新型コロナウイルスが食生活・身体活動に与えた影響 オンライン国際調査の結果
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックは世界中の人々の生活スタイルを一変させた。その変化を明らかにするための国際調査が実施され、先行解析の結果が報告された。食生活、身体活動量への悪影響は予想されていたことだが、その実態が明らかになった。
35研究機関が多言語を用いて世界的調査を実施
COVID-19パンデミックに対し、各国政府により、社会的距離の確保、隔離、外出自粛などの対策がとられている。これらの対策はCOVID-19蔓延の影響を抑制するために不可欠だが、日常生活に多くの制限が生じている。
本論文は、本年4月に実施された国際共同調査「Effects of home Confinement on multiple Lifestyle Behaviours during the COVID-19 outbreak;ECLB-COVID19」の結果報告。ECLB-COVID19は、欧州、北アフリカ、西アジア、南北アメリカの35の研究機関により、英語、ドイツ語、フランス語、アラビア語、スペイン語、ポルトガル語、スロベニア語で、オンラインで実施された(後にオランダ語、ペルシャ語、イタリア語、ギリシャ語、ロシア語、インド語などを追加)。アンケート内容は64項目で、いずれもパンデミック前とパンデミック中を比較する質問で構成されている。
4月6日にGoogleのオンラインフォーム上に公開され、18歳以上の世界中のすべての人からの回答を求めた。4月11日には回答数が1,000件を超え、本論文ではこの日までの回答1,047件を解析対象とした。
回答者の属性は、女性が54%、地域は北アフリカ40%、西アジア36%、欧州21%、その他3%、学歴は修士・博士号50%、学士37%、配偶者ありが54%、独身者が44%、被雇用者51%、学生25%、失業7%、自営業7%。
すべての身体活動量の指標が低下
身体活動量は国際標準化身体活動質問票の簡易版(International Physical Activity Questionnaire Short Form;IPAQ-SF)等により評価した。
パンデミック前と比較しパンデミック中の高強度の身体活動は、週あたりの日数で22.7%、日あたりの時間数で33.1%、それぞれ有意に減少し、MET値(Metabolic Equivalent of Task)は36.9%有意に低下していた。中等強度の身体活動も同様に、24%、33.4%、34.7%有意に減少していた。
ウォーキング歩数は週あたりで35%、1日あたりで34%減少しており、ウォーキングのMET値は42.7%低値で、いずれも有意だった。反対に座位時間は、28.6%有意に増加していた。
食生活の有意な乱れも観察される
食生活に関しては、ロックダウン中の食事の評価のために開発された調査票(Short Diet Behaviours Questionnaire for Lockdowns;SDBQL)等により検討した。その結果、パンデミック前に比較し食事制限のスコアが4.4%有意に上昇していた。
不健康な食品を摂取する頻度や、食べる量をコントロールできなくなること、食間のスナックの摂取は、いずれもパンデミック中に増加していた。
その一方、飲酒量はパンデミック前に比較し有意に減少していた。
文献情報
原題のタイトルは、「Effects of COVID-19 Home Confinement on Eating Behaviour and Physical Activity: Results of the ECLB-COVID19 International Online Survey」。〔Nutrients. 2020 May 28;12(6):E1583〕
原文はこちら(MDPI)
新型コロナウイルスに関する記事
栄養・食生活
- 発表!「スポーツ栄養Web」2020年で最も読まれたニュースランキング20【新型コロナウイルス編】
- ビタミンD、C、E、亜鉛、セレン、ω3脂肪酸は新型コロナウイルスのリスクを下げ得るか?
- ビタミンDサプリは、アスリートのCOVID-19リスク低減とパフォーマンス向上に効果があるのか?
- 飲み会での新型コロナ感染事例の研究結果 国立感染研が客と店員向けに提言
- 会食時に新型コロナに感染した事例の研究結果「斜め向かい着座などがリスクを下げる可能性」国立感染症研究所
- 運動習慣と機能性食品の新型コロナウイルスに対する予防効果をレビュー
- ロックダウン中の免疫能の維持 焦点をアスリートに当てた学際的アプローチ
- SNDJ動画『タンパク質をしっかり摂るレシピ』第2弾【牛肉編】3本を公開しました!
- 新型コロナロックダウン中の10代若者の変化 身体活動量や超加工食品摂取頻度を5カ国で比較
- COVID-19に対する世界の行政府、保健機関の推奨事項をレビュー 食事やサプリメント、母乳育児、食品衛生など
- こばたてるみ先生が登場! SNDJ動画「タンパク質をしっかり摂るレシピ」がスタート
- 新型コロナウイルスの罹患率、死亡率とビタミンDに関連性 欧州20カ国のデータを比較検討
- 厚労省が新型コロナ禍の「新しい生活様式」における熱中症予防のポイントを公開
- SNDJアンケート「新型コロナ自粛生活における栄養士・アスリートの環境変化に関する調査結果」を公開
運動・エクササイズ
- 新型コロナウイルスがスポーツや運動習慣に及ぼした影響を全国調査、その結果を公開 笹川スポーツ財団
- COVID-19ロックダウンの影響は日常の運動量が多い人ほど大きい? スペインでの縦断研究
- 2,500METs/週の運動が、COVID-19パンデミック時のメンタルを維持 中国での縦断調査
- 【医療従事者向け】新型コロナウイルス流行下における熱中症対応の手引き 感染症学会など4学会
- 新型コロナによるロックダウンの不安により体重が有意に増加 イタリアからの報告
- マスク着用は熱中症のリスク! 新型コロナ予防と熱中症予防を両立するには?
