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COVID-19パンデミックが摂食障害のある人に及ぼす影響をSNSの投稿から分析

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックが摂食障害のある人々に与えている影響を、ソーシャルメディアの投稿内容の定性的な分析によって検討した研究結果が報告された。摂食障害の症状の変化、身体活動量の変化など、6種類の主要テーマが抽出され、不安感の増大や症状の悪化が多く認められたという。

COVID-19パンデミックが摂食障害のある人に及ぼす影響をSNSの投稿から分析

COVID-19によるメンタルヘルスへの影響が現れやすい人も存在する

COVID-19のパンデミックにより、世界中で外出自粛または禁止などの措置がとられている。このような状況は、人々にメンタルヘルス状態の悪化をもちらすと考えられ、実際にそのような影響が現れていることが多くの国から報告されつつある。パンデミック以前からメンタルヘルス面に困難さを抱えていた人にとっては、この影響はより深刻なものとなる可能性があり、摂食障害(eating disorder;ED)を有する人たちもハイリスクと考えられる。

一方、アスリートのED有病率は一般人口に比較して高いことが報告されている。背景として、過度な運動負荷、過大または過少な食事摂食、摂食量や摂食時間の変動の大きさ、体重階級のある競技や審美系競技のための厳格な体重管理などが想定されている。

EDの既往がある人、または現在EDの人は、COVID-19関連の不安が症状などに悪影響を及ぼす可能性があるが、まだ十分に検証されていない。そこで本論文の研究者は、Web上に存在するED関連のディスカッションフォーラムの記述を定性的に分析するという手法で、その影響の有無を検討した。

SNSの投稿分析で、6つの主要テーマを抽出

研究に用いたディスカッションフォーラムは、ニュースやWebコンテンツの評価、情報交換コミュニティーなどで構成されているソーシャルメディアプラットフォーム「Reddit」。このRedditは、心理学研究のデータを収集するためのツールとして、よく用いられている。

Redditのフォーラムは、登録ユーザーの関心のあるコミュニティーごとに分かれている。本研究では、EDを主要なディスカッショントピックとして認めているもののうち、人気の高い以下3件のコミュニティーからデータが収集された。一つは「Eating Disorders(摂食障害の集まり)」でメンバー数は4万3,500、二つ目は「Anorexia Nervosa(神経性食欲不振症)」で同1万9,200、三つめは「Binge Eating Disorder(過食性障害) 」で同3万5,700。

2020年1月1日~5月31日に、COVID-19パンデミックに言及した投稿、具体的には、コロナウイルス、COVID、隔離、またはパンデミックというキーワードを一つ以上を含むものを抽出。また、投稿内容に対する返信コメントも収集した。

帰納的データ分析により、6つの主要なテーマが特定された。6つのテーマとは、COVID-19パンデミックによるED症状の変化、日常の身体活動の変化、隔離が日常生活へ及ぼしている影響、幸福感、助けを求めるためのアクション、および、健康リスクについて。

本論文はこれらの6テーマについて、詳細な分析を行っている。以下に要旨を抜粋する。

ED症状の変化

多くのSNSユーザーがCOVID-19パンデミックによるED症状の悪化を伝えていた。投稿の3分の2(65.9%)に、食べ物と体重に関連する強迫観念を無視するのに苦心していることが語られ、自宅隔離を「食べ物に囲まれている状態」と表現し、「すべての食べ物を自分でコントロールできないように感じる」との表現が多くみられた。

EDの既往があるものの現在は回復したと語っているユーザーの一部にも、COVID-19パンデミックが非常に混乱をもたらしていることを想起させるコメントがみられた。一方で、パンデミックの影響はないと述べるユーザーも少数存在し、彼らは自分自身の不安を客観的に評価することを心がけていた。

COVID-19パンデミックをED症状の回復の機会にあてるなどの工夫について話し合い、EDの重症度を抑制することに成功していたユーザーも存在した(12.1%)。ただし、それらの人の中には、パンデミック収束により隔離状態が解除された場合に、ED関連行動が再発することを懸念する声もあった。

投稿の約5分の1(21.0%)に、ボディーイメージに関する記述がみられた。あるユーザーは、「鏡を見るのが怖い。シャワーを浴びることや着替えさえできないほどになっている」と書き込んでいた。

日常の身体活動の変化

パンデミック以前から習慣的な運動をしていたユーザーは、それが困難になったと報告していた(13.4%)。また、習慣的に運動を行う意欲が低下したと報告するユーザーもみられた。あるユーザーは、「食べてよい量を確保するために、以前よりも余計に運動しなければならない」と記していた。

