新型コロナウイルスのパンデミックで若い世代の食生活に変化 令和2年度 食育に関する意識調査
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックが、家庭の食卓に及ぼしている影響の実態が明らかになった。自宅で食事をとる回数や料理をつくる回数が増えたとの回答が大きく増加した。農林水産省がこのほど発表した、「令和2年度 食育に関する意識調査」の結果を、COVID-19関連以外の調査結果も含めて紹介する。
パンデミック第3波に実施
農林水産省は、食育に対する国民の意識を把握するために、「食育に関する意識調査」を年1回実施している。令和2年度調査は昨年12月3~23日という、パンデミック第3波が拡大局面にある時期に、郵送またはインターネットを用いた自記式調査で行われた。対象は全国の20歳以上の男女5,000人。有効回答は2,395人(47.9%)だった。
COVID-19関連の調査項目の結果
COVID-19パンデミックによる食生活の変化
COVID-19パンデミック以前に比べて食生活が変化したかを聞いたところ、「自宅で食事を食べる回数」(35.5%)、「自宅で料理を作る回数」(26.5%)などについて、「増えた・広がった」との回答率が高く、食生活の変化がみられた(図1)。
図1 新型コロナウイルス感染症の拡大による食生活の変化
COVID-19パンデミックによる若い世代の食生活の変化
世代別にみると、特に若い世代(20~30代)では、「自宅で食事を食べる回数」、「自宅で料理を作る回数」、「家族と食事を食べる回数」、「通販(オンライン)を利用した食品購入」、「食に関する情報の入手」、「おいしさや楽しさなど食を通じた精神的な豊かさ」、「オンラインを利用して家族や友人と食事をともにすること」等について「増えた・広がった」と回答した人が多かった(表1)。
第4次食育推進基本計画で新たに目標値に設定された項目について
今回の調査では、第4次食育推進基本計画で新たに目標値に設定された項目に関する質問項目も設けられていた。
新たな目標として加わった項目のうち、「産地や生産者を意識して農林水産物・食品を選ぶ人」は73.5%、「環境に配慮した農林水産物・食品を選ぶ人」は67.1%、「郷土料理や伝統料理を月1回以上食べている人」は44.6%だった(図2)。
図2 第4次食育推進基本計画で新たに目標値に設定された項目
その他の主な調査項目の結果
食育への関心について
食育に関心があるか、それとも関心がないか聞いたところ、『関心がある』と回答した人が83.2%(「関心がある」35.7%+「どちらかといえば関心がある」47.5%)、『関心がない』と回答した人が15.9%(「どちらかといえば関心がない」13.4%+「関心がない」2.5%)となった(図3)。
図3 食育への関心度
現在の食生活について
健全な食生活の心掛け
日頃から、健全な食生活を実践することを心掛けているか聞いたところ、『心掛けている』と回答した人が75.7%(「常に心掛けている」14.5%+「心掛けている」61.1%)、『心掛けていない』と回答した人が23.6%(「あまり心掛けていない」21.8%+「まったく心掛けていない」1.8%)となった(図4)。
図4 健全な食生活の心掛け
バランスのよい食事の頻度
主食・主菜・副菜を3つそろえて食べることが1日に2回以上あるのは、週に何日あるか聞いたところ、「ほぼ毎日」と回答した人が36.4%、「週に4~5日」と回答した人が26.3%、「週に2~3日」と回答した人が24.5%、「ほとんどない」と回答した人が12.2%となった(図5)。
図5 バランスのよい食事の頻度【総数】
世代別では、若い世代(20~39歳)では、「ほぼ毎日」と回答した人が27.4%、「週に4~5日」と回答した人が22.4%、「週に2~3日」と回答した人が27.7%、「ほとんどない」と回答した人が22.2%となった。性別では、「ほぼ毎日」と回答した人は女性で高い(図6)。
図6 バランスのよい食事の頻度【20~39歳】
朝食を食べる頻度
ふだん朝食を食べるか聞いたところ、「ほとんど毎日食べる」と回答した人が81.3%、「週に4~5日食べる」と回答した人が5.7%、「週に2~3日食べる」と回答した人が4.4%、「ほとんど食べない」と回答した人が8.3%となった(図7)。
