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新型コロナの影響で子どもの神経性やせ症が1.6倍に 国立成育医療研究センターが全国26医療機関で調査

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミック下で、神経性食欲不振(神経性やせ症)の初診外来患者数が約1.6倍、新規入院者数は約1.4倍に増加したという調査結果が報告された。国立成育医療研究センターが行った調査結果であり、同研究センターのサイトにニュースリリースが掲載された。

新型コロナの影響で子どもの神経性やせ症が1.6倍に 国立成育医療研究センターが全国26医療機関で調査

調査の背景と目的

この調査は、国立成育医療研究センターが行っている「子どもの心の診療ネットワーク事業」の一環として、COVID-19パンデミック下での子どもの心の実態を把握するために行われた。

「子どもの心の診療ネットワーク事業」とは、都道府県などの地方自治体が主体となり、事業の主導的な役割を担う拠点病院を中心に、地域の病院・児童相談所・保健所・発達障害者支援センター・療育施設・福祉施設・学校等の教育機関・警察などが連携して子どもたちの心のケアを行っている事業。子どもの心を専門的に診療できる医師や専門職の育成、地域住民に向けた知識の普及などの活動もしており、国立成育医療研究センターが中央拠点病院として事業を運営している。

COVID-19パンデミックで子どもたちの生活も大きく変わり、心にもさまざまな影響を及ぼしていると考えられる。そこで、子どもの心の診療ネットワーク事業として、パンデミック下の子どもの心の実態を把握する目的で、2021年4月30日~6月30 日に本調査が実施された。子どもの心の診療ネットワーク事業の全国26医療機関にアンケートを送付し、20歳未満の患者について回答を得た。

結果の概要

COVID-19流行前の2019年度と比較すると、2020年度では神経性食欲不振(神経性やせ症)の初診外来患者数が約1.6倍、新規入院者数が約1.4倍に増加していたことが判明した。

神経性やせ症とは、摂食障害の一つで、極端に食事制限をしたり過剰な食事後に吐き出したり過剰な運動を行うなどして、正常体重より明らかに低い状態になる疾患。病気が進行すると、日常生活に支障を来すこともある。米国精神医学会の精神疾患の診断・統計マニュアル第5版(DSM-5)には、

  1. 正常の下限を下回る低体重、
  2. 肥満恐怖あるいは体重増加を妨げる行動の持続、
  3. 自己評価に体重や体型が不相応な影響を受け、低体重の深刻さが認識できない、

などの特徴が挙げられている。

本調査で明らかになった神経性やせ症の子どもの増加の背後には、コロナ禍でのストレスや不安が影響していると推測される。

また本調査では、摂食障害の病床数が不足していることも判明した。摂食障害を治療できる医療機関の拡充が求められる。加えて、家庭や教育機関では、子どもの食欲や体重の減少に気を配り、深刻な状況になる前に医療機関の受診につなげることが必要とされる。

新型コロナの影響で子どもの神経性やせ症が1.6倍に 国立成育医療研究センターが全国26医療機関で調査

(出典:国立成育医療研究センター)

調査結果のポイント

  • コロナ禍で、食事を食べられなくなる神経性やせ症が増加している。
  • 子どもの心の診療ネットワーク事業拠点病院から、コロナ禍で神経性痩せ症の患者が重症化し、入院期間が延びているとの報告もあった。
  • しかし、摂食障害の患者のための病床数が不足していることがわかった。摂食障害の病床充足率について回答があった5施設のうち、4施設で病床使用率が増加しており、充足率(現時点で摂食障害で入院している患者数/摂食障害の入院治療のために利用できる病床数×100)が200%を超える施設が2施設存在した。摂食障害を治療できる医療機関が少ないこともあり、特定の施設に入院患者が集中していると推測される。また、COVID-19患者への病床数を増やしたため、摂食障害の患者の入院まで対応できなくなったことが影響している可能性も考えられる。
  • 神経性やせ症の患者増加の背景には、緊急事態宣言や学校の休校などの生活環境の変化によるストレス、子どもたちが感染対策のために家に引きこもっていること、行事などのアクティビティーが中止になったこと、友達に会えないこと、COVID-19への不安などがあると推測される。
  • コロナ太り対策のダイエット特集の報道やSNSでの情報に、子どもたちが影響された可能性も考えられる。
  • 過去の調査からは、「あまり食欲がない、または食べ過ぎる」と回答した子ども(9~18歳)が全体の約半数であり、今の自分の体型について回答者全体の38%が、「太りすぎ」「太りぎみ」と思っていると回答し、48%が痩せたいと思っていると回答していた。さらに、回答者全体の4%が痩せるために「食事の量を普段の3分の2以下に減らす」、2%が「食べたものを吐く」と回答している。これらから、実際には今回の「パンデミック下の子どもの心の実態調査」で判明した患者数以上に、摂食障害の潜在患者や予備群の子どもがいる可能性も推測される。

今後の展望・発表者のコメント

本調査を行った研究者は、リリースの中で以下のように述べている。

  • 神経性やせ症患者が増加し、また入院日数も延びていることから、入院病床数を確保することが必要になっている。また摂食障害を診察できる医療機関の拡充も求められている。
  • 神経性やせ症の場合、本人が病気を否認して医療機関での受診が遅れがち。子どもの食欲や体重の減少に家族や教育機関で気を配り、深刻な状態になる前に、まずは内科、小児科などのかかりつけ医を受診することが必要。

プレスリリース

コロナ禍の子どもの心の実態調査 摂食障害の「神経性やせ症」が1.6倍に(国立成育医療研究センター)

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