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炭酸飲料やファストフードの摂取量と青年期睡眠障害が関連 64カ国、17.5万人の調査

64カ国、17万人以上の青少年を対象とする調査から、炭酸飲料やファストフードの摂取量が多いほど、ストレス関連睡眠障害のリスクが高くなる可能性が明らかになった。そのリスク差は最大で1.5倍以上に上るという。

炭酸飲料やファストフードの摂取量と青年期睡眠障害が関連 64カ国、17.5万人の調査

睡眠障害はメンタル不調や身体能力、成績、免疫能の低下などと関連

睡眠不足と睡眠の質の低下は、青年期の感情(うつ病や不安など)と行動(攻撃性やいじめなど)の問題と関連するばかりでなく、運動パフォーマンス、免疫能、注意力、学業成績に悪影響を及ぼし、自殺念慮や薬物・アルコール乱用のリスクを高める可能性が指摘されている。さらに、体重増加と肥満、糖尿病、心血管疾患に対する確立された危険因子でもある。

青年期の睡眠障害に関連する修正可能な因子として、高カロリーの炭水化物が豊富な食品の摂取が考慮されている。とくに炭酸飲料やファストフードの摂取との関連が報告されている。ただし、それらの報告は国ごとに行われた研究であり、世界的な傾向は明らかになっていない。

そのような背景のもと、この研究は「Global School-based Student Health Survey;GSHS」に登録されたデータを利用して行われた。GSHSは、世界各国の学校に通う児童・生徒を対象としたレジストリで、食事行動や健康状態など、さまざまな側面に関するデータが収集されていて、目的にそって解析できる。このレジストリデータから、64カ国の12~15歳の青少年のデータを解析に用いた。

ストレス関連睡眠障害の判定と、飲食物の摂取量の評価方法

この研究において、ストレス関連睡眠障害は、「過去12カ月間に、何かが心配で夜眠れなくなったことがあるか?」との質問で評価し、「全くなかった」「まれにあった」「時々あった」「多くの期間そうだった」「いつもそうだった」で選択してもらい、後二者を選択した人を「ストレス関連睡眠障害あり」と判定した。

ファストフードの摂取量は、「過去7日間に、ファストフードを何日食べたか」という質問で評価し、「1日」「2~3日」「4日以上」の3群に分類。4日以上の場合を大量摂取とした。同様に炭酸飲料の摂取量は、「過去30日間、炭酸飲料を1日に何回飲んだか」という質問で評価し、「1回未満」「1~2回」「3回以上」の3群に分類。3回以上の場合を大量摂取とした。

ストレス関連睡眠障害との関連の解析に際しては、結果に影響を及ぼし得る因子(年齢、BMI、喫煙・飲酒習慣、孤独感、親友の人数、および食物不安〈過去30日間に食糧の蓄えを欠き空腹になったことがあるか〉)で調整した。

青少年のストレス関連睡眠障害の有病率は、男性6.6%、女性8.4%

最終的な解析対象者数は17万5,261人、年齢は13.8±0.98歳で、女性が48.5%。全体の7.5%(男性6.6%、女性8.4%)が、過去12カ月間にストレス関連睡眠障害を報告していた。ストレス関連睡眠障害の有病率は、男女ともに炭酸飲料およびファストフードの摂取頻度の増加とともに直線的に増加していた。

炭酸飲料とファストフードのいずれも、ストレス関連睡眠障害の有病率と関連

まず、炭酸飲料の摂取量との関係についてみると、摂取頻度が1日未満の群のストレス関連睡眠障害の有病率は、男性5.9%、女性7.7%だった。それに対して大量摂取群(頻度が1日3回以上)では、男性9.6%、女性13.6%であり、有意な関連が認められた(傾向性p<0.001)。炭酸飲料大量摂取群の男性は、摂取頻度1日1回未満の男性よりもストレス関連睡眠障害のオッズが55%高かった(OR1.55,95%CI;1.42~1.70)。女性も同様に、炭酸飲料大量摂取群のオッズが51%高かった(OR1.51,95%CI;1.37~1.68)。

次に、ファストフードの摂取量との関係についてみると、摂取頻度が7日間で1日の群のストレス関連睡眠障害の有病率は、男性6.2%、女性7.9%だった。それに対して大量摂取群(頻度が過去7日間で4日以上)では、男性10.5%、女性10.7%であり、有意な関連が認められた(傾向性p<0.001)。ファストフード大量摂取群の男性は、摂取頻度7日間で1日の男性よりもストレス関連睡眠障害のオッズが55%高かった(OR1.55,95%CI;1.39~1.73)。女性も同様に、炭酸飲料大量摂取群のオッズが50%高かった(OR1.50,95%CI;1.32~1.70)。

国民所得別の検討では若干の相違

本研究の特徴は、これまでの研究のように解析データが地域や国単位ではなく、世界64カ国のデータであるため、上記のように世界的な傾向を把握することのほかに、国別の比較検討も可能。そこで、国民所得による相違も検討されている。世界銀行の分類に基づき、低所得国7カ国、低中所得国19カ国、高中所得国18カ国、高所得国19カ国の4群に分類し比較すると、低所得国では炭酸飲料やファストフードの大量摂取によるストレス関連睡眠障害への影響が少ない傾向がみられた。

例えば男性では、低中所得~高所得国の3群はすべて、炭酸飲料大量摂取群のオッズ比が有意に高かったのに対して、低所得国では有意でなかった(OR1.37,95%CI;0.95~1.96)。ファストフードの大量摂取との関連も同様で、低所得国では有意でなかった(OR1.39,95%CI;0.99~1.94)。さらに、ファストフードの摂取量が7日間で2~3日の群は7日間で1日の群よりも、むしろストレス関連睡眠障害のオッズ比が有意に低かった(OR0.56,95%CI;0.39~0.80)。

女性についても、低中所得~高所得国の3群はすべて、炭酸飲料大量摂取群のオッズ比が有意に高かったのに対して、低所得国では有意でなかった(OR1.25,95%CI;0.93~1.69)。ファストフードの大量摂取との関連も同様で、低所得国では有意でなかった(OR1.14,95%CI;0.74~1.77)。

一連の結果から著者らは、「炭酸飲料やファストフードの頻繁な摂取は、国民所得による多少のばらつきはあるものの、世界中の青少年のストレス関連睡眠障害に関連していることが示唆される。ただし、本研究は横断的な研究であるため因果関係は不明。因果関係を明らかにするために、前向き研究が必要とされる。そこから得られるエビデンスは、世界中の青少年の健康的なライフスタイルを促進するための戦略に役立つだろう」とまとめている。

文献情報

原題のタイトルは、「Association of carbonated soft drink and fast food intake with stress-related sleep disturbance among adolescents: A global perspective from 64 countries」。〔EClinicalMedicine. 2020 Dec 21;31:100681〕
原文はこちら(Elsevier)

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