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新型コロナウイルスによるソーシャルディスタンスが記憶力の低下と関連 ブラジルの研究

2021年01月18日

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック抑制のための「社会的距離の確保」(ソーシャルディスタンス)が、人々の主観的記憶力の低下につながっているとする研究結果が発表された。また、身体活動量を増やしたり維持することが、記憶力低下のリスクを減らすこともわかった。COVID-19患者数が世界で3番目に多いブラジルからの報告。

新型コロナウイルスによる社会的距離の維持が記憶力の低下と直接的に関連 ブラジルの研究

社会的距離の確保とメンタル状態、主観的記憶力、身体活動量の関連を調査

社会的距離をとることはCOVID-19パンデミック抑制に有効とされる反面、人々の身体的不活動や心理的ストレスなどの望ましくない影響を及ぼす。メンタルヘルス状態の悪化は記憶障害を引き起こし、一方で身体活動には神経保護的な作用のあることが知られている。他方、社会的距離を維持することが、メンタルヘルス状態の悪化を介さずに記憶障害を招く可能性も考えられる。そこで本論文の著者らは、一般人口を対象として、パンデミック中に主観的記憶力の低下が生じているか、主観的記憶力の低下は社会的距離を確保することの結果であるかどうか、および、主観的記憶低下と身体活動量との関連を検討した。

調査対象は、ブラジル南部に位置し、同国の中でもCOVID-19感染者数の多いリオグランデドスル州に居住する成人で、テレビや新聞、ラジオ、ソーシャルメディア等で募集された2,314人。オンラインによる自記式質問票を用いて、主観的記憶力の変化、身体活動量、メンタルヘルス状態、社会人口学的パラメーター、罹患している慢性疾患、行っている感染防御策などを調査した。

若年成人や女性、独身者で主観的記憶力がより低下

対象者の平均年齢は38.2歳で、女性が76.6%と多くを占め、大半(90.6%)は白人であり、66.7%は大卒以上の教育歴を有していた。また、53%と半数以上が過体重または肥満で、56.9%が慢性疾患を有していた。社会的距離の確保に伴い、約3分の1(35.0%)に抑うつ症状がみられ、過半数(51.3%)が不安症状を示し、3割(30.0%)に主観的記憶低下が認められた。

主観的記憶力低下を報告した人の割合は、高齢者よりも若年の成人、男性より女性、およびパートナーのいない人において有意に多かった。また、主観的記憶力低下が認めれられた人は、社会的距離の確保に伴い身体的に不活発になった人が多かった。さらに、主観的記憶力低下が認められた人は、社会的距離の確保に伴う抑うつ症状が2.1倍、不安症状が1.9倍に上った。

身体活動量の減少と主観的記憶力の低下に直接的関係

抑うつ症状の悪化は、主観的記憶力低下および身体活動量の減少の両方と有意に関連していた(いずれもp<0.001)。媒介分析の結果、抑うつ症状の媒介効果は観察されなかった(p=0.828)。これは、主観的記憶力低下が、抑うつを介さず身体活動量減少による直接的な影響により生じていることを示唆している。

アクティブな生活に変えた人、維持した人は記憶力低下が有意に少ない

社会的距離の確保の維持による身体活動量の変化と、主観的記憶力低下の有無との間に、以下のような有意な関連が認められた。

まず、世界保健機関(World Health Organization;WHO)のガイドラインが推奨している「1週間に150分以上の中強度の有酸素運動、または75分の高強度の有酸素運動」を実施しているか否かで二分すると、社会的距離確保の政策導入前は、対象の約4分の1(26.6%)がこの推奨レベルを満たす運動を行っていた。

社会的距離確保前にWHOガイドラインの推奨を満たしておらず、社会的距離確保後も推奨を満たしていなかった群(1,016人、47.3%)の主観的記憶力低下のリスクを基準として、他群の主観的記憶力低下のリスクを、年齢、性別、民族、学歴、独居、パートナーの有無、社会的距離確保への取り組み、BMI、慢性疾患、収入、メンタルヘルス状態(抑うつ症状と不安症状)の変化で調整し、多変量回帰分析にて検討した。

その結果、社会的距離の確保以前も以後も活動的な人(ガイドライン推奨を維持し続けている人。427人、19.17%)の主観的記憶力低下リスク(有病率比〈prevalence ratio;PR〉)は0.68(95%CI:0.49~0.93)と有意に低かった。また、社会的距離の確保以前は非活動的だったものの社会的距離の確保以降に活動的になった人(ガイドライン推奨を満たしていなかったのに満たすようになった人。172人、7.7%)は、PR0.56(95%CI:0.36~0.89)であり、主観的記憶力低下リスクがより低かった。

社会的距離の確保以降に非活動的になった人(ガイドライン推奨を満たしていたのに満たさなくなった人。626人、27.9%)は、PR1.09(95%CI:0.88~1.33)であり、主観的記憶力低下リスクへの有意な影響はみられなかった。

結論として著者らは、「社会的距離を確保する政策によって、ブラジル南部の成人の3人に1人に主観的な記憶力の低下という影響を及ぼした。若年成人と女性は、その影響が大きい。ただし、そのような状況においても身体活動を続けたり、活動的になることで、主観的記憶力低下リスクを抑制できる」とまとめるとともに、「今後はCOVID-19パンデミックの認知機能に対する影響をより深く理解するために、認知機能を客観的に評価する研究が必要」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Association between physical activity and subjective memory decline triggered by the COVID-19 pandemic: Findings from the PAMPA cohort」。〔Prev Med. 2021 Jan 2;145:106415〕
原文はこちら(Elsevier)

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