相反する栄養状態の人々が存在することをさす。しかし、糖尿病患者に対しては栄養素摂取量を適切にする(多くの場合は抑制する)という指導介入が行われ、それが過剰になされた場合、栄養不良の懸念が生じる。このことから、2型糖尿病患者という集団内でも「栄養不良の二重負荷」が発生している可能性がある。また、前述のように、微量栄養素不足が2型糖尿病の一因である可能性もある。

これらを背景として、今回紹介する論文の著者らは、2型糖尿病患者の微量栄養素の不足について、システマティックレビューとメタ解析による検討を行った。

文献検索とメタ解析の対象について

システマティックレビューは、Embase、ProQuest、PubMed、Scopus、コクランライブラリ、Google Scholar、LILACS、および灰色文献(学術的ジャーナルに掲載された論文以外の記事)を対象として、PRISMAガイドラインに則して行われた。包括基準は、18歳以上の2型糖尿病患者の微量栄養素の不足を検討した横断研究、縦断研究、無作為化比較試験などであり、除外基準は1型糖尿病や妊娠糖尿病、18歳未満での検討、および、症例報告、ケースシリーズ、レビューなど。

文献データベースから7,344報がヒットし、それ以外の灰色文献として1,466報を特定。重複削除後の4,886報を2名の研究者が独立して、タイトルと要約に基づくスクリーニングを実施。採否の意見の不一致は3人目の研究者との討議により解決した。160報を全文精査の対象として、127報(データセットとしては132件)の報告を適格と判断した。

132件の研究の対象者数は合計5万2,501人だった。研究デザインは横断研究が94件で最多であり、研究対象は大半(124件)が医療機関ベースであって、26件は糖尿病合併症を有する対象で検討され、30件はメトホルミンが処方されている患者でのビタミンB12不足(同薬の服用でB12レベルが低下することが知られている)を調査していた。報告年は96件が2016年以降で、128件は英語で報告されていた。

調査されていた微量栄養素は、ビタミンではA、B1、B6、Eが各1件、B12が36件、Cが2件、Dが67件であり、ミネラルではヨウ素、カリウムが各1件、鉄が3件、マグネシウムが16件、亜鉛が2件などだった。

2型糖尿病患者の45%が微量栄養素不足

微量栄養素不足の分布を正規分布に近づけるための統計学的処理(二重アークサイン変換)の後のメタ解析により、2型糖尿病患者における微量栄養素不足の有病率は45.30%(95%CI;40.35~50.30)と計算された。このほか本研究では、性別、医療機関ベースか地域ベースかの別、地域別など、いくつかのサブグループで解析がなされている。

男性より女性、地域ベースより医療機関ベースの研究で、微量栄養素不足の有病率が高い

2型糖尿病患者の微量栄養素不足の有病率を性別にみると、男性は42.53%(95%CI;36.34~48.72)、女性は48.62%(42.55~54.70)であり、女性の有病率のほうが高かった。地域ベースと医療機関ベースの比較では、前者での有病率は46.30%(41.21~51.43)、後者は22.49%(5.98~45.55)であり、医療機関ベースのほうが有病率が高かった。

地域別にみた場合、最も高い有病率は北南米の54.04%(35.07~2.48)だった。次いで東南アジアが49.73%(38.88~60.60)であり、以下、東地中海が46.94%、アフリカ40.54%、欧州39.82%、西太平洋39.21%と続いた。

微量栄養素別の不足の有病率

3件以上の研究報告のある微量栄養素(ビタミンD、B12、マグネシウム、鉄)については、それぞれ単独での解析も行われている。それらの中で不足の有病率が最も高かったのはビタミンDであり、60.45%(55.17~65.60)だった。次いでマグネシウムが41.95%(27.68~56.93)、鉄は27.81%(7.04~55.57)、ビタミンB12は22.01%(16.93~27.57)だった。

なお、ビタミンB12については、メトホルミンが処方されている患者を対象とする研究でのメタ解析も行われており、有病率は28.72%(21.08~36.37)であって、全体解析より6.7パーセントポイント高値だった。

糖尿病の栄養介入では、総合的な最適化を優先すべき

これらの結果を基に著者は、ジャーナル発のプレスリリースの中で、「我々の研究結果は、2型糖尿病の患者集団において、栄養不良の二重負荷が実際に起こっていることを示している。2型糖尿病の治療では、エネルギー出納と主要栄養素の摂取量に重点が置かれることが多いが、いくつかの微量栄養素不足の有病率の高さが明らかになったことから、総合的な栄養の最適化が常に優先されるべきであることの再認識が求められる」と記している。

なお、解釈上の留意点として、一般集団での微量栄養素不足の有病率のエビデンスがなく、比較が不能なこと、および、システマティックレビューで抽出された研究の大半は横断研究であったため、微量栄養素不足発生の時間的前後関係が不明な点を指摘。そのうえで、後者の点に関連し、微量栄養素の不足がインスリンシグナル伝達経路に影響を及ぼし、2型糖尿病発症に重要な役割を果たすことも考えられるとしている。

文献情報

原題のタイトルは、「Burden of micronutrient deficiency among patients with type 2 diabetes: systematic review and meta-analysis」。〔BMJ Nutr Prev Health. 2025 Jan 29;0:e000950〕
原文はこちら(BMJ Publishing)

プレスリリース

Lack of essential vitamins and minerals common in people with type 2 diabetes(BMJ)

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