スポーツ栄養WEB 栄養で元気になる!

SNDJ志保子塾2024 ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー
一般社団法人日本スポーツ栄養協会 SNDJ公式情報サイト
ニュース・トピックス

自転車競技におけるカフェイン摂取量は4~6mg/kgがおすすめ? タイムやパワーが有意に上昇

自転車競技のタイムトライアルにおけるカフェインの影響を、これまでの研究を基に摂取量別に解析した結果が報告された。4~6mg/kgを摂取した場合には、タイムの短縮と平均出力の上昇という有意な影響が認められ、1~3mg/kgでは非有意だったという。

自転車競技におけるカフェイン摂取量は4~6mg/kgがおすすめ? タイムやパワーが有意に上昇

カフェインをカプセルまたは液体として摂取した場合の自転車競技への影響をメタ解析

カフェインはアスリートの間で最もよく用いられているサプリメントの一つであり、持久系競技におけるエビデンスも少なくない。カフェイン摂取による持久系パフォーマンスへの影響は目を見張るほどのものではないが、わずかな違いが試合結果を左右することもある。例えば2016年のアテネ五輪における男子自転車個人ロードの上位3位の平均速度の差は、0.01%未満だったという。

カフェインの持久系パフォーマンスに対する影響のメタ解析も既に行われている。しかし、それらの報告は包括基準がややあいまいで、複数の競技(自転車以外に水泳、ボート、陸上長距離など)も含まれていたり、カフェインの摂取形態(吸収の速いガムを用いた研究も除外していない)、他のサプリメントを同時摂取した研究も解析対象に含めているなどの点で、解釈上の限界点があり、また結果の一貫性も十分でなかった。そのため、自転車競技に最適なカフェイン摂取量はいまだ明らかになっていない。

自転車競技、カフェイン事前摂取、ガムは除外などに条件を絞り込みメタ解析

以上を背景として、本論文の著者らは、自転車競技に焦点を絞りカフェイン摂取の至適用量を、システマティックレビューとメタ解析により検討した。システマティックレビューとメタ解析のための優先報告事項(PRISMA)に準拠して、文献データベース、PubMed、Web of Science、EMBASE、中国国家知識基盤機構(China National Knowledge Infrastructure)に2002年1月~23年12月に収載された論文を対象に検索。キーワードは、カフェイン、コーヒー、自転車競技、サイクリスト、運動、パフォーマンス、タイムトライアルなどを用いた。また、必要に応じてGoogle ScholarとScopusを用いたハンドサーチも行った。

包括基準は、研究参加者がサイクリストであり、カフェインの単独摂取がタイムトライアルのパフォーマンスの記録(time)または平均出力(mean power output;MPO)に及ぼす影響を、プラセボ対照で盲検化されたデザインにより検討した研究とした。除外基準は、運動中にカフェインまたはエナジードリンクを摂取するプロトコル、カフェイン感受性遺伝子型が異なることが明らかになっている被験者での研究、極端な環境(高地、高温または低温)での研究、カプセルや液体に比較して吸収速度が速いカフェインガムを用いた研究とした。なお、カフェインの最高血中濃度到達時間(Tmax)はカプセルや液体では45〜60分、ガムでは5〜10分。

解析対象研究の特徴

一次検索で1,749報がヒットし、重複削除後の1,342報を2名の研究者が独立して、タイトルと要約に基づくスクリーニングを実施。41報に絞り込んで全文精査を行った。最終的に35件の試験条件を含む15件の研究報告を適格と判断した。

14件の研究ではタイムトライアルの記録への影響が検討されており、その試験条件は合計18件だった。13件の研究ではタイムトライアル中の平均出力への影響が検討されており、その試験条件は合計17件だった。カフェイン摂取量は1~6mg/kgの範囲で、摂取タイミングは運動開始60分前が大半であり、1件は90分前、他の1件は血清カフェイン濃度のピークを確認後に運動を開始していた。