- 3カ月間の潜水艦任務で体組成はどのように変わるか? COVID-19外出自粛生活に似た環境
- コロナ禍からの脱却 子どものために保護者、学校の指導者は何をすべきか? 中国の取り組み
- 「自宅や屋外で安全に運動するための注意事項」スポーツ庁が新型コロナ対策を公開
- 新型コロナウイルスによる休校・休園・外出自粛が、子どもの生活と外遊びに及ぼす影響
- 新型コロナウイルス感染症で外出自粛中の運動・エクササイズ WHOガイダンス
- 新型コロナウイルスのパンデミック中でも安全に運動する方法 米国心臓協会が提言
- 新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 予防措置を講じた上で定期的な身体活動の維持が大切
アスリート・指導者・部活動・スポーツ関係者
- 新型コロナウイルスによるソーシャルディスタンスが記憶力の低下と関連 ブラジルの研究
- 新型コロナウイルス感染症の影響で、未成年長距離ランナーの怪我が適切にケアされていない可能性
- 新型コロナウイルスが未成年アスリートに与えた精神・身体・QOLへの影響 米国で1万3,000人を調査
- コロナ禍からスポーツへの安全な復帰 英国スポーツ運動医学会のガイドライン提案
- 新型コロナウイルスに罹患したアスリートがスポーツへ復帰する際の留意事項 オランダ心臓病学会
- 大学スポーツ協会、新型コロナウイルス対策『大学スポーツ活動再開ガイドライン』を公開
- スポーツイベントや体育施設の再開へ、新型コロナ感染予防ガイドラインの策定が続く スポーツ庁など
- アスリート、指導者らがCOVID-19の外出自粛期間にとるべき戦略とソリューション
- 世界アンチドーピング機構が新型コロナ後のスポーツ再開を見据えたガイダンスを発表
- 新型コロナで自粛中のアスリートからリポート 中井彩子フランス・ロードバイク日記
- アスリートのための新型コロナウイルス感染症対策 予防から発症、チーム対応、練習復帰までを考察
- 新型コロナウイルス禍のスポーツ関連経済支援、問合せ窓口一覧 スポーツ庁
- 「スポーツに関わる全ての皆様へ」スポーツ庁・鈴木大地長官からのメッセージ
関連記事
- 新型コロナウイルスがスポーツや運動習慣に及ぼした影響を全国調査、その結果を公開 笹川スポーツ財団
- COVID-19ロックダウンの影響は日常の運動量が多い人ほど大きい? スペインでの縦断研究
- 2,500METs/週の運動が、COVID-19パンデミック時のメンタルを維持 中国での縦断調査
- 【医療従事者向け】新型コロナウイルス流行下における熱中症対応の手引き 感染症学会など4学会
- 新型コロナによるロックダウンの不安により体重が有意に増加 イタリアからの報告
- マスク着用は熱中症のリスク! 新型コロナ予防と熱中症予防を両立するには?
- 3カ月間の潜水艦任務で体組成はどのように変わるか? COVID-19外出自粛生活に似た環境
- コロナ禍からの脱却 子どものために保護者、学校の指導者は何をすべきか? 中国の取り組み
- 「自宅や屋外で安全に運動するための注意事項」スポーツ庁が新型コロナ対策を公開
- 新型コロナウイルスによる休校・休園・外出自粛が、子どもの生活と外遊びに及ぼす影響
- 新型コロナウイルス感染症で外出自粛中の運動・エクササイズ WHOガイダンス
- 新型コロナウイルスのパンデミック中でも安全に運動する方法 米国心臓協会が提言
- 新型コロナウイルス感染症(COVID-19) 予防措置を講じた上で定期的な身体活動の維持が大切
アスリート・指導者・部活動・スポーツ関係者
- 新型コロナウイルスによるソーシャルディスタンスが記憶力の低下と関連 ブラジルの研究
- 新型コロナウイルス感染症の影響で、未成年長距離ランナーの怪我が適切にケアされていない可能性
- 新型コロナウイルスが未成年アスリートに与えた精神・身体・QOLへの影響 米国で1万3,000人を調査
- コロナ禍からスポーツへの安全な復帰 英国スポーツ運動医学会のガイドライン提案
- 新型コロナウイルスに罹患したアスリートがスポーツへ復帰する際の留意事項 オランダ心臓病学会
- 大学スポーツ協会、新型コロナウイルス対策『大学スポーツ活動再開ガイドライン』を公開
- スポーツイベントや体育施設の再開へ、新型コロナ感染予防ガイドラインの策定が続く スポーツ庁など
- アスリート、指導者らがCOVID-19の外出自粛期間にとるべき戦略とソリューション
- 世界アンチドーピング機構が新型コロナ後のスポーツ再開を見据えたガイダンスを発表
- 新型コロナで自粛中のアスリートからリポート 中井彩子フランス・ロードバイク日記
- アスリートのための新型コロナウイルス感染症対策 予防から発症、チーム対応、練習復帰までを考察
- 新型コロナウイルス禍のスポーツ関連経済支援、問合せ窓口一覧 スポーツ庁
- 「スポーツに関わる全ての皆様へ」スポーツ庁・鈴木大地長官からのメッセージ