スポーツ栄養WEB 栄養で元気になる!

SNDJクラブ会員募集中! 詳細はこちら
一般社団法人日本スポーツ栄養協会 SNDJ公式情報サイト
ニュース・トピックス

コロナ禍からスポーツへの安全な復帰 英国スポーツ運動医学会のガイドライン提案

2020年11月28日

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックが続いている。しかし、ワクチンや治療薬が開発され普及し、集団免疫が獲得される結果、いずれは終息する。それとともに多くの人が以前のようにスポーツを再開し、競技会でトレーニングの成果を毅然と競い合うようになる。既に、さまざまな感染防止対策を講じたうえで、国際競技大会も少しずつ再開され始めている。

コロナ禍からスポーツへの安全な復帰 英国スポーツ運動医学会のガイドライン提案

こうした中、アスリートが安全にスポーツを再始動するための対策をまとめたナラティブレビューが英国スポーツ運動医学会の「BMJ Open Sport Exerc Med」に掲載された。COVID-19の重症度に応じて、心電図検査や尿・血液バイオマーカー、VO2peakの評価などを組合せて行う参加前診察(preparticipation evaluation;PPE)のフローチャートも図示している(原典論文参照)。

ガイドラインが必要な二つの理由

COVID-19パンデミックでほぼ全面的に活動中止状態となっていたスポーツが、Withコロナの環境下で少しずつ再開している。その際、アスリートの安全面に、二つの視点から注意が必要とされる。

一つは、これまで数カ月~1年近くの間、ほとんどのアスリートが通常のトレーニングを行えていなかったことによるものだ。以前と同レベルの負荷でトレーニングを安全に再開するには、メディカル的な確認を経るべきと考えられる。

もう一つの理由は、COVID-19の症状が個人によって大きく異なることによる。明らかな症状を経験していないアスリートが、実際は罹患していた可能性もある。COVID-19の臨床症状は主に呼吸器系だが、心臓合併症もみられる。

この2点から、アスリートの安全な活動再開に向けて、何らかのガイドラインが必要とされる。

COVID-19の症状と合併症

この病気の通常の症状は、発熱、咳、筋肉痛、倦怠感、軽度の呼吸困難、喉の痛み、頭痛、結膜炎であり、約10%の患者が重篤になり、呼吸困難、低酸素血症、肺実質の線維症が生じる。より深刻な場合、急性呼吸窮迫症候群、多臓器不全、死亡へと進行する。

酸素飽和度が低下した場合、侵襲的人工呼吸が必要となる。ただし、新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)は、肺に影響を与えるだけではない。

COVID-19の心血管合併症

COVID-19の臨床症状は主に呼吸器系に現れるが、心血管系の合併症が報告されている。心筋傷害のメカニズムの一つはサイトカインストームで、これは、高血圧、2型糖尿病、心血管障害などの基礎疾患を有する患者で好発するようにみられる。

ただし、重要なことに、発熱や呼吸困難などの症状を示さなかった患者でも心筋炎が報告されていることだ。これに関連する大きな問題は、COVID-19の症状が個人によって異なる点である。イタリアで実施されたコホート研究では、PCR陽性者の50~75%が無症候性であり、他も軽度のインフルエンザ様症状が多かったと報告されている。

非常に健康的な集団であるプロのチームスポーツ選手も感染している(フランスサッカー連盟の未発表データ)。明確なエビデンスはないが、アスリートは一般の人々よりも心筋炎を発症するリスクが高い可能性がある。またスポーツ活動は、運動の強度・期間に応じて、感染感受性に影響を与える可能性がある。中程度の身体活動が免疫能を向上する可能性がある一方で、激しい長期間のトレーニングや競技は、免疫能を低下させる。

COVID-19に伴い発症することのある心筋炎は、トレーニングや競技を再開するアスリートに影響を与える。しかし、COVID-19が軽症または無症候で経過した感染者の心筋炎発症率や臨床的影響は、ほとんどわかっていない。典型的なCOVID-19症状を呈した患者の回復後に長く続く、サブクリニカルな心筋炎の発生頻度も不明だ。

この点は、アマチュアやプロのアスリートにとって、相当厄介な問題と言えるかもしれない。トレーニングの前に、致命的なリスク、特に心筋炎や心臓突然死のリスクを評価する必要がある。

