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腸内細菌がいなくなると睡眠パターンが乱れる ビタミンB6の有意な減少とも関連

腸内細菌叢は近年さまざまな疾患の発症や進行と関連していることが明らかになり、多くの領域でトピックとして扱われている。その領域の一つとして、「睡眠」が新たに加わりそうだ。

腸内細菌がいなくなると睡眠パターンが乱れる ビタミンB6の有意な減少とも関連

腸内細菌叢の違いが睡眠パターンと関連しているという動物実験の研究結果が報告された。筑波大学などのグループによる研究によるもので、論文が「Scientific Reports」に掲載されるとともに、同大学のサイトにニュースリリースが掲載された。

研究の概要

脳と相互に影響を及ぼしあう「脳腸相関」と呼ばれる関係の存在がわかっている。本研究では、長期間、抗生物質を投与することで腸内細菌叢を除去したマウスを用いて、腸内細菌叢と脳機能の一つである睡眠の関係について調べた。

腸内代謝状態を知るため、盲腸の内容物のメタボローム解析を行ったところ、腸内細菌叢を除去したマウスでは、正常なマウスと比較して神経伝達物質の合成に関係するアミノ酸の代謝経路に有意な変動が認められた。

脳波と筋電図を指標として睡眠を解析すると、腸内細菌叢を除去したマウスでは、明期(睡眠期)の睡眠が減り、暗期(活動期)の睡眠が増えており、睡眠・覚醒の昼夜のめりはりが弱まっていた。また、大脳皮質の活動が活発なレム睡眠に特徴的な脳波成分であるシータ波が減少していることがわかった。

これにより、腸内細菌叢の除去が睡眠の質を低下させる可能性が示唆された。 

研究の背景

食品の選択や摂食のタイミングは、腸内に生息する細菌叢のバランスや日内変動を変化させ、腸内環境に大きな影響を与えることがわかっている。また、腸内環境と脳機能は相互に作用しあっていることも明らかにされている。この関係は「脳腸相関」と呼ばれ、心身の健康維持において重要な役割を担っていると考えられ、近年注目を集めている。

睡眠も脳機能の一つであり、腸内環境からの影響を受けている可能性が考えられる。そこで本研究では、腸内環境の重要な要素である腸内細菌叢が睡眠に及ぼす影響について調査した。

研究内容と成果

まず4種類の抗生物質を飲水に混合してマウスに4週間経口投与し、腸内細菌叢のないマウスを作製した。この腸内細菌叢除去マウスと正常なマウスの盲腸内容物を、メタボローム解析(代謝物質の網羅的解析)を行い、腸管内の代謝物質プロファイルを調べた。

その結果、246種の代謝物質が検出され、そのうち114種が腸内細菌叢除去マウスでは、正常なマウスと比較して有意に減少、95種が有意に増加していることがわかった。とくに、神経伝達物質の合成に関係するアミノ酸代謝経路に大きな変動がみられ、腸内細菌叢除去マウスではビタミンB6が有意に減少し、精神を安定させる働きのある神経伝達物質のセロトニンが枯渇していた。一方で、抑制性神経伝達物質であるグリシンとγアミノ酪酸(GABA)には有意な増加が認められた。

続いて、脳波・筋電図を計測して睡眠・覚醒状態を解析したところ、腸内細菌叢除去マウスでは、正常なマウスと比較して日中(マウスにとっての睡眠期)のノンレム睡眠※1が減少し、逆に夜間(マウスにとっての活動期)には、ノンレム睡眠とレム睡眠※2の増加が認められた。

この結果は、24時間の活動リズムは維持されているものの、本来、睡眠をとる時間帯に活動が増え、逆に本来は活動が盛んな時間帯に睡眠をとっており、昼夜のめりはりが弱まっていることを示している。

※1レム睡眠:眼球の速い動きを伴う睡眠。身体の筋肉の活動は抑制されているが、脳は睡眠中にもかかわらず活発に活動している。夢を見ていることが多い。
※2ノンレム睡眠:レム睡眠以外の睡眠。身体と脳の活動が抑制されている。

また、レム睡眠は、1回の持続時間は変わらないものの出現頻度が増加し、ノンレム睡眠とレム睡眠の切り替わりがより多く生じてた。

脳波波形を詳しく分析すると、覚醒中とノンレム睡眠中の脳波スペクトルには、正常なマウスと腸内細菌叢除去マウスで有意な違いはないが、レム睡眠に特徴的な脳波成分であるシータ波スペクトルパワー密度が、腸内細菌叢除去マウスにおいて弱まっていた。

以上から、腸内細菌叢を除去すると腸管内での代謝が大きく変化するとともに、睡眠覚醒パターンや睡眠の質にも変化が起こることがわかった。

実験の手法と結果

実験の手法と結果

4週間にわたる抗生物質投与により腸内細菌叢を除去したマウスでは、神経伝達物質合成に関連するアミノ酸代謝が腸管内で大きく変動していることがわかった。また、本来は夜行性であるマウスの睡眠・覚醒パターンの昼夜のめりはりが弱まり、レム睡眠がより多く生じていることが明らかになった。
(出典:筑波大学)

今後の展開:食習慣に基づいた健康増進に期待

睡眠を含めた脳機能と腸内環境との関係が明らかになるに従い、生活習慣を通じた腸内環境の調整が、心身の健康維持のためにいかに重要であるかもわかってきた。研究グループでは、「現代社会において多くの人が悩みを抱える睡眠の問題を、日々の食習慣を整えるセルフケアによって解決できるようになるかもしれない」とし、「今後、腸内細菌叢から睡眠制御の仕組みへの情報伝達経路の解明や睡眠不足状態の解析を通じて、腸内環境と睡眠との相互作用を明らかにし、食を通じた腸内環境コントロールによる睡眠改善法の開発を目指したい。研究の推進により脳腸相関の理解をさらに深めることで、食習慣に基づいた健康増進の新たな方法論の確立が期待される」と述べている。

関連情報

腸内細菌がいなくなると睡眠パターンが乱れる(筑波大学)
プレスリリース(筑波大学、PDF)

文献情報

原題のタイトルは、「Gut microbiota depletion by chronic antibiotic treatment alters the sleep/wake architecture and sleep EEG power spectra in mice」。〔Sci Rep. 2020 Nov 11;10(1):19554〕
原文はこちら(Springer Nature)

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