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シフトワーカーの健康を守る二つのポイント 職場での十分な休憩確保と、もう一つは…

交替制勤務者(シフトワーカー)の食事や身体活動に関するガイドラインの推奨事項の遵守率は高いとは言えないという実態が報告された。また、ガイドラインの推奨を遵守できていないシフトワーカーに、二つの特徴があることが浮かび上がった。アイルランドで行われた電話アンケート調査の結果を紹介する。

シフトワーカーの健康を守る二つのポイント 職場での十分な休憩確保と、もう一つは…

世界中で増加するシフトワークとそれによる健康障害

先進国を中心に人々の生活が夜型に変化し、24時間眠らない社会になってきている。それに伴い、シフトワーカーも増加している。2010年時点で欧州連合の労働力の17%がシフトワーカーとして雇用されていたが、その割合は2015年までに21%に増加したことが報告されている。またアイルランドでは、労働人口の約15%が交代制勤務者または夜勤者で占められているという。

シフトワークは、心身の健康への悪影響、とくに肥満やメタボリックシンドローム、2型糖尿病、心血管など非感染性疾患(non-communicable diseases;NCDs)のリスクの増加と関連することが明らかになっており、対策が求められている。対策をとるにしても、シフトワークという雇用条件を廃止することは社会経済的に考えにくい。そこで、そのような労働条件を許容しながら、シフトワークではなぜ健康障害のリスクが上昇するのかをまず明らかにしなければならない。

このような背景のもと、今回紹介する研究の著者らは、以下の検討を行った。

研究デザインと対象者

この研究は、アイルランド共和国(n=850)および北アイルランド(n=450)のシフトワーカー、計1,300人対象とする横断研究として行われた。ランダムに抽出された電話番号に電話をかけ、18歳以上のシフトワーカーである場合、約15分間にわたって勤務状況や生活習慣に関するアンケートへの回答を求めた。

対象者の特徴

回答者の主な特徴は以下のとおり。

性別は男性が51.7%、年齢は18~34歳が38.2%、35~54歳が47.2%、55~65歳が14.6%。婚姻状況は未婚が40.6%、配偶者と同居が49.0%。また社会経済的状況を同国での基準で二分すると、48.2%が上位に該当し、51.8%は下位に該当した。

体重カテゴリーは、低体重(BMI18.5未満)2.7%、普通体重(18.5~25未満)45.4%、過体重(25~30未満)35.8%、肥満(30以上)16.1%。

シフトワーク歴は8年未満が47.8%、8年以上52.2%、1回の勤務時間は8時間未満が29.2%、8~11時間が47.8%、12時間以上が23.0%。職場での自動販売機の利用については、利用可能との回答は27.3%であり3割に満たなかった。他方、職場での休憩時間については、69.7%と約7割が適切であると回答していた。

食習慣と身体活動習慣

食習慣については、野菜・果物および全粒穀物、炭酸飲料の摂取量・頻度を評価した。また身体活動習慣については、就業中の身体活動量のほかに、欧州のガイドラインが推奨している週あたり150分以上の中等強度での有酸素運動を行っているか否かを評価した。

食習慣

野菜・果物については40.2%と約4割が、1日5サービング以上摂取していたが、59.8%と約6割は5サービング未満だった。全粒穀物は39.4%と、やはり約4割が1日1食以上摂取しており、60.0%と約6割は1日に1食未満の摂取頻度だった。炭酸飲料については37.5%が週に1サービング以上摂取し、62.5%は全く摂取しないか週に1サービング未満だった。

身体活動習慣

就業中の身体活動は、座業中心が20.2%、若干の身体活動が58.6%、適度な身体活動が16.3%、強度の身体活動が4.9%。余暇時間での150分以上の有酸素運動は39.2%と約4割が実施しており、60.8%と約6割は150分未満だった。

回答者の背景と食習慣・身体活動習慣との関係

上記の調査対象者の特徴と、食習慣や身体活動習慣の傾向との関連について多変量解析を施行した結果、以下のような関連が明らかになった。

食習慣

果物と野菜の摂取量

男性のシフトワーカーは女性のシフトワーカーと比較して、果物・野菜を1日5サービング以上摂取している人が45%少なかった(OR0.55,95%CI;0.40~0.74,p<0.001)。また、社会経済状況が下位の人は上位の人よりも、果物・野菜を1日5サービング以上摂取する人が25%少なかった(OR0.75,95%CI;0.57~0.99,p=0.046)

全粒穀物の摂取量

8年以上シフトワークに従事している人は、従事期間がそれ以下の人よりも全粒穀物を毎日摂取する確率が38%高かった(OR1.38,95%CI;1.05~1.82,p=0.02)。

炭酸飲料の摂取量

若年(18~34歳)のシフトワーカーと比較して、中年(35~54歳)のシフトワーカーは、週に1回以上炭酸飲料を飲む確率が半分で(OR0.50,95%CI;0.34~0.73,p<0.001)、高齢(55~65歳)のシフトワーカーはその確率が67%低かった(OR0.33,95%CI;0.18~0.59,p<0.001)。

また、職場で自動販売機を利用できるシフトワーカーは、そうでない環境で働くシフトワーカーに比較し、週に1回以上炭酸飲料を飲む確率が64%高かった(OR1.64,95%CI;1.18~2.27,p=0.003)。

身体活動

若年のシフトワーカーと比較して、中年のシフトワーカーは、身体活動ガイドラインの推奨を遵守する確率が35%低くかった(OR0.65,95%CI;0.46~0.91,p=0.012)。

また、職場で十分な休憩時間をとることができていないシフトワーカーは、休憩時間を十分とれているシフトワーカーに比較し、身体活動ガイドラインの推奨を遵守する確率が31%低かった(OR0.69,95%CI;0.49~0.96,p=0.026)。

職場での休憩時間確保と、自動販売機の品目を改める

以上の有意な因子のうち、性別や年齢、シフトワーク経験年数などは変化不可能な因子だ。それに対して変更可能な因子も見つかった。

この解析をもとに著者は、「職場環境に関して二つの重要な結果が認められた」としている。すなわち、職場で自動販売機を利用できる人はそうでない人と比較して、炭酸飲料を摂取しやすい傾向があった。このことから、自動販売機で扱う品目を、より健康的な飲料に改善することが有用な可能性が示されたとしている。さらに、職場で十分な休憩時間をとっていないと報告した人は、休憩をとっている人に比べて余暇時間を活動的に過ごしている確率が低かった。

「この研究結果は、シフトワーカーの健康を守るために、個人および組織が行うべき対策の方向性を示している」と、著者は結論の中で述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Adherence to dietary and physical activity guidelines among shift workers: associations with individual and work-related factors」。〔BMJ Nutr Prev Health. 2020 Sep 23;3(2):229-238〕
原文はこちら(BMJ Publishing Group)

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