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体操と水泳の女性アスリート、どちらが健康的? 栄養状態と心血管リスク因子を比較

エリートレベルの青年期女性の体操選手と水泳選手の栄養状態などを比較した横断研究の結果が、スロベニアから報告された。両群ともにエネルギー可用性が低く、また体操選手はLDL-コレステロールが相対的に高く、水泳選手は収縮期血圧が相対的に高いといった相違が示されている。

体操と水泳の女性アスリート、どちらが健康的?

スロベニアのエリート体操女子、水泳女子選手対象の横断的研究

適切な栄養状態はスポーツパフォーマンスと健康維持の双方にとって重要だ。ただし、エリートレベルのアスリートの栄養状態が必ずしも最適であるとは言えないことが報告されている。

審美的要素を求められる体操選手、とくに女性体操選手の食事摂取量は不十分であり、ときに摂食障害に近い状態である場合もある。そのような場合、怪我のリスクが高まりパフォーマンスも低下する。一方、水泳選手の食事要件は競技種目(自由形、平泳ぎ、背泳ぎ、バタフライのいずれか、および距離の相違)によって異なるものの、やはり女性選手では摂取量が少ないことが多いと報告されている。

このような栄養状態の懸念は、将来の健康にも影響を及ぼし得ると考えられるが、両者を関連づけて検討した研究は限られている。そこで本論文の著者らは、年齢と競技歴をマッチさせた屋内スポーツ(体操と水泳)の青年期エリートレベルアスリートを対象とする、食事摂取状況、栄養状態、心血管疾患リスクを横断的に調査し比較検討した。

調査対象者の特徴

対象は、体操選手17名(17.4±4.1歳)と水泳選手14名(16.6±3.1歳)、計31名。全員がスロベニアに居住する同一民族(白人)。パフォーマンスはエリートレベルで、過半数(58%)は国際大会(欧州選手権、ワールドカップ、オリンピックなど)に参加している選手。

体操選手は平均5.3±2.7歳からトレーニングを始めており、トレーニング歴は10.5±3.4年で、現在のトレーニング時間は23.5±3.4時間/週。水泳選手は9.3±1.9歳からトレーニングを開始し、トレーニング歴は8.5±3.5年で、現在45.4±3.5km/週のトレーニングを行っていた。水泳選手の大半(86%)は、50~200メートルという比較的短距離に特化した訓練をしていた。

体操選手と水泳選手の約2割が不規則な月経周期を報告

食事摂取量は、検証済みの定性的食品頻度質問票(FFQ)により把握し、食事評価ソフトウェア(Dietplan7 Pro)を用いて栄養分析を行った。体操選手の53%と水泳選手の86%が雑食性の食事を摂取していたが、他の選手は毎日菜食または、日によって菜食をとり入れていた。競技別にみると、体操選手は雑食が53%で、残り半数近くがなんらかのかたちで菜食を行っていたのに対し、水泳選手は86%が雑食で、菜食をとり入れていたのは14%と少なかった。

BMIは体操選手が21.5±3.8、水泳選手が20.1±1.9であり、体操選手のほうが有意に高かった(p=0.043)。除脂肪体重は同順に42.4±3.7kg、46.6±5.5kgで、水泳選手のほうが有意に大きかった(p=0.024)。

重要なこととして、体操選手の18%、水泳選手の21%が、月経周期の乱れを報告していた。

食事摂取状況

それでは、食事摂取状況、血清微量栄養素の状態、心血管疾患リスクマーカーの順に、結果をみていこう。まずは食事摂取状況について。

摂取エネルギー量:エネルギー可用性は推奨値を大きく下回る

摂取エネルギー量は、体操選手が水泳選手よりも有意に少なかった(1,514±258 vs 2,263±407kcal/日)。体操選手の主要栄養素の摂取エネルギー比率は、炭水化物47%、脂質40%、タンパク質14%であり、水泳選手は同順に54%、38%、13%だった。飲料や固形食品からの水分摂取量は、体操選手より水泳選手のほうが多かった(1.97±0.21 vs 2.54±0.27L/日)。主要栄養素および微量栄養素の摂取エネルギー比率に、群間の有意差はなかった。

エネルギー可用性(energy availability;EA)は、体操選手(23±3kcal/kg FFM/日)よりも水泳選手(33±5kcal/kg FFM/日)のほうが多かったが、両群ともに推奨値(45kcal/kg FFM/日)に比較し有意に少なかった。脂質とタンパク質は両群ともに推奨量を満たしていたが、炭水化物は大きく不足していた。

欠食の頻度や栄養補助食品の摂取

体操選手の59%と水泳選手の64%は、朝食、昼食、夕食という三食を定期的に摂取していた。その一方で、体操選手の29%と水泳選手の14%が、毎日朝食を食べないと回答した。また体操選手の23%と水泳選手の29%は毎日昼食を食べていなかった。夕食に関しては、体操選手の18%と水泳選手の36%が、週に1~2回夕食を抜くと回答した。

体操選手の41%と水泳選手の14%は、栄養補助食品またはスポーツドリンクを摂取していないと回答した。体操選手が最も多く摂取していたのはマグネシウム(35%)、水泳選手はマルチビタミン(21%)だった。また、体操選手の18%と水泳選手の7%が、ω-3長鎖多価不飽和脂肪酸の栄養補助食品を摂取していた。

血清微量栄養素の状態

体操選手は水泳選手に比べて、カリウムとリンのレベルが有意に高かった。検討したその他の血清微量栄養素は、群間に有意差がなかった。両群の25(OH)Dと体操選手のリンを除き、その他は平均値でみた場合、すべて基準範囲内にあった。

25(OH)Dレベルについては、体操選手の23%と水泳選手の43%が十分(75nmol/L超)、体操選手の35%と水泳選手の36%が不十分(50~74nmol/L)、体操選手の42%と水泳選手の21%は不足していた(50nmol/L未満)。

鉄レベルは体操選手の23%が基準範囲を逸脱し、リンは35%の体操選手と21%の水泳選手が基準範囲の上限を超えていた。

心血管疾患リスクマーカー

測定したすべての血液検査値と血圧は、基準値内だった。ただし、体操選手は水泳選手と比較して、LDL-コレステロールが有意に高く(104.4±19.3 vs 85.1±19.3mg/dL,p=0.011)、HDL-コレステロールは有意に低く(58.0±7.7 vs 69.6±11.6mg/dL,p<0.001)、血清脂質からは水泳選手の方が健康的と言える状態だった。

反対に収縮期血圧は、体操選手よりも水泳選手のほうが高く(107±9 vs 126±9mmHg,p<0.001)、体操選手のほうが健康的と言える値だった。拡張期血圧は有意差がなかった。血糖値も、体操選手よりも水泳選手のほうが高かった(77.4±5.4 vs 88.2±9.0mg/dL)。

著者らは、サンプルサイズが小さいことなどの研究上の限界点を挙げ、「食習慣と血清微量栄養素および心血管疾患リスクマーカーを結びつける決定的な結論は得られなかった」としながらも、摂取エネルギー量や栄養素量、血清脂質、血圧に、競技種目による有意差が認められたことを述べ、「体操選手の食事摂取量は最適とは言えない可能性がある。また、より確実なデータを得るためにサンプル数を増やした調査と包括的な解析が必要」とまとめている。

文献情報

原題のタイトルは、Nutritional Status and Cardiovascular Health in Female Adolescent Elite-Level Artistic Gymnasts and Swimmers: A Cross-Sectional Study of 31 Athletes」。〔J Nutr Metab. 2021 Jan 12;2021:8810548〕
原文はこちら(Hindawi)

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