やっぱり日本食は健康に良い! 死亡リスクが有意に低下することが縦断研究で示される
国立がん研究センターなどによる多目的コホート研究(JPHC研究)から、日本食と死亡リスクに関する調査研究が行われ、より日本食らしい食生活なほど死亡リスクが有意に低いという結果が報告された。「European journal of nutrition」に論文掲載されるとともに、国立がん研究センター予防研究グループのサイトにニュースリリースが掲載されたので紹介する。
研究の背景と手法
国立がん研究センター予防研究グループは、生活習慣とがん・脳卒中・心筋梗塞などとの関係を明らかにし、日本人の生活習慣病予防と健康寿命の延伸に役立てるための研究を継続して行っている。
今回発表された研究は、平成7年(1995年)と平成10年(1998年)に、岩手県二戸、長野県佐久、沖縄県中部、東京都葛飾、大阪府吹田、長崎県上五島、沖縄県宮古など、11カ所の保健所管内に居住していた45~74歳の住民のうち、食事調査アンケートに回答した男女9万2,969人を平成28年(2016年)まで追跡した調査結果に基づき、日本食パターンと死亡リスクとの関連を調査したもの。
解析対象者の研究登録時の年齢は56.5±7.8歳で、男性が45.9%だった。
日本食パターンの定義
この研究で定義した「日本食パターン」は、先行研究で用いられていた8項目(ご飯、みそ汁、海藻、漬物、緑黄色野菜、魚介類、緑茶、牛肉・豚肉)の摂取量を点数化する日本食インデックス(8-item Japanese Diet Index;JDI8)を使用した。これにより、日本食らしい食生活かどうかをスコア化して判定した。
JDI8の7つの項目(ご飯、みそ汁、海藻、漬物、緑黄色野菜、魚介類、緑茶)については、男女別に摂取量が中央値より多い場合に各1点、牛肉・豚肉については、摂取量が中央値より少ない場合に1点として、合計0~8点とした。この日本食パターンのスコアを四分位に群分けし、中央値で約18.9年追跡した(追跡率99.7%)。
日本食パターンのスコアが高い群で、死亡リスクが有意に低下
追跡期間中に2万596人(22.2%)の死亡が確認された。年齢、性別、BMI、喫煙・飲酒・運動習慣、摂取エネルギー量、処方薬(降圧薬、脂質低下薬、血糖降下薬)、職業などの影響を調整後に、全死亡、がん死、循環器疾患死、心疾患死、脳血管疾患死と、日本食パターンスコアとの関連を解析した。
その結果、日本食パターンスコアの第1四分位群(最も日本食らしくない食生活群)に比べて、第4四分位群(最も日本食らしい食生活群)では、全死亡のリスクが14%有意に低く、また循環器疾患死と心疾患死のリスクもそれぞれ11%有意に低かった。
日本食パターンのスコアが高いほど(より日本食らしい食生活であるほど)、全死亡のリスクが低いという有意な傾向が認められた(傾向性p<0.001)。同様に循環器疾患死(傾向性p=0.003)、心疾患死(傾向性p=0.008)も、有意にリスクが低下する関係が認められた。
がん死に関しては第1四分位群に対し第4四分位群のハザード比(HR)が0.94、脳血管疾患死はHR0.89ながら、有意ではなかった。
日本食パターンと死亡リスクとの関連
食品摂取量の多寡と全死亡との関連
続いて、JDI8の8項目の食品において、それぞれの食品の摂取量を「多い/少ない」という二つの群にわけ、「少ない」群に比べて「多い」群の死亡リスクを検討。
その結果、海藻の摂取量が多い群は死亡リスクが6%有意に低かった。同様に、漬物では5%、緑黄色野菜では6%、魚介類では3%、緑茶では11%、それぞれ摂取量が多い群の死亡リスクが有意に低かった。ご飯やみそ汁、牛肉・豚肉に関しては、摂取量の多寡による死亡リスクの相違は有意でなかった。
各食品の摂取量が多い群と少ない群の全死亡リスクの比較
結果のまとめと考察
今回の研究では、日本食パターンにより全死亡・循環器疾患死・心疾患死のリスクが低いことが示された。その理由として研究グループでは、「日本食パターンのスコアが高い群では、海藻や漬物、緑黄色野菜、魚介類、緑茶に含まれる健康に有益な栄養素(食物繊維や抗酸化物質、カロテノイドやエイコサペンタエン酸など)の摂取量が多かったことが考えられる」としている。また、「食品それぞれの死亡リスク低下への影響は大きくはないが、食品単体ではなく、日本食パターンとして評価することにより、各食品に含まれるさまざまな栄養素の作用によって、死亡リスクが低下した可能性が考えられる」と述べている。
一方で、日本食パターンは地中海食パターンなどの他の食事パターンと比較して、食事に含まれる食塩が多いという懸念がある。本研究においても、日本食パターンのスコアが高い群ほど食塩摂取量が多いという結果が示された。ただし、スコアが高い群ではカリウムの摂取量も多く、食塩とカリウムの摂取量の比はすべての群で、ほぼ同じ値だった。
通常、食塩(ナトリウム)摂取量が多いと血圧が高くなり循環器疾患のリスクとなる。反対にカリウムには、ナトリウムを体外に排泄し血圧の上昇を抑えるという働きがある。そのため、日本食パターンのスコアが高い群では、食塩摂取量が多くてもカリウム摂取量も多かったことから、食塩による悪影響が打ち消された可能性が示唆された。
今後は日本食とがんの関連の研究が必要
本研究では、日本食パターンと全がん死との関連はみられなかった。その理由としては、「がんの部位によって食品や栄養素との関連が異なるため、全がん死としては関連がみられなかった可能性がある」と考察し、「今後も日本食と特定のがんとの関連を検討する研究が必要」としている。
なお、本研究の限界として、1回の食事調査アンケートによる評価であり、食習慣の変化を考慮できていないことを挙げている。
関連情報
日本食パターンと死亡リスクとの関連について(国立がん研究センター予防研究グループ)
文献情報
原題のタイトルは、「Association between adherence to the Japanese diet and all-cause and cause-specific mortality: the Japan Public Health Center-based Prospective Study」。〔Eur J Nutr. 2020 Jul 16. Online ahead of print〕
原文はこちら(Springer Nature)