心拍センサー付きスマートスポーツブラ3製品の性能比較 正確性と機能性を検討
3種類の心拍センサー付きスマートスポーツブラの性能を比較した結果が報告された。心拍数の測定精度は、測定条件によって差があるという結果だ。また着用時のフィット感などにも差異が認められた。
センサー精度とフィット感を3製品で比較
ウェアラブル生体センサーの市場拡大と、スポーツブラの特性
ウェアラブル生体センサーの市場は、過去数年間で急増している。出荷数は、2015年が8,190万、2018年は 1億7,220万という。それに伴い、ウェアラブル生体センサーに関する研究報告も急増しており、2015年は671報、2018年は1,575報みられる。
現在のウェアラブル生体センサーの測定指標は、歩数、エネルギー消費量、心拍数など多岐にわたり、デバイスの形状も、イヤホン型、腕や手首に装着するもの、スマートシャツなどが製品化されている。それらはセンサーの測定精度もさることながら、身体に着用するする器具・ウエアとしての機能性も兼ね備えたものでなければならない。
後者の点で心拍センサー付きスポーツブラは、快適なフィット感を維持しながら運動に伴う乳房の痛みを軽減する適切な乳房サポートである必要があり、センサー精度とともに機能性が重要と考えられる。本論文の著者らは、心拍センサー付きスポーツブラ3製品の心拍センサーの精度とフィット感を比較検討した。
24人が3製品を各2回着用し、安静、歩行、ランニングなどの条件で比較
この検討は、心血管疾患や腎疾患、代謝性疾患等のない健康な24名の女性を対象に行われた。比較検討した製品は、Adidas、Berlei、Sensoriaの各スポーツブラ3製品。
心拍センサーの精度は、「Polar H7心拍数モニター」を基準値とし、トレッドミル運動により以下の条件で比較した。まず、1分間の安静、次に3分間のウォーミングアップに続いて、歩行およびランニングを各5分間実施し心拍数を計測。歩行とランニングのスピードは、各自が快適に続けられるペースとした。
1条件の計測が終了後、心拍数が安静時の±10bpm以内に落ちちくまで休憩し、再度同じ条件で計測した。2回目の歩行、ランニング速度は初回と同じに設定した。このような試験を各人が3製品について行った。
一方、フィット感については、2回目の計測後にアンケートにより、0〜10のスケールで主観的な評価の回答を得た。質問項目は、「着用のしやすさ」、「脱ぎやすさ」、「全体的な快適さ」、「サイズがあっていたか」、「適切に機能したか(乳房がしっかり固定されていたか)」、「摩擦やその他の不快感」、「もう一度着用したいと思うか」、「個人用として運動のためにこれを購入するか」という内容。
3製品の比較の結果
トレッドミルの歩行、ランニング速度に、3製品での群間差はなかった。
心拍センサーの精度
心拍センサーの精度は、平均絶対誤差が5%以内、級内相関係数が0.7を上回り、p値が0.05未満の場合に許容範囲とみなした。
その結果、Adidasスマートスポーツブラは安静時のみ、この条件を満たした。Berleiスポーツブラは、安静時、ウォーミングアップ、歩行中、ラニング中のすべてで条件を満たした。Sensoriaフィットネス生体認証ブラは、安静時と歩行中に条件を満たした。
フィット感の比較
AdidasスマートスポーツブラとSensoriaフィットネス生体認証ブラは、着脱のしやすさが同等だった。Berleiスポーツブラは、Sensoriaフィットネス生体認証スポーツブラに比べて、着脱が難しいとの回答が多かった。
快適さについては、AdidasスマートスポーツブラとSensoriaフィットネス生体認証ブラは同等に評価され、どちらもBerleiスポーツブラと比較して快適性が高いとされた。AdidasスマートスポーツブラとSensoriaフィットネス生体認証ブラは、ブラの機能に関して同様と評価され、AdidasスマートスポーツブラはBerleiスポーツブラよりも機能性が高いと認識されていた。
AdidasスマートスポーツブラとSensoriaフィットネス生体認証ブラは再度着用される可能性が高く、Berleiスポーツブラと比較してAdidasスマートスポーツブラは着用される可能性が高いと回答された。
著者らは、「ウェアラブルセンサー技術を応用したウエアを設計するスポーツブラメーカーは、スポーツを行う女性に必要な機能と快適さを提供するとともに、正確な生体データを計測する性能を兼ね備える必要がある」と述べている。
文献情報
原題のタイトルは、「Validity and Reliability of Three Commercially Available Smart Sports Bras during Treadmill Walking and Running」。〔Sci Rep. 2020 Apr 30;10(1):7397〕
原文はこちら(Springer Nature)