朝食・昼食・夕食・間食の中で、食事の質が高い人と低い人の違いが最も顕著なのは?
食事の質に関する調査研究は一般的に、調査対象者の1日の食事摂取状況に基づき評価されるが、これを朝食・昼食・夕食および間食という四つの食事機会に分けて評価した調査結果がオーストラリアから報告された。食事全体の質が高い人と低い人では、夕食の野菜摂取量が異なること、食事の質の低い人の自由裁量食品(discretionary food)の摂取量は教育歴とは関連がないことなどが明らかにされている。
日本などでの先行研究の知見を参考に、オーストラリア成人を対象に調査
不適切な食習慣がさまざまな慢性疾患のリスクを押し上げていることはよく知られている。全死亡の22%、障害調整生存年(disability-adjusted life-years)の15%に食事の質が影響を及ぼしているとする報告もある。食事の質の低下は、修正可能なリスク因子であることから、それへの介入が世界的な公衆衛生上の課題となっており、多くの研究が行われてきている。
ところが、それらの研究の大半は、調査対象者の食習慣を1日全体の食事摂取量に基づき評価しており、具体的で効率のよい介入方法を確立することができていない。それに対して2020年に、日本から、食事機会(eating occasion)ごとの食品摂取量を調査した結果として、食事の質の高低で1日の食品摂取のパターンが異なることが報告された(DOI: 10.3390/nu13010067)。ただし、年齢や性別、および、食事の質に影響を及ぼし得ると考えられる教育歴などと、それらのパターンとの関連は明らかになっていない。
これらを背景として、今回紹介する論文の著者らは、オーストラリアの「国民栄養・身体活動調査(National Nutrition and Physical Activity Survey;NNPAS)」のデータを用いて、以下の解析を行った。
食事調査や食事の質の判定方法について
この研究では、2011~12年のNNPASの調査回答者1万2,153人のうち、19歳以上で妊娠中または授乳中でなく、データ欠落のない9,054人のデータが解析された。
食事摂取量についてNNPASでは24時間思い出し法による調査が2回実施されていたが、2回目の調査の回答率が63.6%と低く、年齢などの属性別の解析が困難になることから、初回調査のみのデータを用いた。
食事の質については、同国のガイドライン(Australian Dietary Guidelines;ADG)の遵守状況から「食事ガイドラインインデックス(Dietary Guideline Index;DGI」を算出して判定した。DGIは、ADGの推奨する五つのカテゴリーの食品(果物、野菜、乳製品、タンパク質食品、豆類)と、それらに該当しない自由裁量食品(discretionary food。一般にエネルギー密度が高く栄養価が低い)の摂取量に基づき、0~130点にスコア化され、スコアが高いほどADGの推奨に近く、食事の質が高いと判断される。本研究では、DGIスコアの上位3分の1を「食事の質が高い群」と位置づけ、その他、全体の3分の2を「食事の質が低い群」とした。
夕食での野菜の摂取量が重要であり、この傾向に教育歴は関係していない
まず、食事の質が高い群と低い群の属性を比較すると、年齢層の分布には有意差がなく、性別については質が高い群に女性が多かった(55.1 vs 46.6%、p<0.001)。また、質が高い群は、既婚者が多く(p=0.006)、教育歴が長く(p<0.001)、世帯収入が高く(p=0.003)、食糧不安のレベルが低い(p<0.001)という有意差が存在した。
DGIスコアの平均は、食事の質が高い群は89.6点、質の低い群は66.0点だった。
食事機会ごとの食品摂取量の全体解析
年齢や性別を考慮せずに、食事の質の高い群と低い群の食品摂取量を、食事の機会ごとに比較すると、食事の質にかかわらず、朝食や間食では野菜、タンパク質食品、自由裁量食品はあまり摂取されておらず、また昼食や夕食において食事の質にかかわらず、果物はあまり摂取されていないことなどがわかった。
