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WHOが2019年の世界の死因トップ10を発表 高所得国では心血管疾患死が減少

2021年01月19日

世界保健機関(World Health Organization;WHO)は先ごろ、2019年の死因トップ10(The top 10 causes of death)を発表した。2019年の世界の死亡者数は5,540万人で、上位10位以内の死因がそのうちの55%を占めていた。

WHOが2019年の世界の死因トップ10を発表 高所得国では心血管疾患死が減少

トップ10のうち7つは非感染性疾患(NCDs)

上位10位の死因は以下のとおり。

2019年の世界の死因トップ10

  1. 虚血性心疾患
  2. 脳卒中
  3. 慢性閉塞性肺疾患(COPD)
  4. 下気道感染症
  5. 新生児固有の状態(出生児外傷、早産、新生児仮死、敗血症、感染症など)によるもの
  6. 気管・気管支・肺癌
  7. アルツハイマー病を含む認知症
  8. 下痢性疾患
  9. 糖尿病
  10. 腎臓病

これらのうち、下気道感染症、新生児固有の状態、下痢性疾患の3つを除く7つは非感染性疾患(non-communicable diseases;NCDs)であり、この7つの死因が全死因の44%を占め、上位10位に対する比率は80%に上る。また、上位10位に入らなかったNCDsも含めると、NCDs合計で全死因の74%を占めている。

死因の1位である虚血性心疾患は全死因の16%。虚血性心疾患は2000年以降の増加率が最も高く、2019年には2000年から200万人以上増加し890万人となった。2位の脳卒中は全死因の11%、3位の慢性閉塞性肺疾患は6%。

下気道感染症は依然として世界で最も致命的な感染性疾患であり、4番目に多い死因としてランク付けされている。ただし死亡者数は大幅に減少しつつあり、2019年は2000年より46万人少ない260万人だった。

新生児固有の状態に関連する死亡は、過去20年間に死亡数の減少が最も大きいカテゴリーの1つ。2019年の死亡者数は200万人であり、これは2000年より120万人少ない。

気管・気管支・肺癌による死亡者数は、2000年の120万人から180万人に増加し6位にランクされた。

7位にランクされたアルツハイマー病を含む認知症は、とくに女性の死因として多い。アルツハイマー病やその他の認知症による死亡の65%は女性。

死亡者数が大きく減少している死因の1つは下痢性疾患。2000年の260万人から2019年には150万人に減少した。

糖尿病による死亡は、2000年以降70%増という大幅な増加が認められ、トップ10に入っている。とくに男性では2000年以降80%増加している。

腎臓病による死亡は2000年の81万3,000人から2019年には130万人に増加し、13位から10位になった。

2000年に死因のトップ10に入っていて、2019年にはランク外になった死因もある。HIV/AIDSもその1つで、HIV/AIDSによる死亡者数は過去20年間で51%減少し、2000年の8位から2019年には19位へ後退した。

所得レベル別にみた主な死因

WHOの発表では上記の世界全体での死因順位のほかに、世界銀行の国民総所得に基づく各国の所得グループ(低、低中、高中、高の4群)別に主要死因を分析し比較している。

低所得国ではNCDsよりも感染性疾患による死亡がはるかに多い

低所得国に住む人は、非伝染性疾患(NCDs)よりも感染性疾患で死亡する確率がはるかに高く、死因トップ10のうち6つは感染症であり、マラリア、結核、HIV/AIDSのすべてがトップ10内にとどまっている。ただし、これら3つのすべてが大幅に減少してきていて、とくにHIV/AIDSによる死亡者数は2019年に16万1,000人であり、2000年の39万5,000人より59%少ない。

下痢性疾患は低所得国の死因としてより重要で、5位にランクされている。ただし、やはり減少傾向にある。

慢性閉塞性肺疾患による死亡は、他の所得グループと比較して、低所得国ではまれ。他のすべての所得グループではトップ5以内にランクしているが、低所得国ではトップ10圏外。

低中所得国は死因が最も多様

低中所得国では、死因のトップ10が最も多様と言える。5つは非感染性疾患、4つは感染性疾患であり、他の1つは傷害によるもの。

この所得層においても糖尿病は増加しており、2000年からほぼ倍増して、15位から9位にランクされた。

一方、このグループにおいては下痢性疾患が依然として重要な課題。ただし、死亡者数は2000年の190万人から2019年には110万人へと減少した。

死亡者数の最大の増加は虚血性心疾患によるもので、2000年以降100万人以上増加し310万人となった。 HIV/AIDSは大幅に減少し、2000年の8位から15位へ後退した。

高中所得国では肺癌が著増し、自殺は大きく減少

高中所得国では肺癌による死亡者数が著しく増加しており、2000年から41万1,000人増。これは、他の3つの所得グループすべての死亡者数の増加の2倍以上である。また、胃癌もこの所得グループでの死因として多く、トップ10にランクされている唯一の所得グループ。

死亡者数が大きく減少し疾患の1つは慢性閉塞性肺疾患で、2000年から26万4,000人減少し130万人となった。一方、虚血性心疾患による死亡は120万人以上増加している。

高中所得国の死因トップ10のうち、感染性疾患は下気道感染症の1つのみ。

この所得カテゴリーでは2000年以降、自殺による死亡が31%減少していることも特徴で、2019年には23万4,000人に低下した。

高所得国では心血管疾患による死亡が減少

高所得国では、虚血性心疾患と脳卒中という2つを除く、すべての上位10位の疾患による死亡が増加した。

虚血性心疾患と脳卒中は、2000年から2019年の間に死亡者数がそれぞれ16%(32万7 000人)、21%(20万5,000人)減少した。高所得グループは、これら2疾患による死亡が減少している唯一のグループ。ただし、それにもかかわらず、虚血性心疾患と脳卒中は、このグループの死因の上位3位にランクし、2019年には合計で250万人以上が死亡している。また高血圧性心疾患による死亡が増加し、18位から9位に上昇した。

アルツハイマー病を含む認知症による死亡者が増加し、脳卒中を抜いて2番目に多い死因となったこともこのグループの特徴。2019年には81万4,000人が死亡した。

高中所得国と同様に、感染性疾患である下気道感染症もトップ10に含まれている。

関連情報

The top 10 causes of death(WHO)
死亡原因トップ10(日本WHO協会)

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