図7 朝食を食べる頻度
若い世代(20~39歳)では、「ほとんど毎日食べる」と回答した人が68.3%、「週に4~5日食べる」と回答した人が10.2%、「週に2~3日食べる」と回答した人が6.1%、「ほとんど食べない」と回答した人が15.4%となった(図7)。
普段の食事の準備
普段の食事を自分で準備しているか聞いたところ、「ほとんどのものを食材から調理して、食事を準備している」と回答した人が29.5%、「一部市販食品を取り入れて、食事を準備している」と回答した人が42.1%、「ほとんどのものに市販食品を利用して、食事を準備している」と回答した人が8.4%、「自分で食事を準備していない」と回答した人が19.6%となった(図8)。
図8 普段の食事の準備【総数】
普段の食事の準備について、性別にみると、「ほとんどのものを食材から調理して、食事を準備している」と回答した人は女性で約4割と高かった。 性・年齢別にみると、「自分で食事を準備していない」と回答した人は男性のすべての年代で3割を超えていた。
食に関する情報源
食に関する情報をどこから入手しているか聞いたところ、「テレビ」を挙げた人が74.9%と最も高く、続いて、「スーパーマーケットなど食品の購入場所」(48.9%)、「新聞・雑誌」(45.1%)、「家族とのやりとり」(38.4%)、「インターネット上のニュースサイト」(35.4%)の順となった(図9)。
図9 食に関する情報源
生活習慣病の予防や改善に関する食意識や実践について
生活習慣病の予防や改善に関する実践
生活習慣病の予防や改善のために、ふだんから適正体重の維持や減塩などに気をつけた食生活を実践しているか聞いたところ、『実践している』と回答した人が64.3%(「いつも気をつけて実践している」11.7%+「気をつけて実践している」52.5%)、『実践していない』と回答した人が35.1%(「あまり気をつけて実践していない」32.2%+「まったく気をつけて実践していない」2.9%)となった(図10)。
図10 生活習慣病の予防や改善に関する実践
ふだんゆっくりよく噛んで食べているか
ふだんゆっくりよく噛んで食べているか聞いたところ、『ゆっくりよく噛んで食べている』と回答した人が47.3%(「ゆっくりよく噛んで食べている」8.7%+「どちらかといえばゆっくりよく噛んで食べている」38.7%)、『ゆっくりよく噛んで食べていない』と回答した人が52.1%(「どちらかといえばゆっくりよく噛んで食べていない」42.0%+「ゆっくりよく噛んで食べていない」10.1%)となった(図11)。
図11 ふだんゆっくりよく噛んで食べているか
「食事バランスガイド」について
「食事バランスガイド」の認知度
「食事バランスガイド」を知っているか聞いたところ、『認知している』と回答した人が62.3%(「内容を含めて知っている」25.5%+「名前程度は聞いたことがある」36.8%)、「知らなかった」と回答した人が34.7%となった(図12)。
図12 「食事バランスガイド」の認知度【総数】
「食事バランスガイド」の認知度について性別にみると、「食事バランスガイド」を『認知している』と回答した人は女性で多く、「知らなかった」と回答した人は男性で多かった(図13)。
図13 「食事バランスガイド」の認知度【男女別】
「食事バランスガイド」の参考度
「食事バランスガイド」を「内容を含めて知っている」と回答した人に、「食事バランスガイド」をどの程度参考にしているか聞いたところ、『参考にしている』と回答した人が88.5%(「いつも参考にしている」17.9%+「時々参考にしている」44.1%+「たまには参考にしている」26.6%)、「まったく参考にしていない」と回答した人が11.1%となった(図14)。
図14 「食事バランスガイド」の参考度
調査結果報告書では、上記について図表入りで詳述されている。また上記のほかにも、共食の状況について、食文化について、農林漁業体験について、環境への配慮や産地・生産者を意識することについて(食品ロスの実態など)、食品の安全性について、「日本型食生活」についてという視点で、分析がなされている。
プレスリリース
令和2年度「食育に関する意識調査」の結果を公表します~新型コロナウイルス感染症の拡大で、特に若い世代の食生活に変化~(農林水産省)