4~6mg/kgではタイム、平均出力のいずれにも有意な影響

メタ解析では、カフェイン摂取とプラセボ摂取を比較した全体解析と、カフェイン摂取量が1~3mg/kgの研究と4~6mg/kgの研究とに分け、記録(time)、平均出力(MPO)に対して解析されている。

タイムに関するメタ解析

タイムトライアルの記録(time)に関する18件のデータのうち、3件は摂取量1~3mg/kgで、15件は4~6mg/kgで行われていた。全体解析では、カフェインを摂取した場合にタイムが有意に短縮することが示された(標準化平均差〈SMD〉-0.50〈95%CI;-0.74~-0.26〉)。

カフェインの用量別にみると、1~3mg/kgで行われた3件はすべて結果が非有意であり、メタ解析の結果も非有意だった(SMD-0.34〈-0.84~0.17〉)。それに対して4~6mg/kgで行われた15件の研究のうち3件は、カフェイン摂取による記録の有意な短縮を報告していて、カフェインを摂取しないほうが記録が良いとする研究はなかった。メタ解析の結果は、SMD-0.55(―0.84~―0.26)であり、カフェイン摂取により有意に記録が向上することを示していた。

平均パワーに関するメタ解析

平均パワー(MPO)に関する17件のデータのうち、6件は摂取量1~3mg/kgで、11件は4~6mg/kgで行われていた。全体解析では、カフェインを摂取した場合にMPOが有意に上昇することが示された(SMD0.37〈0.14~0.60〉)。

カフェインの用量別にみると、1~3mg/kgで行われた6件はすべて結果が非有意であり、メタ解析の結果も非有意だった(SMD0.35〈-0.02~0.65〉)。それに対して4~6mg/kgで行われた11件の研究のうち2件は、カフェイン摂取によるMPOの有意な上昇を報告していて、カフェインを摂取しないほうがMPOが高いとする研究はなかった。メタ解析の結果は、SMD0.44(0.09~0.76)であり、カフェイン摂取により有意にMPOが上昇することを示していた。

東京2020男子8位の選手を3位に引き上げる程度のパワー

以上の結果に基づく統計解析から、カフェインを低用量(1~3mg/kg)摂取した場合に比較して高用量(4~6mg/kg)摂取した場合、タイムトライアルのパフォーマンスが約2%上昇すると計算された。これを2021年の東京オリンピックにおける男子タイムトライアル(富士スピードウェイ、44.2km)の成績に単純に当てはめた場合、8位(57分18秒)だった選手が3位(56分08秒)の表彰台に登っていたことになるという。

ただし、カフェインのエルゴジェニック効果を最大化するには、性別や食習慣、遺伝子型などの考慮が必要と、著者らは付け加えている。

文献情報

原題のタイトルは、「Effect of caffeine ingestion on time trial performance in cyclists: a systematic review and meta-analysis」。〔J Int Soc Sports Nutr. 2024 Dec;21(1):2363789〕
原文はこちら(Informa UK)

この記事のURLとタイトルをコピーする
志保子塾2024後期「ビジネスパーソンのためのスポーツ栄養セミナー」

関連記事

スポーツ栄養Web編集部
facebook
Twitter
LINE
ニュース・トピックス
SNDJクラブ会員登録
SNDJクラブ会員登録

スポーツ栄養の情報を得たい方、関心のある方はどなたでも無料でご登録いただけます。下記よりご登録ください!

SNDJメンバー登録
SNDJメンバー登録

公認スポーツ栄養士・管理栄養士・栄養士向けのスキルアップセミナーや交流会の開催、専門情報の共有、お仕事相談などを行います。下記よりご登録ください!

元気”いなり”プロジェクト
元気”いなり”プロジェクト
おすすめ記事
スポーツ栄養・栄養サポート関連書籍のデータベース
セミナー・イベント情報
このページのトップへ