運動・スポーツ施設が閉鎖されているために運動をできないとの記載もあった。彼らは、習慣的に運動を行うことが、ED関連の危険な行動、例えば嘔吐や下剤の使用の代替として役立ち、しばしば運動が助けになっていたと考えていた。

パンデミックのために運動施設を利用できなくなった人の多くが、習慣的な運動量の確保に困難を訴え、以前の(ED症状が重度であった頃の)「古い習慣に陥る」ことへの恐れを述べていた。

隔離が日常生活へ及ぼしている影響

ユーザーの3分の1以上(39.0%)が、COVID-19予防のための施策が、日常生活を直接的に混乱させていると話題にしていた。仕事、学校、懇親会に参加できず、多くのユーザーが退屈と孤独を訴え、失業したことを述べるユーザーもいた。彼らは、それを敗北したと感じ、その結果、ED行動に走るような事態を避けるために、強い意志が必要であったと報告していた。

一部のユーザーは、食料の入手が困難になったことを伝えていた(11.1%)。腐りにくい食品を購入し蓄えておかなければならないことを、圧力のように感じるとの報告も存在した。

幸福感

投稿のほぼ3分の2(62.6%)が、現在の出来事や無秩序な思考や行動に反応して否定的な感情を経験したと報告していた。例えばあるユーザーは、「私は、ただ横になっているだけだ。映画が大好きだが、どういうわけか見ることができない。本当に悲しい。私はEDの再発に何度も苦労してきている。今、私は嫌な気分で、何をすべきかわからない。非常に孤独を感じている」。

助けを求めるためのアクション

25.6%のユーザーが、EDの回復の機会として隔離の義務を利用する強い意欲を表明していた。これらの個人は、以前の日常生活の継続が半ば強制的に遮られたことが、習慣性を抑制し、より健康的な習慣へと変えるための時間をもたらしたと感じていた。

ユーザーの約10分の1(9.8%)は現在、治療プログラムに参加していると述べていた。これらのユーザーには、プログラム提供者の不満、例えば提供者がEDの重症度を理解していないと感じたり、EDを専門としていないといったことを書き見込んでいた。また一部のユーザーは、遠隔医療がまだ、彼らが必要とするケアのレベルに達していないと述べていた。

10.2%のユーザーは、COVID-19パンデミックのためにEDの治療を受けることができていないと報告していた。またそれ以外にも、進行中だった治療計画の変更を強いられたことが報告されていた。

これらのネガティブな投稿の一方で、多くの投稿(50.2%)は、同種の経験をしているユーザーからのサポートやガイダンスを受けていた。また、9.5%の投稿には、他者を励まし、元気づけることを目的とする記述が含まれていた。多くの場合、それらの投稿は、彼らが一人でないことを改めて気づかせる内容だった。

さらに、投稿の3.3%は本人がEDなのではなく、ED症状のある身近な人を助ける方法についてのアドバイスを求める内容だった。それらのユーザーは、EDのある人が、パンデミックの前に観察されていたより、その症状が重症化したように感じていることを報告していた。

健康リスク

投稿の約10分の1(10.1%)は、摂食行動の乱れの結果として、身体の痛み、胃腸障害、歯の痛み、脱水症状を経験していることに言及していた。それらを経験した多くの人は、他の人に身体的苦痛を知らせたり医師の診察を受けたりすることにためらいがあると述べていた。反対に、健康上の有害事象を経験するとED治療への意欲が高まると報告したユーザーは1名だけ存在した。

長期間の隔離がED症状に及ぼす影響の研究が求められる

以上のような考察をもとに、著者らは本論文の結論を以下のようにまとめている。

「EDを抱えRedditに参加している大多数の人にとって、COVID-19のパンデミックは、精神的苦痛の増加、摂食行動の乱れ、および否定的なボディーイメージにつながっている。Redditディスカッションフォーラムは、個人の経験を共有し、アドバイスを求め、EDの仲間にサポートを提供するための共同体を提供してきた。COVID-19がEDに与える影響をさらに深く検討し、メンタルヘルス治療におけるソーシャルメディアでのディスカッションフォーラムの役割を評価していく必要がある」。

文献情報

原題のタイトルは、「Impact of the COVID-19 Pandemic on Disordered Eating Behavior: Qualitative Analysis of Social Media Posts」。〔JMIR Ment Health. 2021 Jan 27;8(1):e26011〕
原文はこちら(JMIR Publications)

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