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スポーツにおける相対的エネルギー不足「RED-S」に関する、選手、コーチ、医師の視点

スポーツにおける相対的エネルギー不足(RED-S)を、選手やコーチ、医療専門家がどのように捉えているかを定性的に調査した研究結果が報告された。RED-Sの認識、そのリスク因子としての外的・内的プレッシャー、リスク軽減戦略などについてまとめられている。英国の研究者により、主に英国連邦で盛んなネットボールのプロアスリートとそのスタッフを対象に行われた研究。

スポーツにおける相対的エネルギー不足「RED-S」に関する、選手、コーチ、医師の視点

団体競技アスリートとサポートスタッフはRED-Sをどのように考えているか?

RED-S(relative energy deficiency in sport;スポーツにおける相対的エネルギー不足)は、国際オリンピック委員会が2014年に提唱した概念で、主としてエネルギー利用可用性の低下(low energy availability;LEA)によって、種々の生理学的変化やパフォーマンスへの影響が生じた状態。女性アスリートのトライアド(LEA、無月経、骨粗鬆症の三主徴)も、RED-Sの概念に含まれる。

従来、RED-Sに関する研究は、持久系アスリート、体重階級制のある個人競技のアスリートを対象に行われており、団体競技アスリートでの知見は少なく、またサポートスタッフがRED-Sをどのように捉えているのかという視点での研究も少ない。今回紹介する論文の研究は、これを背景として行われた定性的ケーススタディ。

RED-Sの関連情報
国際スポーツ栄養学会 ISSNが「女性アスリートの栄養上の懸念」について見解
パラアスリートの相対的エネルギー不足(RED-S)リスクはどのように評価すべきか
陸上競技の指導者はアスリートの摂食障害をどのくらい認識できているのか?
女性ランナーの月経周期の乱れには、”特別な食事スタイル”の実践が関与
男性アスリートのRED-Sリスクを判定する利用可能エネルギー不足の閾値は女性アスリートと異なる
アスリートの摂取エネルギー不足を評価する質問票13件の批判的検討

ネットボールのプロ選手とコーチ、医師に半構造化インタビュー

この研究は、英国のネットボールのプロクラブに所属している選手とサポートスタッフを対象とする半構造化インタビューとして実施された。選手が13名、コーチ4名、医療専門家が4名で、選手は全員が14歳以上であって、8名は18歳以下だった。摂食障害の既往のある選手は除外されている。医療専門家の職種は、医師と理学療法士が各2名。全員が少なくとも1シーズン以上、クラブに所属していた。

インタビューは1回あたり60分程度の予定で実施され、事後のデータ分析によって最終的に収集されたトピックスは、RED-Sと関連症状の認識、月経機能と避妊薬の使用、リスクファクター、RED-Sのリスク軽減に関連する戦略という四つのテーマに集約された。

RED-Sと関連症状の認識

選手の認識

RED-Sに対する認識は全体的に欠如しており、RED-Sについて理解しているプレーヤーは1人だけだった。ただし、エネルギー補給や食事の必要性を意味することとして理解している選手もいた。

選手の1人は、「RED-Sについて聞いたことがないが、エネルギーバランスについては知っている。エネルギーバランスが少なすぎると、最高のパフォーマンスが発揮できなくなる。私はそれをソーシャルメディアから知った」と語っていた。別の選手は、「その言葉が何なのかすら知らなかった。私の栄養学の知識はベーシックなものだが、いま読んでみると、これは多くの領域で一般的な問題であると感じる」と語っている。

スタッフの認識

コーチについても、選手と同様の知識レベルが観察され、RED-Sという用語に精通していたり、この症候群について正式に紹介を受けた経験のあるコーチはいなかった。一方、医療専門家については1人を除き、女性アスリートのトライアドとRED-Sについて十分なレベルの認識を有していると認められ、RED-Sを月経周期の乱れ、疲労、骨折リスクと関連付けて捉えていた唯一のグループだった。

1人の理学療法士は、「確かに理学療法の世界でもRED-Sについて、少しずつ話題になり始めている。月経周期や骨折リスクなどに注意を要することは知っていた。ただし、これ(定義シート)を読むまで、気づいていなかった症状もある」と語った。

月経機能と避妊薬の使用

選手の中で、月経周期が規則的であると報告したのは54%だった。3人は少なくとも3カ月、1人は18カ月以上、月経がないと報告した。6人(46%)は、月経がネットボールのパフォーマンスに悪影響を及ぼしていると報告した。

38%のアスリートが月経周期をコントロールするために避妊薬を使用し、36%は月経痛を軽減するために避妊薬を使用していた。

リスクファクター

インタビューを通じて、RED-Sに関連する多数の危険因子が明らかになった。例えば、食事制限、スポーツの文化、内的・外的プレッシャーなどである。データから浮かび上がった重要なテーマは、意図的または非意図的な食事制限であり、この点はサポートスタッフも認識していた。

RED-Sのリスク軽減に関連する戦略

RED-Sのリスク軽減について、教育の重要性が多く語られた。また、避妊のリスクとメリット、および文化的影響を理解する必要性を指摘する声も多かった。そのほかに、具体的でカスタマイズされた栄養上のアドバイスが役立つのではないかと期待を述べるアスリートもみられた。

すべてのコーチと医療関係者が、LEAとREDに関連するリスクファクターのスクリーニングが必要であり、アスリートのそれらのリスクを効果的に管理するには、学際的な多職種協業(multidisciplinary team;MDT)アプローチが最適であると強調した。

文献情報

原題のタイトルは、「Perspectives on relative energy deficiency in sport (RED-S): A qualitative case study of athletes, coaches and medical professionals from a super league netball club」。〔PLoS One. 2023 May 3;18(5):e0285040〕
原文はこちら(PLOS)

SNDJ特集「相対的エネルギー不足 REDs」

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