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ビタミンDとCは新型コロナウイルスに有効なのか? 系統的レビューでは明確なエビデンスを得られず

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック後の比較的早い段階から、ビタミンDやビタミンCの有効性への期待が高まり、多くの研究がなされてきている。それらの研究報告を対象とするシステマティックレビューの結果が報告された。論文の結論は、「ビタミンCやDがCOVID-19の予後を改善するという仮説は支持されない」とまとめられている。

ビタミンDとCは新型コロナウイルスに有効なのか? 系統的レビューでは明確なエビデンスを得られず

ビタミンD、Cの役割

ビタミンD

ビタミンDは、骨代謝にとって重要なだけでなく、免疫や炎症にもかかわっており、癌、糖尿病、自己免疫疾患、呼吸器感染症の治療上のメリットをもつ可能性が指摘されている。COVID-19に関してもビタミンDのメリットを示唆するデータが少なくない。

その一つはCOVID-19による死亡者の変化の季節性だ。北半球では日照時間が短い冬にパンデミックが始まり、欧州では夏に死亡率が低下後、9月に再び上昇した。これは紫外線による皮膚でのビタミンD産生の影響の存在をうかがわせる。また、アフリカ系アメリカ人とヒスパニック系アメリカ人は、欧州系アメリカ人よりもCOVID-19感染率と死亡率が高いことにも、皮膚の色素沈着の違いによるビタミンDレベルの違いが関与している可能性も考えられる。

ビタミンDは自然免疫応答を調節し、抗ウイルス活性を有するため、急性呼吸器感染症の予防に推奨されている。

ビタミンC

ビタミンCも多面的な生理機能を有しており、肺炎患者にグラム単位のビタミンCを静脈内投与することで、ICU入室期間を短縮可能との報告が複数ある。一方で、ミリグラム単位のビタミンCの経口摂取では無効であることを示す報告がある。

ビタミンCのもつ抗酸化、抗炎症、抗血栓、免疫調節などの機能の多くはCOVID-19の病態に関連する。COVID-19によるサイトカインストーム、敗血症、急性呼吸窮迫症候群(acute respiratory distress syndrome;ARDS)に対するビタミンCの有用性の報告もある。

システマティックレビューの手法と分析結果

2022年5月に、システマティックレビューとメタアナリシスのガイドライン(PRISMA)に従い、Pubmed、Embase、Scopus、Google Scholarを用いて文献を検索。COVID-19に対するビタミンD、Cの有用性を検討した研究報告は、疾患の重症度、基礎疾患の有無、投与プロトコルにかかわらず適格とした。一方、全文が公開されていない論文、ポスター発表、灰色文献、エキスパートの見解、エディトリアルなどは除外した。言語については本論文著者の言語力により、英語、フランス語、ドイツ語、イタリア語、スペイン語で書かれている論文のみとした。

COVID-19、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)、パンデミック、ビタミンC、ビタミンDなどを検索キーワードとして検索したところ、1,314報がヒット。このうち878報は重複により削除し、適格基準・除外基準に基づき23件の研究報告を分析の対象として抽出した。

ビタミンD関連の報告の分析

ビタミンD関連の報告は13報14件で、スペインからが4件、フランス3件、イタリアとインドが各2件、米国、トルコ、ブラジルが各1件。デザインは無作為化比較試験(randomized controlled trial;RCT)が5件、横断研究が2件、後方視的研究が4件、症例対照研究が1件など。11件は入院患者対象、1件は外来・入院患者対象、2件は医療スタッフ対象に行われていた。

合計3,443人の患者が含まれており、年齢59.6±13.9歳、男性50.0%、830人が介入群で2,581人が対照群。

計7報が、ビタミンD介入による院内死亡、機械的呼吸管理、ICU入室のリスク低下を報告していた。一方、4報は対照群と患者転帰の有意差を認めないとの結論だった。

ビタミンC関連の報告の分析

ビタミンD関連の報告は9報9件で、中国からが3件、米国が2件、トルコ、イラン、サウジアラビア、パキスタンが各1件。デザインはRCTが4件、後方視的研究が5件。対象は1件が外来患者で、その他の8件は入院患者対象。

合計1,488人の患者が含まれており、年齢59.8±7.4歳、男性52.0%、605人が介入群で883人が対照群。

計4報が、ビタミンC介入による院内死亡、血栓症、機械的呼吸管理のリスク低下を報告していた。一方、他の研究は対照群と患者転帰の有意差を認めないとの結論だった。

大規模なサンプル数での検討が必要

著者によると、これまでに報告されたビタミンDやCの有用性に関する研究の多くは観察研究が中心だったという。今回のシステマティックレビューの結果から、論文の結論は、「COVID-19患者へのビタミンDおよびCの投与が、疾患感受性、重症度の抑制にプラスの影響を与えるという仮説は支持されなかった」とまとめられている。

ただし、分析の対象となった研究の多くはサンプルサイズが小さいことから、「大規模な多施設共同研究での検証が求められる」とも述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Vitamins C and D and COVID-19 Susceptibility, Severity and Progression: An Evidence Based Systematic Review」。〔Medicina (Kaunas). 2022 Jul 15;58(7):941〕
原文はこちら(MDPI)

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