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断続的断食はラマダンか非ラマダンかによらず体重と脂肪量の減少に有効

断続的断食の効果をシステマティックレビューとメタ解析で検証した研究結果が報告された。ラマダンに則した方式かそうでないかにかかわらず、体重や脂肪量の減少に対する有効性が認められ、脂肪量の減少に関してはラマダン以外の断続的断食の効果がより顕著であり、さらに運動トレーニングと摂取エネルギー管理をすることにより、その効果を拡大できる可能性があるという。

断続的断食はラマダンか非ラマダンかによらず体重と脂肪量の減少に有効

減量目的で行われる断続的断食の主なタイプ

ラマダンに代表される断続的断食は現在、信仰に基づく実践にとどまらず、減量や体組成の改善を目的として広く行われている。後者の目的での断続的断食には、ラマダンで行われる方法を遵守する以外にも、いくつかの方法が存在する。

例えば「時間制限食(time-restricted feeding;TRF)」は、摂食する時間を1日の中で特定の数時間に制限する。「隔日絶食(alternate-day fasting;ADF)」は、摂食日と絶食日を交互に繰り返す。また、「断続的エネルギー制限(intermittent energy restriction;IER)」は「連続的エネルギー制限(continuous energy restriction;CER)」の代替アプローチとして発展した方法で、絶食ではなく、エネルギー摂取を制限する期間を設けて、制限しない期間と交互に繰り返す。

これらは「非ラマダン断続的断食」とまとめることができ、除脂肪体重を減らさずに脂肪量を減らすことを最終目的とする。

一方の「ラマダン」は、イスラム教徒が1カ月間、日の出から日没までは絶飲食とし、専ら夜間に飲食する。飲食を控える時間は季節や地理的条件(主として経度)により異なり、12~18時間続くこともある。ラマダンによる体重や体組成、代謝マーカーへの影響は、これまでに多くの研究報告があり、非ラマダン断続的断食に比較しエビデンスが多い。ただし研究の結果が一致しているとは言えず、決定的でない。

この状況を背景として、本論文の著者らは、システマティックレビューとメタ解析という統計的手法により、前記4種類の断続的断食の効果を検証した。著者らは、断続的断食について、このような包括的な考察を加えるのは、本研究が初めてだとしている。

文献検索の方法と採用された研究の特徴

文献検索には、PubMed、Scopus、Web of Scienceという3つの電子データベースが用いられ、2020年5月に実施された。適格基準は、断続的断食と体組成との関連を成人(18歳以上)を対象に検討した介入研究または観察研究で、査読システムのある雑誌に掲載された論文。体組成や代謝に影響のある疾患や状態(癌、甲状腺疾患、糖尿病、HIV/AIDS、減量手術、臓器移植、慢性閉塞性肺疾患、感染症や外傷などの急性疾患ほか)、および妊婦/授乳婦を対象としたものは除外した。また、総説やケーススタディ、およびプロトコル論文、レビュー論文なども除外した。

「断続的断食」「時間制限食」「ラマダン」「体組成」「BMI」「除脂肪量」「脂肪量」「体脂肪率」「体重」「ウエスト周囲長」「筋肉量」「骨密度」などのキーワードを用いて関連論文を検索。ヒットした8,785件から重複を削除後のスクリーニングと精査によって最終的に66件が適格基準を満たしており、これに含まれる60件の研究がメタ解析の対象となった。

採用された研究の特徴

66件の試験デザインの内訳は、27件が無作為化比較試験、13件は非無作為化比較試験、22件は観察研究、4件は単一グループでの検討。全体の約48%(32件)は食事摂取のみを評価し、29件は食事摂取に加え身体活動を評価していた。

対象者数は9~332人で、平均年齢は18~72歳だった。18件は女性のみを対象とし、21件は肥満/過体重者を対象としていた。

断続的断食の体重、BMI、脂肪量、除脂肪量への影響

メタ解析では、断続的断食の体重、BMI、脂肪量、除脂肪量という4つの体組成関連指標への影響を検討した。有効性は、標準化平均値差(standardized mean difference;SMD)で評価した。

体重の変化:ラマダン、非ラマダンともに有意に減少

64件の研究が断続的断食による体重への影響を評価し、その約66%が有意な変化を報告していた。体重の有意な減少を認めた研究の約23%は、運動介入も行われていた。

減量効果を対照群(断続的断食を行わない群)と比較した研究を統合すると、断続的断食の有意な減量効果が認められた(研究数28件。SMD-0.334,p=0.001)。また、断続的断食のタイプ別にみても、ラマダン(6件。SMD-0.353,p=0.02)、非ラマダン(22件。SMD-0.341,p=0.006)のいずれも、有意な減量効果が認められた。

