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女性フィジーク選手の月経異常や怪我リスクが、利用可能エネルギー不足質問票「LEAF-Q」スコアと関連

女性フィジーク選手を対象に、利用可能エネルギー不足(LEA)に関する質問票による調査を行い、REDsの初期症状の可能性のある月経異常や消化器症状、怪我の発生リスクとの関連を検討した結果が報告された。解析対象の半数近くがLEAであり、質問票のスコアと月経異常、怪我による欠場などとの有意な関連が認められたという。

女性フィジーク選手の月経異常や怪我リスクが利用可能エネルギー不足質問票「LEAF-Q」スコアと関連

女性アスリートのLEAやREDsは関心が高まってきたが、フィジーク選手はやや蚊帳の外

女性フィジークの人気が年高まり、2002年に開催された国際ボディビル・フィットネス連盟では「競技」として認められ、それ以降、毎年200近い連盟加盟国の多くから、国際選手権大会に女性アスリートが参加している。フィジーク競技では、身体的な能力よりもステージ上での美的外観、プレゼンテーションなどが審査の対象となり、選手は筋肉量を維持しつつ脂肪を最小化するダイエットやトレーニングを行っている。そのような状況ではエネルギー出納がマイナスになりやすく、利用可能エネルギー不足(Low Energy Availability;LEA)を来しやすい。また、LEAが慢性的となると、REDs(Relative Energy Deficiency in Sport〈スポーツにおける相対的エネルギー不足〉)としてさまざまな健康障害が発生してくる。REDsの症状として女性では、月経異常の頻度が高いことが知られている。

女性アスリートのLEAやREDsに関しては近年、関心が高まってきており、例えば昨年、国際オリンピック委員会(International Olympic Committee;IOC)はREDsに関するコンセンサスステートメントを発表している。しかし、女性フィジークアスリートのLEAに関してはまだ注目を集めるに至っていない。そこで今回紹介する論文の著者らは、女性のLEAのスクリーニングのための質問票である「Low Energy Availability in Females Questionnaire;LEAF-Q」を用いて、そのスコアと、女性フィジークアスリートのREDsの初期症状の可能性のある諸症状との関連を検討した。著者によると、このような視点での女性フィジーク選手対象の研究は、これが初の試みだという。ポーランドの研究者の報告。

女性フィジーク選手の6割近くが「3カ月以上月経が止まった経験」あり

この研究の参加者は、この領域の著作物があり、女性フィジークアスリートと接点のある研究者の個人的なつながりを利用して集められた104人。適格基準はフィジーク競技会への参加歴があり、現在もトレーニングを行っていること。避妊薬を現在使用中または妊娠中、多嚢胞性卵巣症候群や子宮摘出などトレーニングと関係のない理由による無月経などに該当するアスリートは除外されている。

平均年齢は26.77±5.76歳、BMIは21.25±1.86、トレーニング時間は8.57±2.95時間/週であり、経口避妊薬を使用したことのある選手が13.46%含まれており、その92.86%は避妊目的、7.14%は月経の調整目的だった。

調査時点で4人に1人は「月経周期に問題がある」と回答

104人のうち78人(75.00%)は、調査時点で「月経周期に問題はない」と答え、25人(24.04%)は「月経周期に問題がある」と回答した。他の1人(0.96%)は「わからない」を選択した。ただし、過去の経験について質問すると、「(妊娠中以外に)月経周期が3カ月以上止まった経験がない」との回答は41.35%に過ぎず、58.65%は3カ月以上月経がないという経験を有していた。さらに、15.38%はこの調査時点でその状況にあった。

調査時点で月経周期に問題のある選手と問題のない選手を比較すると、前者の群は年齢が若く(23.80±3.70 vs 27.72±6.02歳、p=0.001)、トレーニング時間が長いという差が認められた(9.96±2.81 vs 8.14±2.88時間/週、p=0.002)。また、月経周期に問題のある女性は、月経とは関係のない生理痛や腹痛に苦しむ可能性が有意に高かった(p<0.01)。

さらに、月経周期に問題のある選手では、トレーニングの強度を強めたり頻度や時間を増やすと、月経の異常(多くは月経の欠如)が増えるという関連も認められた(p=0.015)。ただしこのような変化は、月経周期に問題がないと回答したアスリートでも認められた。

LEAF-Qスコアが高いハイリスクのフィジーク選手は怪我や消化器症状も多い

本研究に使用された女性アスリートのLEA質問票「LEAF-Q」は、月経異常、消化器症状、怪我の発生という三つセクションに分かれた25の質問からなり、合計スコアが8以上の場合にLEAのリスクありと判定する。本研究の対象では、46.15%がそのように判定された。

LEAのリスクのある群はリスクのない群に比べて若年で(P<0.018)、トレーニング頻度が高かった(p<0.028)。また、怪我のためにトレーニングを休む頻度も高く(p=0.024)、休まざるを得ない場合、その期間が長い傾向があり(p=0.051)、月経周期が正常の割合が少なかった(p=0.001)。さらに、LEAのリスクのある群は腹部膨満感、月経と関連のない腹痛や下痢など消化器症状の頻度が高く、排便回数が少ないなどの有意差が認められた。

フィジーク選手はスポーツ栄養の原則を採用しがたい?

著者らは、体組成や性ホルモンレベルを評価していないことを本研究の限界点として挙げている。そのうえで、スポーツ栄養の原則に関する知識と正しいトレーニングは、アスリートの健康とパフォーマンスにとって極めて重要であり、審美系スポーツではエネルギー収支がマイナスになりやすくLEAリスクが上昇するが、その発生を早期に把握できれば治療介入が可能になるとしている。とはいえ、女性フィジーク選手の場合、とくに競技前の期間であれば、それは非現実的であるとの現実的な問題を掲げつつ、LEAF-Qスコアが8以上で特定されるハイリスクな選手は、怪我の多発など、REDs関連の事象が好発していることを強調している。

文献情報

原題のタイトルは、「Menstrual cycle disorders as an early symptom of energy deficiency among female physique athletes assessed using the Low Energy Availability in Females Questionnaire (LEAF-Q)」。〔PLoS One. 2024 Jun 7;19(6):e0303703〕
原文はこちら(PLOS)

SNDJ特集「相対的エネルギー不足 REDs」

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