COVID-19既往のあるアスリートの心臓検査

スポーツへの復帰を確実に安全なものとするために、COVID-19の既往のあるアスリートには、PPEによって心血管後遺症の有無のチェックを推奨する。

初期評価では、12誘導心電図が非常に重要と言える。ただし、補完のために心筋傷害を示すバイオマーカーの測定も考慮する。トロポニンI、クレアチンキナーゼ、NT-proBNPなどだ。

多臓器に及ぶ脅威と全身的な評価

SARS-CoV-2感染は肺や心臓以外にも、肝臓や腎臓に影響を与える。これまでのところ、これらの合併症は重篤なケースのみ報告されており、軽症で回復したアスリートの早期復帰による肝臓と腎臓への潜在的な悪影響については知見が限られている。よって、いくつかの血液や尿バイオマーカーをPPEに追加することを推奨する。例えば、プロカルシトニン、シスタチンC、L-FABPなどだ。

また、COVID-19の臨床症状はSARS-CoV(2002~03年に中国や台湾で流行した重症急性呼吸器症候群のウイルス)感染の臨床症状と類似している。SARSは、肺線維症や気管支拡張症などの肺合併症を呈し、SARSが治癒した一部の成人では、治癒後3カ月間、有酸素運動能力の低下が報告されている。この低下は最大12カ月続く可能性がある。

また、COVID-19既往の有無や罹患時の重症度にかかわらず、ロックダウンのためにアスリートの有酸素運動パフォーマンスは低下しているだろう。したがって、PPEにはVO2max等の評価も必要とされる。

COVID-19に感染したアスリートの身体的パフォーマンス

SARS-CoV-2は、その遺伝子型の96%がSARS-CoVと一致しているため、筋肉に対して同様の影響を与えると推測される。SARS-CoVに感染した患者では、筋肉量の減少が報告されている。また、ロックダウンによる身体活動の低下も、筋肉量、体組成に影響を及ぼしているだろう。トレーニングによる筋肉量の回復に要する期間は、COVID-19既往のあるアスリートでは長くかかる可能性があるかもしれない。

このほか、COVID-19感染による中枢神経系の変化も報告されている。ただし、そのことによりスポーツパフォーマンスに影響が現れるかどうかについての情報は、現時点で存在しない。また、神経筋疲労を引き起こす可能性のあるウイルス感染後疲労症候群にも注意を払う必要があるだろう。

アスリートがより早くパフォーマンスを取り戻すために、特定の栄養やトレーニングレジメンが役立つ可能性がある。このガイドラインは、アスリートが安全にトレーニングを再開し、パフォーマンスの迅速な回復を促すことを目的としたものだ。ただし、COVID-19感染の影響に関する情報はごく限られたものでしかない。引き続きこの問題を整理し、更新していく必要がある。

文献情報

原題のタイトルは、「Managing the combined consequences of COVID-19 infection and lock-down policies on athletes: narrative review and guidelines proposal for a safe return to sport 」。〔BMJ Open Sport Exerc Med. 2020 Oct 19;6(1):e000849.〕
原文はこちら(British Association of Sport and Exercise Medicine)

この記事のURLとタイトルをコピーする

新型コロナウイルスに関する記事

栄養・食生活

運動・エクササイズ

アスリート・指導者・部活動・スポーツ関係者

関連記事

スポーツ栄養Web編集部
facebook
Twitter
LINE
ニュース・トピックス
スポーツ栄養”見える”化プロジェクト
スポーツ栄養”見える”化✕選手育成プロジェクト「中井彩子 フランス・ロードバイク日記」
元気”いなり”プロジェクト
元気”いなり”プロジェクト
SNDJクラブ会員登録
SNDJクラブ会員登録

スポーツ栄養の情報を得たい方、関心のある方はどなたでも無料でご登録いただけます。下記よりご登録ください!

SNDJメンバー登録
SNDJメンバー登録

公認スポーツ栄養士・管理栄養士・栄養士向けのスキルアップセミナーや交流会の開催、専門情報の共有、お仕事相談などを行います。下記よりご登録ください!

セミナー・イベント情報
このページのトップへ