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新型コロナウイルス感染症に対する栄養とサプリメントの役割を文献レビューから考える

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する栄養とサプリメントの役割に関するレビュー論文が報告された。イタリアの研究者らが発表したもの。疾患の予防法や治療法のエビデンスは、通常であれば無作為化比較試験を繰り返しながら構築されていくが、パンデミックという緊急事態に対応するには、とくに長期間の介入が必要とされることの多い栄養学的アプローチについては短期間で成果を得ることが困難であり、文献的な考察による論文が多く発表されている。本論文もその一つで、COVID-19に関する栄養学的アプローチの研究を対象としている。

新型コロナウイルス感染症に対する栄養とサプリメントの役割を文献レビューから考える

文献検索の手法について

文献検索にはPubMedが用いられた。2021年1月31日までに掲載された論文を対象として、キーワードは「コロナウイルス」「SARS-CoV-2」「COVID-19」「重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2」「栄養」「食事」「サプリメント」とした。

ヒトを対象とした研究であれば、原著、症例報告、レター、レビューなども適格とする条件設定で、ヒットした36件から16件の報告を抽出した。本論文では、前半を「COVID-19と栄養」、後半を「COVID-19とサプリメント」としてまとめている。

COVID-19と栄養

多くの研究によって免疫系が最適な状態で働くには適切な栄養が必要であることが示されている。最適化された栄養戦略は免疫システムをサポートするだけでなく、慢性炎症を抑制する。

あるレビュー論文では、栄養状態の不良はとくに高齢者において急性ウイルス感染および重篤な疾患における死亡率の予測因子である可能性があると結論付けている。重症疾患における栄養補助食品の推奨事項は、集中治療室(ICU)入室中のCOVID-19患者にも適用される。免疫系の改善のため、新鮮な果物や野菜、大豆、ナッツ、オメガ3脂肪酸などの抗酸化物質を推奨する論文もみられた。

栄養状態はCOVID-19の患者の予後を左右する重要な要因であると考えられるが、これまでにCOVID-19患者の最適な早期栄養療法に関する明確な結論は得られていない。COVID-19パンデミックという状況を、感染症に対する栄養介入の実効性を検証する良いチャンスだとする主張も存在する。これまでに提案されてきた感染症に対する栄養学的アプローチを、パンデミックという状況下で検討することができれば、少なくとも一つの前向きなlegacy(遺産)として残すことができるのではないかとの提案だ。つまり、「必要は発明の母である」と、その論文の著者らは述べている。

他のレビュー論文の著者らは、果物、野菜、全粒粉、低脂肪乳製品、健康的な脂質(オリーブオイルと魚油)などの生鮮食品に基づいた食事をとり、甘い飲み物、高カロリー、高塩分の食品の摂取を制限することが重要であると結論している。

COVID-19と栄養補助食品

ビタミンDの補給はインフルエンザのリスクを低減することが示されている。また、2019年12月25日から2020年1月26日に中国の武漢に解説されたCOVID-19のための臨時病院に入院したCOVID-19肺炎患者201人を対象とした後ろ向きコホート研究では、COVID-19の主な危険因子の一つは不十分な免疫応答であることがわかり、季節性感染症と重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV-2)の双方の予防における食事療法とサプリメントの保護的役割についての検討の重要性が示された。

ビタミンD不足は、世界人口の約50%に存在するとの報告もある。横断的研究からはビタミンD欠乏症の有病率の高さは、その集団の総死亡率の独立した危険因子であることが示唆され、公衆衛生上の重大な懸念事項として注目されつつある。

実際、ビタミンD欠乏症の悪影響は広範囲に及ぶ。心血管疾患、2型糖尿病、癌、うつ病などの複数の慢性疾患の発症と進行に密接に関連しており、骨の健康の悪化と免疫機能の低下に関連している可能性がある。

またビタミンD欠乏症は、呼吸器感染症のリスクの増加に関連しており、この点はCOVID-19などのウイルス感染症において重要である可能性がある。今回のCOVID-19パンデミックで、COVID-19の発症を予防するためにビタミンDが有効であると確証的な報告はまだみられないが、ビタミンDサプリメントの使用はしばしばウイルス感染の予防に重要な役割を果たすと考えられる。

反対に、最近の臨床試験から、COVID-19の入院患者にプラセボまたはビタミンD3の単回高用量を投与したところ、入院期間の有意な差は生じなかったと報告された。他方、横断的コホート研究から、食事からのマグネシウムとビタミンDの相互作用が、死亡リスクに影響を及ぼす可能性を指摘した論文が存在する。その論文の著者らは、マグネシウムの補給がベースラインの25-ヒドロキシビタミンD [25(OH)D]レベルに応じて、ビタミンD代謝に異なる影響を与えるという仮説を検証し、適切なマグネシウムレベルが25(OH)D状態の最適化に重要であると述べている。

このほかに、ビタミンD、マグネシウム、およびビタミンB12を投与されたCOVID-19高齢患者は、対照群に比較して、呼吸管理、ICU入室を要する割合が有意に低かったと結論付けている論文もみられる。

ウイルス性呼吸器感染症の予防におけるプロバイオティクスの役割も注目されてきている。さらに、SARS-CoV-2感染の感染経路の一つとして、消化管の関与が示唆されている。COVID-19では腸管粘膜の炎症が引き起こされ、時に下痢を起こす。これら二つの症状は免疫応答を悪化させ、全身炎症性メディエーターを生成し、 COVID-19重症化にかかわる可能性が考えられる。この点でも、プロバイオティクスサプリメントの使用をより適切に評価する必要があるだろう。

考察と結論

相反する報告があるが、複数の微量栄養素の補給がCOVID-19感染の予防と管理の両方で重要であると考えられる可能性があると言える。感染のリスクを減らすと同時に、COVID-19患者の健康状態を改善する可能性を考慮して、免疫応答の調節に重要な役割を果たす物質に特に注意を払う必要があろう。

免疫サポートの最も強力なエビデンスのある微量栄養素は、ビタミンC、D、および亜鉛であり、とくにビタミンDについては極めて重要な知見が発表されてきている。またCOVID-19感染の胃腸レベルでの悪影響を減らすために、プロバイオティクスに関する研究を推進する必要がある。

これまでのCOVID-19患者に関する報告から、最悪の結果は一つ以上の基礎疾患がある患者で発生することが明らかである。それら基礎疾患は、代謝性疾患に強く関連している。例えば、肥満者はCOVID-19重症化リスクが高い。そのため、COVID-19の感受性と回復に対する、不健康な食事の影響を考慮することが重要だ。

加えて、COVID-19から回復後に、慢性疾患が急増する可能性が最近、指摘され始めている。これらの状態は、栄養状態が最適でないがためにさらに悪化する可能性がある。よって、COVID-19からの回復後にも、飽和脂肪酸と糖を多く含む食品を控え、逆に、免疫機能を高めるために、食物繊維、全粒穀物、不飽和脂肪酸、抗酸化物質を多く摂取することが望ましい。

最後に、パンデミック中の外出自粛やロックダウン、隔離によって生じた不健康な食習慣が非感染性疾患のリスクを高める可能性が考えられ、この点にも留意すべきだろう。

文献情報

原題のタイトルは、「COVID-19: Role of Nutrition and Supplementation」。〔Nutrients. 2021 Mar 17;13(3):976〕
原文はこちら(MDPI)

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