スポーツの場面でのコロナ対策実施率が上昇 笹川スポーツ財団、第3回全国調査の速報
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が、一般住民の身体活動やアスリートのトレーニング・競技会参加に影響を及ぼしている、とする研究報告は少なくない。しかし、全国規模で、かつ経時的な変化を把握できるデータというと、非常に限られてくる。
こうしたなか、公益財団法人笹川スポーツ財団は、過去2回、全国調査を実施、さらに今般、2月に行った第3回調査の速報を公開した。運動・スポーツの種目別実施率や感染症対策などの変化を見てとれる。
第3回調査の調査期間は2月2~5日。国内でパンデミック第3波が続き、都市部を中心に緊急事態宣言が発出されている最中のことだ。
調査対象は全国の市区町村に居住する18~79歳の男女5,005人で、インターネットにより行われた。なお、調査対象者は、各地域の人口に対する性別と年齢層の比率に一致するように割当てて抽出された。
第1回、第2回調査の結果と比較しながら、結果をみていこう。
感染拡大前と拡大後では、多くの種目の実施率が低下
運動・スポーツを行った人の割合は、COVID-19感染拡大前(2019年2月~2020年1月)の54.3%に対し、感染拡大後(2020年2月~2021年1月)は50.4%であり、3.9ポイント減少した(表1)。
2020年2月~2021年1月の種目別実施率をみると、「ウォーキング」27.4%が1位、以下、「散歩(ぶらぶら歩き)」15.8%、「筋力トレーニング」11.1%、「ジョギング・ランニング」6.5%、「体操(軽い体操、ラジオ体操など)」4.9%と続く。実施率上位5種目は2019年2月~2020年1月の結果と同じだが、その実施率は「ウォーキング」以外、低下していた。
表1 種目別運動・スポーツ実施率
より詳細に種目ごとの変化をみると、「散歩(ぶらぶら歩き)」は3.7ポイント減と低下幅が最も大きく、以下、「サイクリング」「ボウリング」「筋力トレーニング」「水泳」などで実施率が低下している(表2)。
一方、「ウォーキング」は27.6%から27.4%とほとんど変化はみられず、外出自粛による身体活動量維持のために、新たにウォーキングを始めた人も一定数いると推察される。
表2 種目別運動・スポーツ実施率の変化(増減ポイント数)
運動・スポーツ実施時の感染対策実施率が増加
運動・スポーツを実施したと回答した人に、実施する際に気をつけていることをたずねると、「三つの密(密閉・密集・密接)の条件が揃う場所で運動・スポーツを実施しないようにする」64.5%が最も多く、「マスクの着用や咳エチケットに配慮しながら運動・スポーツを実施する」が49.8%、「人と人との間隔を意識して運動・スポーツを実施する」が45.4%だった(図1)。
第2回(10月調査)と比較すると、すべての対策の実施率が増加していた。
図1 運動・スポーツをする際に気をつけていること(10月調査との比較)
感染対策実施率に男女差
前回調査よりも対策実施率が上昇したとは言え、男女別にみると、男性では実施率が低く、10ポイント以上の差がある項目もみられた。
例えば、「マスクの着用や咳エチケットに配慮しながら運動・スポーツを実施する」は、女性は56.0%と過半数であるのに対して男性は44.7%で、11.3ポイントの差があった。また、「筋力トレーニングやヨーガなど自宅で行える運動・スポーツを中心に実施する」は、女性35.4%に対して男性は25.4%で、10.0ポイント差。「少しでも体調に異変を感じたら運動・スポーツの実施は控える」は、女性44.2%、男性35.1%で、9.1ポイント差だ。
全体的に、女性のほうが感染に気をつけながら運動・スポーツを実施していることがわかった。
COVID-19に対するワクチン接種が始まり、パンデミック終息への期待が高まるが、以前のように運動やスポーツを伸び伸びと実践できるようになるには、今しばらく時間がかかるだろう。本調査のような、スポーツ場面の変化がわかる研究へのニーズの高い状態が、当面続きそうだ。
関連情報
新型コロナウイルスによる運動・スポーツへの影響に関する全国調査(2021年2月調査・速報)新型コロナウイルス感染拡大後、運動・スポーツ実施率は減少-笹川スポーツ財団
「2021年2月調査」調査報告書(PDF)-笹川スポーツ財団