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英国栄養士会が新型コロナウイルス禍の食生活アドバイスを公開・随時更新

英国栄養士会(British Dietetic Association;BAD)は、一般市民から寄せられることの多い新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に関する質問とその回答(Frequently Asked Questions;FAQ)をWeb上に公開した。現状では「サプリメント」「一般的質問」「栄養不良」「健康状態」「妊娠、赤ちゃん、子ども」というカテゴリーに分けられ、約20項目の解説がなされている。その中からいくつか紹介する。

英国栄養士会が新型コロナウイルス禍の食生活アドバイスを公開・随時更新

食事療法によって免疫システムを強化可能か?

端的に言って食事により免疫システムを「ブースト(上乗せ)」することはできず、ある種の食品やサプリメントを摂取したからと言ってCOVID-19のウイルスからの回避はできない。感染抑止の最良の手段は、基本的な衛生習慣に他ならない。欧州食品安全機関 (European Food Safety Authority;EFSA)は、英国内で流通しているあらゆる食品や食品成分について、感染予防に効果があると表示することを承認していない。

免疫能に関与する栄養素は多くあり、免疫能をサポートするためにバランスのとれた食事の維持を推奨する(例えば、銅、葉酸、鉄、セレン、亜鉛、ビタミンA、B6、B12、 C、Dなど)。健康的なバランスの良い食事を維持するためには、何か1つの食品をより多く摂取するのではなく、さまざまな食品を食べることを勧める。

ビタミンDサプリメントをとるべきか?

ビタミンDはカルシウムとリンとともに、健康な骨、筋肉、歯を維持し、また、筋力を保ち、くる病、骨軟化症、転倒を防ぐためにも重要だ。

ビタミンDは通常、そのほとんどが食物からではなく日光により産生される。したがって、ビタミンや栄養素に配慮された健康的でバランスのとれた食事をしていたとしても、十分な日光を浴びることができなければ、ビタミンD不足となる。秋からの数カ月間は日光が弱い。今の季節は春だ。できれば、日光のあたる屋外(庭やバルコニーなど)で時間を過ごすことを推奨する。

ただし、自宅待機・隔離のために外出不能の場合は、ビタミンD維持のため、成人および1歳以上の小児では、10μg/日のサプリメント服用を考慮すべき

厚生労働省「日本人の食事摂取基準2020年版」では、成人のビタミンD摂取の目安量は8.5μg/日、耐容上限量が100μg/日。

COVID-19に感染している可能性があるために自己隔離している人への一般的な栄養アドバイスは?

自宅で症状に対処できないと感じた場合、および症状が悪化し続けている場合、または症状が7日以上続いている場合は、NHS111(英国における24時間電話対応サービス)にアクセスする。かかりつけ医や薬局、病院に行ってはならない。

自宅隔離中、とくに症状がある場合は、良好な栄養と水分補給が重要。食欲がない人の場合も、定期的に飲食していることを確認すること。

特定の栄養が必要な場合は、栄養士や他の医療専門職者が作成した食事に関する推奨事項を引き続き守ることが重要。その実行に際して、友人や家族に食品の入手を依頼すべきこともある。

深刻な懸念がある場合は、栄養士または他の医療専門職者に安全な方法で連絡をとる。

購入した食品を最大限に活用する方法は?

まず、通常より多くの食料を備蓄したり購入したりする必要はない。買い物を最小限に抑えるよう努めるべき。政府にスーパーマーケットを閉鎖する計画はなく、現時点での不足はパニック買いによって引き起こされている。

自宅隔離をするとしても、ほとんどの場合その期間は2週間だ。もし長くなるのであれば、友人や家族に物資の提供を依頼するか、配達用の食品を利用する。

食品を無駄にしないために、最初に生鮮食品を使い切ることだ。比較的長期保存が可能な生鮮食品として、ジャガイモ、サツマイモ、ニンジン、タマネギなどの根菜が該当する。

サラダの葉と新鮮なハーブはていねいに洗浄、すすぎ、水切りし、サラダスピナー(野菜水切り)で水切りし、プラスチック製の保管トレイに入れ蓋をして冷蔵する。これにより、蓋をせずに冷蔵保存するよりもさらに数日間新鮮さが持続する。

当然ながら、冷蔵庫に保管する必要のないものを冷蔵庫に入れないことだ。例えば新鮮なトマト、皮が付いた玉ねぎなどは冷蔵保存の必要はなく、涼しく暗い場所に保管することで冷蔵庫のスペースが広がり、より傷みやすい食材を収納できる。

食品からのCOVID-19感染の可能性は?

食品からコロナウイルスが検出されることはほとんどない。COVID-19は呼吸器疾患である。食品または食品包装への暴露により感染するようなケースは知られていない。

一般的な食品安全アドバイスに従うことだ。手を洗い、食材の表面をきれいにし、生の肉や魚はその他の食品と接しないように扱う。

英国公衆衛生局(Public Health England;PHE)は、食品業界向けにCOVID-19に関するガイダンスを公開している。食品業界の勤務者は感染リスクを最小化するため、これに従わなければならない。

COVID-19が心配な場合、メンタルヘルスをどのように保てばよいか?

人々がCOVID-19の発生とそれが自分たちの生活に与える影響について不安や動揺を感じることは容易に理解できる。現在はストレスフルな時であり、精神的・身体的健康を守ることは重要だ。

英国公衆衛生局は、メンタルヘルスとウェルビーイング(充実した生き方)に関する次のようなアドバイスを発表している。

  • 人との関連を維持する
  • 他者をサポートする
  • しっかり眠る
  • 困難な感情を整理し、他の人に話す
  • 事実を知る

COVID-19に対し、栄養不良が重要となるのはなぜか?

感染リスクがあるとされ自宅待機を指示された人は、栄養不良のリスクが高まると考えられる。そして栄養不良であることが感染のリスクを高め、感染からの回復を遅らせる可能性がある。

また栄養不良は高齢者や社会的に孤立している人によく見られる。社会的孤立は、健康を維持するために必要な多種多様な食品へのアクセスに影響を与えることがある。栄養不良はフレイルのリスクを高める可能性もあり、これは高齢者でより一般的な問題である。フレイルは感染症、転倒などにつながり、さらに状態を深刻化させる。

感染症等による意図しない体重減少は、元の体重がどうであれ問題である。

以上、多くのQ&Aの中から、一部を紹介した。なお、同サイトでは現在も情報の更新、追加が続けられている。

※日本栄養士会のホームページでは、中村丁次会長によるさらに詳細な解説を紹介していますので、会長のメッセージとともにご覧ください。

文献情報

COVID-19 / Coronavirus - Advice for the General Public(英国栄養士会)

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