新型コロナロックダウン中の10代若者の変化 身体活動量や超加工食品摂取頻度を5カ国で比較
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックにより世界各国でロックダウンが行われた。この間の身体活動量の減少や摂取食品の変化が国ごとに報告されているが、欧州と南米の計5カ国の若年層への影響を国際比較した結果が新たに発表された。欧州に比べ南米はロックダウン中、非活動的になった人の割合が高かったことが明らかになり、著者らは、このような変化を非感染性疾患(Non-Communicable Diseases;NCD)の将来的な増加につながる潜在的リスクを表すと述べている。
スペイン、イタリア、ブラジル、チリ、コロンビアの若年者への影響を国際比較
この調査は、スペイン、イタリア、ブラジル、チリ、コロンビアの10歳以上20歳未満の若年層を対象に、Googleのアンケートフォームを用いて行われた。調査項目は、ロックダウン前の身体活動量とロックダウン中の身体活動量、超加工食品※の摂取頻度、および回答者の性別、年齢などの属性と、家族構成、住環境、母親の教育歴など。
データ収集は4月17日~5月20日に行われた。ロックダウンの期間は国によって異なるが、すべて3月に開始されていた。イタリアは3月9日、スペインは3月14日、コロンビアは3月24日、ブラジルは3月27日であり、チリは政府によるロックダウンは実施されていないが、各都市レベルで実施され学校は3月16日に閉鎖されていた。
身体活動量の評価には国際標準化身体活動質問票(International Physical Activity Questionnaire;IPAQ)を用い、1週間に300分以上の身体活動を行う場合を「活動的」と定義した。身体活動の種類としては、学校での体育の授業、通学、その他の身体活動を含めた。
計734人の回答が適格基準を満たし、うち8人が回答を取り下げたため、最終的に726人の回答が解析された。国別の内訳は、スペイン147人(20.2%)、イタリア133人(18.4%)、ブラジル115人(15.8%)、チリ170人(23.4%)、コロンビア161人(22.2%)で、59.6%が女性、16〜19歳が54.3%を占めた。
身体活動量の変化に関連する因子
身体活動量が少なく活動的でないと考えられる人の割合は、ロックダウン前が73.0%、ロックダウン中は79.5%だった。国別にみると、ブラジルとチリはロックダウン中に活動的でない人の割合が高く、それぞれ93.0%、90.6%に達した。他の国のロックダウン中の活動的でない人の割合は、70%台前半。またブラジルは、非活動的な人の割合がロックダウン前の40.9%から93.0%へと大幅に増加していた。
ロックダウン中の非活動的な人の割合を、欧州と南米とで比較すると南米で高く(p<0.001)、性別では女性に高く(p<0.031)、世帯人数が4人以上で高く(p=0.001)、母親の教育歴が長い場合に高い(p=0.034)という有意な関連が認められた。一方、15歳以下と16歳以上での比較や、両親と同居か否かでの比較では、有意差がなかった。
多変量解析の結果、ロックダウン中に非活動的となった人の割合は、欧州に比べ南米で高かった(OR2.98,95%CI:1.80-4.94)。一方、活動的な人の割合は女性より男性が高かった(OR2.22,95%CI:1.28-3.86)
超加工食品の摂取頻度は欧州より南米で多い
続いて超加工食品の摂取頻度に関連する因子を重回帰分析した結果をみると、有意な因子として抽出されたのは大陸の違いで、南米が欧州に比較して高いという結果だった(OR1.58,95%CI:1.13-2.22)。
身体活動量に関する検討で有意差が認められた母親の教育歴は、超加工食品の摂取頻度に関しては有意な因子でなかった。同様に、身体活動量の多寡(1日に60分以上か未満か)による比較も、超加工食品の摂取頻度との有意な関連は認められなかった。
著者らは、「COVID-19パンデミックによるロックダウンが若年者の身体活動へ及ぼした影響は南米諸国でより大きく、かつ、南米諸国は超加工食品の摂取頻度が高いことが観察された」と結論している。
文献情報
原題のタイトルは、「Changes of Physical Activity and Ultra-Processed Food Consumption in Adolescents from Different Countries during Covid-19 Pandemic: An Observational Study」。〔Nutrients. 2020 Jul 30;12(8):E2289〕
原文はこちら(MDPI)