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日光曝露、ビタミンD摂取の双方が呼吸器感染症リスクを抑制 英陸軍のRCTで有意差

アスリートと同様に激しい身体活動を行っている軍隊の兵士を対象に行われた研究で、ビタミンDレベルを高めることが感染症のリスクの低下につながることがわかった。日光曝露、またはビタミンDサプリメントの摂取といういずれの方法も有効であることが、プラセボ対照無作為化二重盲検試験で証明された。

日光曝露、ビタミンD摂取の双方が呼吸器感染症リスクを抑制 英陸軍のRCTで有意差

英国陸軍の兵隊を対象とする二つの研究

ビタミンDは古くから骨代謝調整作用について研究されてきているが、免疫能を高める作用もあり、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックが続く現在、とくに後者の役割への期待が高まっている。一方、アスリートは上気道感染症(upper respiratory tract infection;URTI)のリスクが高いことが知られており、これには高強度の身体活動の負荷を補うのに不十分な栄養摂取が一因であることが想定されている。今回紹介する論文は、英国陸軍の兵士を対象に行われた研究で、極めて高強度の身体活動を継続的に行っているというアスリートと共通する対象での検討であり、得られた知見はアスリートの感染症リスク抑制にも援用できる可能性が高い。

本論文は、以下の二つの研究報告としてまとめられている。

一つ目の研究は「ビタミンDレベルと上気道感染症(URTI)のリスクに相関はあるか?」、二つ目の研究は「ビタミンDレベルを高めることで、URTIのリスクを抑制できるか?」を検証したものだ。

12週間の軍事トレーニング中に実施された研究

研究1と2は男性と女性が参加し、研究2は男性のみが参加した。いずれも、軍隊だからといって研究へ強制的に参加させたのではなく、各人の意志に基づきボランティアとして参加した対象に行われている。

これらの研究は、2週間の基本的軍事トレーニング中に行われた。トレーニングは、練兵場での訓練、負荷のかかる状態での行進、持久力トレーニング、サーキットトレーニング、敏捷性を高めるための屋内での訓練などで構成されていた。

なお、男性は北緯54度に位置するトレーニングセンター、女性は北緯51度に位置するトレーニングセンターで、このトレーニングと研究が行われた。さらに、この軍事トレーニングの実施期間は1~2月であり、高緯度かつ冬季という日光照射量が少ない条件下で、皮膚でのビタミンD合成はごく低レベルな状態での研究と言える。

では、順番に一つ目の研究のエッセンスから紹介しよう。

研究1:ビタミンDレベルと上気道感染症(URTI)のリスクに相関はあるか?

研究1の対象は1,644人の新兵で、うち男性は1,220人(21±3歳、BMI24.0±2.7、白人95%、喫煙者38%)、女性は424人(22±3歳、BMI23.7±2.47、白人95%、喫煙者24%)。採血検査によりビタミンDレベル〔血清25(OH)D〕を測定するとともに、医師がURTIの診断し、また軍事訓練に参加できなかった日数を評価して、これらの関連を検討した。

対象者は1~9月にわたってトレーニングセンターに所属しており、そのうち、1~2月に実施された12週間の軍事トレーニングにも参加した新兵のデータが解析に用いられた。

冬季は大半の新兵がビタミンD低値

血清25(OH)Dレベルを季節で比較すると、冬季は他のすべての季節よりも有意に低値だった。冬季に血清25(OH)Dレベルが50nmol/L以上だったのは、21%と5人に1人の割合だった。

ビタミンDの低さが、URTI有病率の高さと関連

合計110件のURTIエピソードが記録されており、参加者の7%が少なくとも1回、医師によりURTIと診断されていた。1回のURTI罹患により平均3.4±3.3日、トレーニングを欠席していた。これは総トレーニング日数の4%に相当する。

ベースラインの血清25(OH)D が50nmol/L以上か未満かで比較すると、50nmol/L以上の群は未満の群よりも、12週間のトレーニング期間中に医師の診断に基づくURTIの発症率が40%低かった(それぞれ6% vs 9%.OR0.6(95%CI;0.4~0.9),p<0.05)。とくにトレーニング開始から3週間以内のURTIリスク差は、より大きかった(同順に2% vs 5%.OR0.5(95%CI;0.3~0.8),p<0.05)。なお、全URTIエピソードのうち約半分(52件、47%)が、トレーニング開始3週間以内期間中に発生していた。

性別と喫煙習慣の有無で調整後も、ビタミンDレベルとURTI罹患リスクとの関連の有意性は保たれていた。

研究2:ビタミンDレベルを高めることで、URTIのリスクを抑制できるか?

研究2は男性250人を対象に、二重盲検ランダム化プラセボ対照試験として実施された。対象者は22±7歳、BMI24.2±3.0。ふだんビタミンDを含むサプリメントを摂取していないこと、日焼けをする習慣がないこと、研究参加前に日光照射量の多い地域への旅行をしていないことを適格条件とした。

参加者全体を無作為に以下の4群に分けて、12週間介入した。経口ビタミンDサプリメント摂取群、経口プラセボ摂取群、日光(紫外線)照射群、疑似日光照射群。

前述のようにこの研究は1年で最も日光照射量の少ない季節に行われたため、12週間にわたる介入の最初の4週間はビタミンDレベル回復期間とし、経口ビタミンDサプリメント摂取群には1,000IU/日、それに続く8週間の維持期間は400IU/日という用量が設定された。この用量設定は、先行研究から血清25(OH)Dレベル50nmol/L以上を維持し得る量であり、かつ、欧州食品安全機関(European Food Safety Authority;EFSA)等の定める許容上限値を超えていない。

また、日光照射群は、英国北部で真夏の正午に屋外で15分間、カジュアルな服装で過ごした場合と同程度の紫外線照射を毎日行った。

日光照射や経口ビタミンD摂取はともに、ビタミンDレベルを十分に高める

ベースラインにおいて、ビタミンDレベルが十分高いと判定されたのは参加者の4分の1(27%)にとどまっていた。しかし、日光照射群と経口ビタミンD摂取群は介入5週目時点で対象のほぼすべて(95%以上)が、十分なビタミンDレベルに回復していた。5週目および12週目時点の血清25(OH)D濃度は、それぞれのプラセボ群より有意に高かった(p<0.001)。

ビタミンDサプリはURTIの重症度を軽減し病悩期間を短縮する

介入中に合計93件のURTIエピソードが認められ、全体の69%は少なくとも1回、自己申告によるURTIを報告した。

URTIの有病率は、介入期間を通じて群間に有意差はなかった。しかし、ビタミンDサプリ摂取群はプラセボ群に比較し重症度が15%低く、かつ病悩期間の合計日数が36%少なく、いずれも有意差が存在した。

日光照射群とビタミンDサプリ摂取群で、URTIの罹患や病悩期間に及ぼす影響に差はなく、両者同等の効果があると考えられた。

以上、一連の結果から、著者らは結論を「ビタミンDレベルが高いことは、ハードな訓練を行っている新兵の上気道感染症の重症度と病悩期間を短縮した。軍の兵士や、兵士と同様にハードトレーニングを行っているアスリートの上気道感染症リスクを軽減するために、高いビタミンDレベルを維持することが推奨される」とまとめている。

文献情報

原題のタイトルは、「Influence of Vitamin D Supplementation by Simulated Sunlight or Oral D3 on Respiratory Infection during Military Training」。〔Med Sci Sports Exerc. 2021 Jan 21〕
原文はこちら(American College of Sports Medicine)

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