エクストリームスポーツを観戦するとエナジードリンクの摂取量が増える
Extreme Sports(エクストリームスポーツ)と呼ばれる過激な競技に親しむ人は、エナジードリンクの摂取量が多いという研究結果が発表された。一方で、エナジードリンクの広告の視聴頻度は、摂取回数と関連していなかった。ただしこの研究論文の著者らは、エクストリームスポーツのイベントそのものがエナジードリンクのスポンサードであることが多いため、視聴者自身は広告の影響を受けていないと思っていても、そうとは言い切れないと述べている。
ネットを中心に人気拡大中のエクストリームスポーツ
YouTubeやソーシャルメディアなどのオンラインで動画を視聴できる環境の普及を背景に、エクストリームスポーツの人気が世界中で上昇している。これらのスポーツイベントや動画が、エナジードリンクメーカーのコマーシャルとリンクしていることがよくあるが、その影響は不明のため、著者らはこの点を明らかにする調査を行った。
なお、エクストリームスポーツの定義はまだ定まっておらず、本研究では「アドレナリンラッシュと呼ばれるような身体的スリルが頻繁に生じ、迅速かつ正確な反応が求められ、事故が発生する可能性の高いスポーツ」と定義した。また、エナジードリンクについては、「知覚や活力を高めるためのカフェイン、その他の成分を含有する炭酸飲料」とした。
エクストリームスポーツの参加者と観戦者にネットアンケート
この調査は2016年11月~2017年2月にかけて、エクストリームスポーツに参加または観戦している18歳以上の人を対象に実施された。アンケートへの協力は、エクストリームスポーツクラブを経由しての告知、メンバーによる口コミ、ソーシャルメディアを通じての呼びかけなどで要請し、回答は任意とした。
期間中に252件の回答が集まった。このうち、エクストリームではないスポーツの参加・観戦者、重複回答など5件を除外し、247件を解析対象とした。
回答者は、年齢が26.2±8.2歳で、男性59.5%であり、55.5%がエクストリームスポーツに参加し、92.7%が観戦、48.2%は参加かつ観戦もしていた。
観戦手段はネットが主体
まず、エクストリームスポーツの観戦手段の回答をみると、大半の92.1%がYouTubeやウェブサイト、ソーシャルメディアなど、インターネット経由で観戦していた。テレビで観戦するとの回答は67%、ライブイベントに観戦に行くとの回答は25%にとどまった。
この結果と呼応するように、エナジードリンクの広告もインターネットで最も頻繁に視聴されていた(81.3%)。インターネット以外で広告を視聴する機会としては、店舗(76.8%)、エクストリームスポーツのイベント(72.8%)、テレビ(66.3%)などが挙げられた。
エナジードリンクの摂取率に性差はないが、高齢になるほど低下
全体の6割近い57.9%(143人)がエナジードリンクを摂取すると回答し、4人に1にあたる25.5%が1週間に1回以上摂取していた。性別の比較では、男性でエナジードリンクを摂取すると回答したのが60.5%に対し、女性は54.0%だったが、有意差はなかった。
一方、年齢はエナジードリンクの摂取と関連がみられ、1歳高齢であるごとのオッズ比が0.969(95%CI:0.941~0.999)となり、高齢であるほど少なかった。
1回あたりの摂取量は、250mLが34.3%、330mLが39.9%、500mLが25.2%、720mLが0.7%だった。
観戦の頻度と摂取率が正の相関。ただし広告の視聴とは関連せず
エクストリームスポーツの観戦頻度と、エナジードリンクの摂取率との間に、正の相関関係が認められた。具体的には、1週間あたりのエクストリームスポーツ観戦回数が1回多いごとに、エナジードリンクを摂取するとの回答のオッズ比(OR)が1.31(95%CI:1.13~1.52)となった。
その一方で、エナジードリンクの広告を視聴した回数と、エナジードリンクの摂取率との間には、有意な関連がなかった(OR0.978〈95%CI:0.88〜1.08〉)。ただし、エナジードリンクの大量摂取者(1週間に1回以上)では、広告視聴回数と摂取量に有意な正の相関がみられた(OR1.14〈95%CI:1.01~1.30)。
エナジードリンクを摂取する理由、摂取しない理由
エナジードリンクを摂取すると回答した143人に、摂取する理由を尋ねた質問では、眠気を覚ますのに役立つ(51.7%)、起床時に摂取する(50.3%)、軽食としての味の好み(47.6%)、長距離運転に役立つ(36.4%)、パーティーの機会に摂取する(35.0%)、身体活動やスポーツのエネルギーとして(31.5%)などが多かった。
反対に、エナジードリンクを摂取しないと回答した104人に、その理由を尋ねた質問では、不健康そうなイメージ(40.4%)、カフェインを避けるため(37.5%)、味が好みでない(34.6%)、体重増加の懸念(28.8%)、摂取後の感覚が良くない(22.1%)、眠れなくなる(16.3%)などが挙げられた。
エクストリームスポーツの視聴とエナジードリンク摂取の間接的な関係
以上の結果から、著者らは以下のような結論をまとめている。
エクストリームスポーツに参加したり観戦する人は、エナジードリンクの摂取が多いと考えられた。摂取習慣のある人は、エナジードリンクのメーカーの広告の直接的な影響を受けていないように思われる。
それにもかかわらず、エナジードリンクのメーカーがスポンサーであることが一般的なエクストリームスポーツの視聴の頻度が高いことは、エナジードリンクの摂取頻度が高いことと関連していた。エクストリームスポーツの視聴は、主にソーシャルメディアやその他のオンラインアプリケーションを介して行われている。これらより間接的には、メーカーのマーケティング戦略が、視聴者のエナジードリンク摂取量の増加につながっていると考えられる。
文献情報
原題のタイトルは、「Factors Influencing Energy Drink Consumption in Participants and Viewers of Extreme Sports」。〔J Nutr Metab. 2020 Oct 7;2020:9382521〕
原文はこちら(Hindawi)Extreme Sports(エクストリームスポーツ)