サブグループ解析の結果、介入に運動が含まれている場合は、運動を含んでいない介入に比べて減量効果が有意に大きかった(p<0.001)。また、摂取エネルギー量を管理した場合は、減量効果が有意に大きかった(p<0.001)。

BMIの変化:非ラマダンでは有意に低下、ラマダンは非有意

36件の研究がBMIへの影響を評価し、その約69%が有意な変化を報告していた。それらの大半は肯定的な結果だが、介入によるBMIの増加を報告した研究が1件のみ存在した。BMIの有意な減少を認めた研究の約16%は、運動介入も行われていた。

減量効果を対照群と比較した研究を統合すると、断続的断食の有意なBMI低下効果が認められた(17件。SMD-0.655,p<0.001)。断続的断食のタイプ別に検討した場合、非ラマダンでは有意な効果が認められたが(14件。SMD-0.699,p<0.001)、ラマダンは有意でなかった(3件。SMD-0.439,p=0.136)。

サブグループ解析の結果、介入に運動が含まれている場合は、運動を含んでいない介入に比べて減量効果が有意に大きかった(p<0.001)。

脂肪量の変化:絶対脂肪量と体脂肪率の評価で、一部の結果が相違

49件の研究が断続的断食による脂肪量への影響を評価していた。そのうち、6件のラマダンによる研究、18件の時間制限食による研究、および、隔日絶食または断続的エネルギー制限による研究の各5件が、脂肪量の絶対値の有意な低下を報告していた。絶対脂肪量の有意な低下を認めた研究の約13%は、運動介入も行われていた。

対照群と比較した研究を統合すると、断続的断食の有意な絶対脂肪量低下効果が認められた(24件。SMD-0.655,p<0.001)。断続的断食のタイプ別に検討した場合、非ラマダンでは有意な効果が認められたが(22件。SMD-0.447,p<0.001)、ラマダンは有意でなかった(2件。SMD-0.286,p=0.423)。

一方、脂肪量への効果を絶対値ではなく体脂肪率で検討した研究でも、対照群と比較した研究を統合すると、断続的断食の有意な体脂肪率低下効果が認められた(12件。SMD-0.237,p=0.029)。しかし、断続的断食のタイプ別に検討した場合の結果は、絶対値での検討結果とは反対に、ラマダンで有意な効果が認められ(4件。SMD-0.533,p=0.034)、非ラマダンは有意でなかった(8件。SMD-0.169,p=0.158)。ラマダンでは水分摂取も制限することで脱水状態になりやすいことが、絶対脂肪量と体脂肪率で評価した場合の結果が異なる原因と考えられる。

サブグループ解析の結果、摂取エネルギー量を管理した場合は、管理しない場合に比べて、脂肪量減少効果が有意に大きかった(絶対値での比較p=0.002、体脂肪率での比較p<0.001)。

除脂肪量の変化:有意ではないが、全体では低下してしまう傾向

41件の研究が断続的断食による除脂肪量への影響を評価しており、そのうち時間制限食による1件の研究のみが、除脂肪量の有意な増加を報告していた。14件の研究(ラマダン3件、時間制限食2件、隔日絶食5件、断続的エネルギー制限4件)は、断続的断食による除脂肪量の低下を報告していた。

対照群と比較した研究を統合した解析では、断続的断食による除脂肪量への有意な影響は認められなかった。ただし、対照群との比較ではなく、介入前後での変化については、非ラマダンの断続的断食で、除脂肪量の有意な増加が認められた(5件。SMD0.306,p=0.001)

サブグループ解析の結果、摂取エネルギー量を管理した場合は、管理しない場合に比べて、除脂肪量が有意に大きく低下していた(p<0.001)。

非ラマダンの断続的断食に運動を加えた介入が体組成改善に効果的

これら一連の結果から、著者らは以下のように結論をまとめている。

ラマダンおよび非ラマダンの断続的断食は、どちらも脂肪量と体重を減少させるが、脂肪量減少に関しては非ラマダンの効果がより顕著であり、さらに運動トレーニングと組み合わせると、BMIが大きく低下する。

非ラマダン断続的断食は、ラマダンの場合にリスクとなる脱水症を来す可能性が低く、体組成の改善に効果的であり、とくに運動トレーニングを加え、摂取エネルギー量を管理した場合に、除脂肪量の維持も含め、より大きな効果を期待できる可能性がある。

文献情報

原題のタイトルは、「Effects of Ramadan and Non-ramadan Intermittent Fasting on Body Composition: A Systematic Review and Meta-Analysis」。〔Front Nutr. 2021 Jan 26;7:625240〕
原文はこちら(Frontiers Media)

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