そのほか、すべての食事機会において、自由裁量食品の摂取量は、食事の質の低い群のほうが多いこともわかった。具体的には、朝食・昼食・夕食での自由裁量食品を摂取する割合は、食事の質が高い群では51~53%であるのに対して、食事の質が高い群では63~69%であり、12~18パーセントポイントの差があった。間食においても同順に75%、85%であり、10パーセントポイントの差があった。
年齢層と性別の解析
次に、19~50歳、51~70歳、および70歳以上という三つの年齢層に分け、かつ女性と男性という計6群に分けて比較検討されている。各群において食事の質の高低により、以下の食品の摂取量に有意差が観察された。
女性での解析
- 朝食
- 19~50歳の野菜の摂取量が、食事の質が高い群で有意に多かった。
- 昼食
- 19~50歳および51~70歳の自由裁量食品の摂取量が、食事の質が低い群で有意に多かった。また、51~70歳の野菜の摂取量は、食事の質が高い群で有意に多かった。
- 夕食
- すべての年齢層で野菜の摂取量が、食事の質が高い群で有意に多かった。また、19~50歳および51~70歳の自由裁量食品の摂取量が、食事の質が低い群で有意に多かった。
- 間食
- すべての年齢層で自由裁量食品の摂取量が、食事の質が低い群で有意に多かった。また、71歳以上では果物の摂取量が、食事の質が高い群で有意に多かった。
男性での解析
- 朝食
- 71歳以上では豆類の摂取量が、食事の質が高い群で有意に多かった。
- 昼食
- 19~50歳および51~70歳の自由裁量食品の摂取量が、食事の質が低い群で有意に多かった。また、51~70歳の野菜の摂取量、および71歳以上の果物の摂取量が、食事の質が高い群で有意に多かった。
- 夕食
- すべての年齢層で野菜の摂取量が、食事の質が高い群で有意に多かった。また、すべての年齢層で自由裁量食品の摂取量が、食事の質が低い群で有意に多かった。
- 間食
- 19~50歳および51~70歳の自由裁量食品の摂取量が、食事の質が低い群で有意に多かった。また、19~50歳のタンパク質食品の摂取量が、食事の質が高い群で有意に多かった。さらに、51~70歳および71歳以上では、果物の摂取量が、食事の質が高い群で有意に多かった。
教育歴別の解析
続いて、教育歴の長さで3群(高校卒未満、高校卒、高等教育機関卒)に分け、かつ女性と男性という計6群に分けて比較検討。各群において食事の質の高低により、以下の食品の摂取量に有意差が観察され、教育歴の長短の影響は観察されなかった。
女性での解析
- 朝食
- どの教育歴のカテゴリーでも、食事の質の高低により摂取量に有意差のある食品群はなかった。
- 昼食
- すべての教育歴カテゴリーで、野菜の摂取量は食事の質の高い群が有意に多く、自由裁量食品の摂取量は食事の質の低い群が有意に多かった。
- 夕食
- 昼食と同様に、すべての教育歴カテゴリーで、野菜の摂取量は食事の質の高い群が有意に多く、自由裁量食品の摂取量は食事の質の低い群が有意に多かった。
- 間食
- すべての教育歴カテゴリーで、果物の摂取量は食事の質の高い群が有意に多く、自由裁量食品の摂取量は食事の質の低い群が有意に多かった。
男性での解析
- 朝食
- どの教育歴のカテゴリーでも、食事の質の高低により摂取量に有意差のある食品群はなかった。
- 昼食
- すべての教育歴カテゴリーで、自由裁量食品の摂取量は食事の質の低い群が有意に多かった。
- 夕食
- すべての教育歴カテゴリーで、野菜の摂取量は食事の質の高い群が有意に多く、自由裁量食品の摂取量は食事の質の低い群が有意に多かった。
- 間食
- すべての教育歴カテゴリーで、果物の摂取量は食事の質の高い群が有意に多く、自由裁量食品の摂取量は食事の質の低い群が有意に多かった。
これらの結果を基に著者らは、「野菜摂取量を増やすための戦略では夕食に重点を置くべき」といった提案を述べている。
文献情報
原題のタイトルは、「Achieving high diet quality at eating occasions: findings from a nationally representative study of Australian adults」。〔Br J Nutr. 2023 Oct 19:1-12.〕
原文はこちら(Cambridge University Press)