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減量目的の運動には注意が必要 運動後の過食を科学的に検証した研究結果

2021年03月11日

身体活動と適切な量・バランスの食事摂取は、どちらも健康づくりに欠かせない。しかし、身体活動によって食欲が亢進して摂食量が増えてしまい、体重管理がうまくいかなくなることがある。その変化を、科学的に検証した研究結果が報告された。60%VO2peakで45分の有酸素運動の直後、および30分後に、食欲が有意に亢進することが確認されたという。

減量目的の運動には注意が必要 運動後の過食を科学的に検証した研究結果

無作為化クロスオーバー法で、有酸素運動後の食欲などを検討

この研究は、米国ネブラスカ大学の学生と、キャンパス周辺の住民から募集されたボランティアを対象に、無作為化クロスオーバー試験として行われた。適格条件は、19~29歳、BMI18.5~30で、週に1回以上の運動習慣があり、過去6カ月以内の体重変動が±2.5kg以内であること。妊娠、喫煙、食欲に影響を与える可能性のある薬物の使用、運動の禁忌、摂食障害の既往、食物アレルギーなどを除外条件とした。

研究参加者は、一晩の絶食とアルコールやカフェインの摂取禁止、および激しい運動を24時間禁止された後、研究室を訪問。前日からの身体活動は加速度計によって監視され、激しい運動をしていたものはデータ解析から除外された。

24時間思い出し法にて摂食内容を確認し、摂食した食品のリストを参加者に手渡し、2回目の試験の前日も同じものを食べるように指示した。

研究室到着後に標準化された小さなスナック(市販のシリアルバー。240kcal、蛋白質8g)と8オンス(237mL)の水をすべて飲食し、30分間休息。空腹感や喉の渇き(口渇感)、ストレスなどの主観的評価に続き、運動負荷上条件では、自転車エルゴメーターを用いて各参加者の60%VO2peak相当の強度で45分間の運動を課した。対照条件は45分間休息状態とした。

写真を用いて食欲を評価

研究室到着時、および45分間の運動負荷または休息の直後に、事前に調査した参加者の好みの食品を異なるサイズで示した写真を提示して、どのくらいの量を食べたいかを選んでもらい、食欲を評価した。エネルギー量は、最小サイズは75kcal、最大サイズは450kcalとした。

この評価を、45分の運動または休息の直後に行った後、両条件ともに30分休息し、3回目の検討を行った。この3回目の検討では参加者に、以後4時間は何も摂食できないことを想定して食べたいものを選んでもらった。

運動負荷は食欲と嗜好に影響を与える

研究参加者数は48名だったが、うち7名は前日の激しい運動が記録されていたことなどにより除外され、41名(女性23名、男性18名)のデータが解析された。解析対象者の平均年齢は22.0±2.6歳、BMIは23.7±2.5、VO2peakは37.3±6.2mL/kg/分。

主観的な満腹感、口渇感は両条件で時間経過とともに有意に増大

結果について、まず、主観的評価項目である、満腹感や口渇感、ストレスなどの変化をみると、研究室到着から運動負荷(または休息)の前、その後30分経過時点にわたる時間経過とともに、空腹感と口渇感が増強するという結果が示された(p<0.001)。ただし運動を負荷した場合と休息を続けた場合とで、これらの指標に群間差はなかった(p=0.29)。

ストレスに関しては、両群ともに有意な変化は認められなかった。

運動終了直後よりも30分経過後に、食欲がより大きく亢進

食欲に関しては、両条件で時間経過とともに有意に亢進することが確認され、かつ、運動負荷条件は休息条件に比較し、有意に食欲が亢進するという結果が示された。具体的には、ベースライン時(研究室到着時点)に参加者が選択した、食べたいと思う食品のエネルギー量と、45分の運動(または休息)直後に選択した食品のエネルギー量の差は、休息条件では7.8±11.0kcal増に対し、運動負荷条件では25.8±11.0kcal増だった。選択された、食べたいと思う食品の総エネルギー量の比較では、後者の条件が7%大きかった。

また、30分の休息をおいて行われた3回目の評価の、ベースライン時の評価からの増加幅は、休息条件では21.3±12.4kcal増であるのに対して運動負荷条件では47.3±12.4kcal増だった。総エネルギー量の比較では後者の条件が10%大きかった。

本研究では、食欲だけでなく、運動負荷が食べたいと思う食品の選択にも影響を及ぼすことを明らかにしている。著者らは、運動により食品選択の嗜好が変わり得ることを示したのは、本研究が初の報告であると述べている。一方、研究の限界点としては、検討対象が非肥満で健康な若年者であり、減量が推奨されることの多い中高年肥満者ではないことが挙げられる。

結論として、「運動を行う主目的が減量にある場合、運動負荷後に食欲が亢進し摂食量が増え、結果として減量を達成できず、運動が長続きしなくなると考えられる。運動の効果は減量だけではなく、運動を長期的に継続してもらい健康づくりに役立てるという動機付けも必要」とまとめている。

文献情報

原題のタイトルは、「Exercise Shifts Hypothetical Food Choices toward Greater Amounts and More Immediate Consumption」。〔Nutrients. 2021 Jan 24;13(2):347〕
原文はこちら(MDPI)

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