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医療従事者の9割超がビタミンD不足/欠乏 COVID-19対策の外出自粛が影響? 国立国際医療研究C調査

医療従事者の9割以上が、ビタミンD不足または欠乏状態にあるとする研究結果が報告された。国立国際医療研究センター 臨床研究センター疫学・予防研究部の伊東葵氏らが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック発生から3年目にあたる昨年6月時点の同センター職員の調査データを解析した結果であり、欧州臨床栄養代謝学会発行ジャーナル「Clinical Nutrition ESPEN」に論文が掲載された。COVID-19は収束しつつあるものの、医療従事者には引き続き感染予防対策が求められており、ビタミンD低値に伴う感染症罹患リスクの上昇が懸念される。

医療従事者の9割超がビタミンD不足/欠乏 COVID-19対策の外出自粛が影響? 国立国際医療研究C調査

外出自粛に伴うビタミンD低下の結果としての感染リスク上昇というジレンマ

ビタミンDは骨代謝だけでなく、がん、心血管疾患、糖尿病、神経変性疾患、精神疾患、感染症などのさまざまな疾患の予防に重要な役割を果たすプロホルモン。ビタミンD受容体は大半の臓器に存在していることも、全身の健康状態との関連のあることを示唆している。

体内のビタミンDの約9割は、紫外線曝露により皮膚で産生されるため、屋外で日光に当たる時間が減少しがちな現代的なライフスタイルでは、ビタミンDが低下しやすい。そのため、ビタミンDが豊富な魚やキノコ類の摂取量が海外に比べて多い日本人であっても、成人の8~9割がビタミンD低値だとする報告もある。

一方、2020年初頭に始まったCOVID-19パンデミックにより、人々は一時期、外出自粛が求められた。その影響でビタミンD欠乏症の有病率が上昇したことを示唆するデータが、海外から報告されている。ビタミンDレベルの低下は易感染性につながり、COVID-19の罹患や重症化のリスクを高めてしまうことも懸念されている。

幸い現在、パンデミックは収束しつつある。しかし終息したわけではなく、医療従事者は職業柄、依然として感染リスクの低いライフスタイルの継続が求められ、余暇時間での外出控えのために、ビタミンDレベルへの負の影響が引き続き生じている可能性がある。このような背景の下、伊東氏らは国内の医療従事者のビタミンD不足・欠乏の実態を把握し、その関連因子を特定するため、以下の研究を行った。

ビタミンD不足の有病率は44.9%、欠乏の有病率は45.9%

この研究には、パンデミック3年目にあたる2023年6月、国立国際医療研究センター関連医療機関(新宿区および千葉県市川市)職員を対象に実施された新型コロナウイルスに関する疫学調査のデータが用いられた。参加者3,206人から、調査票の回答が十分でない人を除外し、2,543人を解析対象とした。

解析対象者のおもな特徴は、年齢中央値38歳(四分位範囲28~49)、男性29.1%、BMI21.2(同19.5~23.4)。職種は看護師が35.7%で最も多く、次いで医師16.0%、その他の医療職者15.5%、事務職員15.3%、研究職者12.2%などであり、全体の31.7%は交替勤務者だった。

ライフスタイル関連では、脂が乗った魚を週2回以上摂取している割合が23.6%、余暇時間の日中に屋外で週2時間以上過ごしている割合が9.9%であり、4人に1人(25.4%)は日焼け止めを常用していた。また、ビタミンDのサプリメントまたは薬剤を服用している割合は13.0%だった。

ビタミンDの平均値が欠乏の判定値に近い値

血清25(OH)Dが20~29ng/mLを「ビタミンD不足」、20ng/mL未満を「ビタミンD欠乏」と定義すると、それぞれ44.9%、45.9%が該当し、30ng/mL以上で「ビタミンD充足」と判定されたのは、1割に満たない9.3%だった。また、全体の平均が21.5±6.9ng/mLであり、ビタミンD欠乏の判定値とほとんど差がないという結果だった。

ビタミンD欠乏と関連する因子を検討すると、交絡因子を考慮しない粗モデルでは、女性、交替勤務、BMI18.5未満、日焼け止めの常用が正の関連因子であり、反対に、高齢、職種が医師、飲酒量の多さ、余暇時間の日中の屋外での身体活動時間の長さ、脂が乗った魚の摂取頻度の高さ、ビタミンDサプリまたは薬剤の服用などは、負の関連因子であることが示された。

医療従事者の間でビタミン不足/欠乏が蔓延している

次に、年齢、性別、BMI、喫煙・飲酒習慣、併存疾患数、職種、勤務時間、脂が乗った魚の摂取頻度、余暇時間の日中の屋外での身体活動時間、ビタミンDサプリまたは薬剤の服用などを説明変数、ビタミンD欠乏を目的変数とする多変量解析を施行。その結果、ビタミンD欠乏リスクに独立して関連する因子としては、女性(aOR2.41〈95%CI;1.93~3.01〉)が特定された。

反対に、ビタミンD欠乏リスクの低下と独立した関連のある因子として、年齢が50歳以上(30歳未満に対してaOR0.73〈0.56~0.95〉)、飲酒量の多さ(飲酒なしを基準として習慣的な飲酒量に応じてaOR0.55~0.77)、余暇時間の日中の屋外での身体活動時間の長さ(週に0分を基準として時間の長さに応じてaOR0.61~0.68)、脂が乗った魚の摂取頻度の高さ(週に0回を基準として摂取頻度に応じてaHR0.45~0.72)、および、ビタミンDサプリまたは薬剤の服用(aOR0.36〈0.27~0.46〉)が抽出された。

日焼け止めはビタミンD欠乏リスクと関連

上述のように、余暇時間の日中の屋外での身体活動時間が長いことは、ビタミンD欠乏に対する保護因子であり、屋外での身体活動時間が長いほど、ビタミンD欠乏リスクが低いという逆相関が認められた(傾向性p<0.01)。そこでこの関連を、日焼け止めの使用状況でサブグループ化して解析した。

すると、日焼け止めを使用しない人や時々使用する人では全体解析と同様に、屋外での身体活動時間の長さとビタミンD欠乏リスクが逆相関していた。しかし、常に日焼け止めを使う人ではこの関連が非有意となり、前者の群との間に有意な交互作用が観察された(交互作用p=0.02)。これは、日焼け止めの常用によって皮膚でのビタミンD産生が大きく減少することを意味している。

医療従事者に対するビタミンD教育が必要

本研究では、6月という紫外線暴露の多い季節の採血データが解析に用いられている。それにもかかわらず、医療従事者の間でビタミンDの不足や欠乏が蔓延している実態が示された。また、ビタミンD低値に関連する複数のライススタイル要因も浮かび上がった。

著者らは本研究が横断研究であるという限界点を述べたうえで、「COVID-19が終息していない現在、医療従事者に対し、ビタミンDレベルを高めるためのライフスタイルに関する健康教育を行う必要があるのではないか」と結論づけている。

なお、本研究では習慣的な飲酒がビタミンD不足に対する保護因子である可能性が示されたが、このようなデータは、英国の大規模住民ベース疫学研究である「UKバイオバンク」などでも認められるという。ただし、この関連のメカニズムは「不明」とのことだ。

文献情報

原題のタイトルは、「Vitamin D deficiency during the coronavirus disease 2019 (COVID-19) pandemic among healthcare workers」。〔Clin Nutr ESPEN.(In Press〈2024.2.21〉)〕
原文はこちら(Elsevier)

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