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健康な若年者でも夕食がわずか1時間遅くなっただけで、食後の血糖値が有意に上昇する

いつもよりわずか1時間、夕食のタイミングが遅くなっただけで、その後の血糖値が有意に高い状態で推移することを示したデータが報告された。静岡県立大学大学院食品栄養環境科学研究院臨床栄養学教室の中村風月氏、保坂利男氏らの研究によるもので、アジア糖尿病学会のジャーナル「Journal of Diabetes Investigation」に論文が掲載された。

健康な若年者でも夕食がわずか1時間遅くなっただけで、食後の血糖値が有意に上昇する

夕食がどのくらい遅いと糖代謝に悪いのか?

糖尿病患者では夕食の摂取時刻が遅いと、夜間に長時間、高血糖が持続しやすいことが知られており、栄養指導においては、夕食はなるべく早く済ませ就寝までの間に間食をしないようにアドバイスすることが多い。ただ、夕食を遅く食べることの血糖値への影響を調べたこれまでの研究の多くは、ふだんよりも3時間以上も遅く食べるといった条件で検討が行われており、わずかな摂取時刻の遅れの影響はよくわかっていない。また、非糖尿病者での夕食摂取時刻と食後血糖値との関連もあまり検討されていない。

これらを背景として中村氏らは、正常耐糖能の若年成人を対象に、夕食摂取時刻を1~3時間程度遅らせた場合の食後血糖変動への影響を、無作為化クロスオーバー法で検討した。

14日間で夕食摂時刻をランダムに変更し、isCGMにより血糖変動を把握

研究参加者は14人で、うち2人は研究期間中に脱落したため、解析対象は12人だった。研究期間は14日間で、その間、朝食は7時、昼食は13時に固定し、夕食も試験日以外は19時に固定して、かつ、昼食と夕食については性別に2種類の定められたメニューを交互に食べてもらうことで、食事内容による血糖変動への影響を抑制した。

朝食についてはなるべく同じメニューの食事となるように依頼し、実際に写真記録の分析から、毎日ほぼ同じ量・内容の朝食が摂取されたことが確認された。なお、研究開始の2日前から研究期間中は、軽食やエネルギーのある飲料の摂取を禁止し、また激しい運動と飲酒も禁止した。

夕食摂取時刻は19時を基本としつつ、3~4日目、7~8日目、11~12日目には、20時、21時、22時にいずれかとする、夕食摂食時刻遅延条件を試行した。これら三つの条件の試行順序は、研究参加者ごとにランダム化した。血糖値は間欠的血糖スキャン(intermittently scanned Continuous Glucose Monitoring;isCGM)により測定した。

研究参加者のおもな特徴は、年齢23.2±1.5歳、男性と女性が同数で、BMIは男性が23.1±0.9、女性19.4±1.9、日常の食事摂取時刻は朝食から順に、7:48±0:50、12:39±0:26、19:51±1:01であり、起床時刻は7:14±1:14、就床時刻は0:16±1:05だった。

摂取時刻を遅らせた3条件のすべてで食後血糖の上昇を観察

isCGMの記録を解析した結果、夕食摂取前の血糖値はすべての条件で80mg/dL前後であり、有意差がなかった。

一方、夕食後の血糖値に関しては、19時に夕食を摂取する条件に比べて、摂取時刻を遅らせる3条件ではすべて、食後60~120分の間のいずれかで、血糖値が有意に高いタイミングのあったことが確認された。

食後血糖のピーク値は、4条件すべて食後1時間後に記録されており、その値は摂取時刻が19時では130.5±17.6mg/dL、20時では149.2±18.1mg/dL、21時では156.7±27.6mg/dL、22時では152.6±19.2mg/dLであり、21時摂取条件のピーク値は19時摂取条件との間に有意差が認められた。

また、食前値から食後ピーク値への上昇幅、および、食後3時間の血糖上昇曲線下面積はいずれも、摂取時刻を遅らせた3条件すべてで19時摂取条件より有意に大きかった。

この結果を基に著者らは、「夕食の時間がわずか1時間遅れるだけで、その後の耐糖能が損なわれることが明らかになった。この知見は、遅い時間帯の食事や摂取時刻の乱れなどの食習慣を改善することの重要性を浮き彫りにしている」と結論を述べている。ただし、研究の限界点として、少数の健常者を対象とした短期間の研究であり、性差や慢性的な影響を検討できていないこと、研究期間中の身体活動量を完全には制御できていないことなどを挙げ、追試の必要性を指摘している。

なぜ夕食の摂取時刻が遅いとその後の血糖値が上がるのか?

夕食の摂取時刻が遅くなると夕食後の血糖値が高くなる理由について、論文では既報研究を参照し以下のような考察が述べられている。

考えられるメカニズムの一つは、血糖恒常性に関与するインスリンやグルカゴン、コルチゾール、成長ホルモンなどの分泌や感受性は、概日リズムによって部分的に調節されていることの影響が想定されるという。また、昼食後の絶食時間の相違も影響を及ぼし得るのではないかとしている。絶食時間が長いほど遊離脂肪酸(free fatty acid;FFA)が上昇し、インスリン感受性の低下やグルカゴン様ペプチド-1(glucagon-like peptide 1;GLP-1)の分泌減少が生じることが報告されているとのことだ。

研究グループでは今後、昼食の時間を変更したり、夕食を早めに摂取したりした場合の糖代謝への影響を、FFAやGLP-1も含めて検討することを計画しているという。

文献情報

原題のタイトルは、「Delayed dinnertime impairs glucose tolerance in healthy young adults」。〔J Diabetes Investig. 2024 Feb;15(2):172-176〕
原文はこちら(John Wiley & Sons)

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