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ソーシャルメディアを活用した父親に対する食事・運動指導が本人の生活習慣を改善し子どもにも好影響 国内研究

学齢期の子どものいる世帯の父親に対して、健康的な食事・運動習慣に関するソーシャルメディア(SNS)ベースの教育プログラムを提供することで、父親本人のライフスタイルが改善するとともに、子どもの健康という点でも好ましい変化が生じる可能性を示した研究結果が報告された。東京医科歯科大学大学院保健衛生学研究科公衆衛生看護学の丸山佳代氏らの研究によるもので、「International Journal of Environmental Research and Public Health」に論文が掲載された。

東京医科歯科大学は東京工業大学と統合し2024年10月1日より、国立大学法人「東京科学大学」に改称予定。

ソーシャルメディアを活用した父親に対する食事・運動指導が本人の生活習慣を改善し子どもにも好影響 国内研究

父親へのアプローチを介して子どもの健康的ライフスタイルの確立を目指す

日本人の死因の多くを占める非感染性疾患(non-communicable diseases;NCD)には、非健康的な食習慣や身体活動の不足が関与しており、そのような生活習慣は小児期に形成され成人後に引き継がれやすいことが報告されている。そのためNCDの抑制には、成人のみではなく、小児期の段階で健康的な生活習慣が身に付くような公衆衛生施策も必要と考えられている。

近年の研究では、母親に限らず父親の食習慣や運動習慣が子どもの健康に与える影響が明らかになり、父親も子どもの健康的なライフスタイルの確立に貢献できる可能性が示されている。しかし、日本では未だ母親に比べて父親は長時間労働のために子どもと接する時間が少ない傾向がある。また、学齢期の子どもをもつ世代では、女性よりも男性のほうが肥満やメタボリックシンドロームの有病率が高く、予防的介入の必要性が高い。

他方、近年はインターネットの普及により食事・運動指導においてもその利用が試みられている。この手法は時間や場所が制限されないため、従来の対面式の指導を受ける機会のなかった男性へのアプローチも可能。

丸山氏らは、これらの現状を背景として、学齢期の子どものいる世帯の父親に対し、SNSベースのeラーニングとして食事・運動教育プログラムを提供し、父親本人と子どもの生活習慣を変え得るかという検討を行った。

約90人の父親を対象に無作為化比較介入試験で有効性を検討

研究参加者は、6~12歳の子どものいる家庭の父親として、FacebookやInstagram、口コミなどで募集。

2022年5~9月に99人が応募し、89人が研究に参加。無作為に2群に分け、46人を介入群、43人を非介入群(対照群)とした。両群の参加者の年齢(介入群42.71±5.2vs 対照群43.33±5.6歳)、および子どもの年齢(9.1±1.6 vs 9.1±1.7歳)は同等であり、父親の教育歴、有病率、家族形態(同居者数)にも有意差はなかった。

介入群に提供したプログラム

介入プログラムは、父親と子どもの健康的な生活習慣、生活習慣病、健康的な食事スタイル、健康的な身体活動という四つのトピックに関する、約3分間の動画を2週間に1回、計6本、スマホアプリに配信し、あわせてハンドブックを提供するというもの。内容は父親と子どもが一緒に視聴するのに適したものであり、動画の最後はクイズなどで復習するという構成。ハンドブックの重要な頁にはシール欄があり、父親が読んだことを確認した子どもがシールを貼るという仕組みで、親子で学べるように工夫されている。

内容の一部を挙げると、生活習慣病については、肥満とメタボリックシンドロームの違い、体重管理、子どもの睡眠とスクリーンタイムなど、食事については、バランスの良い食事のメリット、推奨される野菜摂取量・エネルギー量、父子で作る野菜たっぷり料理など、身体活動については、そのメリット、家族で取り組む+10(プラステン)、子どもの成長に合わせた運動遊びや子どもが運動に取り組むヒケツの解説など。

介入効果の評価方法

介入前と介入3カ月後、4カ月後という3時点で、父親本人の健康的な生活習慣に関する知識、およびその実践について、1~5点のリッカートスコアで回答してもらい、その変化と群間差を検討した。

子どもの生活習慣の変化については、父親へ質問して得た回答から評価した。

父親本人と子どもに有意なプラスの変化

介入群における動画の視聴回数は、中央値4.5回であり、6回すべてを視聴したのは47.1%であった。介入効果について論文では、3カ月および4カ月後の変化が詳細に述べられているが、ここでは介入前から4カ月後の主な変化のみを紹介する。なお、4カ月後の調査の追跡率は88.4%だった。

父親の変化

まず父親本人の変化についてみると、介入群では、「バランスのとれた食事」、「推奨される摂取エネルギー量」、「推奨される野菜摂取量」、「推奨される身体活動量」、「自分の適正体重」などに関する意識・知識面の評価が有意に向上し、さらに「1日に摂取する野菜料理の数」、「エネルギーを考えて摂取する」、「塩分を控える」など、行動面にも有意な変化が生じていた。

計19項目の質問のうち有意な変化が観察された項目数は、介入群では14項目であるのに対して対照群は6項目にとどまった。

子どもに関連する変化

子どもに関連する変化については、介入群では、子どもの「食事への関心」、「運動習慣への関心」などの点で、父親の意識が有意に向上したことが報告された。ただし、子どもの行動面の変化を質問した、「甘い物を食べ過ぎない」、「体育の授業以外での身体活動量」などについては、有意な変化は観察されなかった。

計10項目の質問のうち有意な変化が観察された項目数は、介入群では4項目であるのに対して対照群は1項目にとどまった。

動画視聴回数の多さが健康意識の変化と関連

介入群において、過半数(52.9%)が提供されたプログラムに「満足した」と回答し、約6割(58.8%)が「健康意識が変化した」と回答。また約3割(29.4%)はプログラムが「家族にも良い影響を与えた」と報告した。

なお、動画視聴回数の中央値(4.5回)で二分して比較すると、視聴回数が多い群のほうが「健康意識が変化した」との回答が有意に多かった(p=0.013)。

SNSベースの介入プログラムは、父親と子どもを変える可能性を秘めている

著者らは本研究で用いたeラーニングという介入手法の強みとして、「ファシリテーターなしでセッションを完了でき、かつ参加者が自分のペースでプログラムを完了できることから、多忙な生活者であっても参加継続のモチベーションを保ちやすいのではないか」と述べている。また、父子の生活習慣の関連を軸とし、子どもの健康を動機づけとした成人男性向けの健康教育は父親の行動変容のきっかけにつながる可能性がある。

論文の結論は、「父親向けのSNSベースの食事と運動の教育プログラムは、父親本人の意識と行動を改善した。子どもの行動面への間接的な影響は観察されなかったが、父親が子どものライフスタイルと健康管理に関心をもつようになる可能性が示唆された」とまとめられている。

文献情報

原題のタイトルは、「Effectiveness of a Social-Media-Based Diet and Physical Activity Programme for Fathers in Japan: A Randomised Controlled Trial」。〔Int J Environ Res Public Health. 2024 Aug 21;21(8):1104〕
原文はこちら(MDPI)

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