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男性アスリートのRED-Sリスクを判定する利用可能エネルギー不足の閾値は女性アスリートと異なる

男性アスリートでの相対的エネルギー不足(RED-S)のリスクが生じるカットオフ値は、女性アスリートで問題とされる30kcal/kg除脂肪量(FFM)未満とは異なる可能性が、米ノースカロライナ大学チャペルヒル校の研究グループから報告された。エネルギー可用性の平均が28.7kcal/FFMのレクリエーションアスリートの集団で、骨量や性ホルモンなどにRED-Sの兆候は認められないとのことだ。

男性アスリートのRED-Sリスクを判定する利用可能エネルギー不足の閾値は女アスリートと異なる

LEAやRED-Sのエビデンスの大半は女性アスリート対象の研究によるもの

スポーツにおける相対的なエネルギー不足(relative energy deficiency in sports;RED-S)は、エネルギー可用性(energy availability;EA)の低い状態「LEA(low energy availability)」が多くの生理学的機能障害を引き起こすというメカニズムに基づいて定義され、対策が求められている。ただし、RED-SとLEAの研究はこれまで女性アスリートを対象に積極的に行われてきている。

女性ではLEAによって月経異常などの変化が比較的現れやすいのに対して、男性アスリートでは目に見える変化が現われにくい。疲労骨折やテストステロンレベルの低下、あるいは摂食障害のリスク上昇などの報告が散見されているものの、男性アスリートでの知見は限られていて、LEAの潜在的な影響は不明。

この現状を背景として本研究では、男性アスリートのLEAとRED-Sの関連が検討された。

男性ハイレベルアマチュアアスリート対象の研究

この研究のため、競争力のある男性レクリエーション持久力アスリート71名が募集された。適格基準は、18歳以上、トレーニング量が7~10時間/週であり、競技会への参加を計画するレベルであること。除外基準は、競技会参加後2週間以内、結果に影響を与え得る傷害の治療中、心血管疾患、内分泌代謝疾患、腎・肝機能障害、筋骨格系障害など。

摂取エネルギー量は、平日2日と週末の2日、計4日間の食事記録から計算した。研究参加者は、この記録期間中ふだんの食習慣を保つように指示され、可能な限り計量を含む詳細な記録が求められた。

運動による消費エネルギー量は、前記4日間を含む7日間の連続したトレーニング記録から計算した。参加者は、この記録期間中ふだんのトレーニングを維持するように指示され、トーニングの種類、時間、走行距離、心拍数、自覚的運動強度などの記録を求められた。

研究参加者の特徴

研究プロトコール違反のあった11名を除外し、最終的に60名で解析が行われた。

年齢は43.4±11.6歳、身長1.78±0.06m、体重76.6±9.6kg、除脂肪量(FFM)62.7±6.2kg、体脂肪率17.9±5.0%であり、競技種目は陸上27名、自転車21名、トライアスロン7名で、複数の競技を行っているアスリートが5名だった。

トレーニング歴は7.1±8.8年、日常のトレーニング量は10.9±2.7時間/週で、VO2maxは55.7±8.0mL/kg/分だった。

EAの平均は28.7kcal/FFMながら健康リスクを認めない

解析対象者の摂取エネルギー量は平均3,073.8±777.1kcal/日、運動による消費エネルギー量は1,296.0±466.7/日であり、エネルギー可用性(EA)は28.7±13.4kcal/kgFFMだった。つまり、この研究対象集団ではEAの平均が、女性アスリートのLEAの判定値である30kcal/kgFFMを下回っていた。それもかかわらず、以下に示すように、性ホルモン、代謝関連ホルモンの平均はすべて基準値内であり、EAとの有意な関連が認められなかった。

テストステロン7.8±4.3ng/mL、遊離テストステロン18.3±14ng/dL、生物学的活性テストステロン466.3±357.4ng/dL、性ホルモン結合グロブリン36.2±20.9nmol/L、黄体形成ホルモン5.0±1.6mIU/mL、成長ホルモン1.80±0.43ng/mL、遊離トリヨードサイロニン(FT3)3.17±0.20pg/mL、遊離サイロキシン(FT4)1.01±0.09ng/mL。

さらに、骨密度、骨代謝マーカーも以下のように基準値内であった。

全身BMD1.34±0.13g/cm2、腰椎BMD1.23±0.18g/cm2、大腿骨頸部BMD1.07±0.17g/cm2、骨型アルカリフォスファターゼ(BAP)10.68±0.30ng/mL。なお、疲労骨折の既往者は18.3%だった。

唯一の有意な相関は、EAと全身BMD。ただし相関の方向はマイナス

今回の研究で検討された項目の中で、EAと全身BMDとの間でのみ、統計的に有意な関連が認められた。ただし、負の相関であり、エネルギー可用性(EA)が高いほど全身の骨密度(BMD)が低いという意外な関連だった。

この結果について著者らは「興味深く予想外のデータ」とし、以下の詳しい解析を行っている。低EA群(30kcal/kgFFM未満)37名と、適切なEA群(30kcal/kgFFM以上)23名に二分しBMDのZスコアを比較したところ、前者は0.98±0.82、後者は0.33±1.03であり、低EA群のほうがBMDが高いという有意差が確認された(p=0.015)。

EAとBMDとの間に認められたこの有意な負の相関について、著者らは「理由は明らかでない。意味のある生理学的関係を示すものではなく、偶然に統計学的有意性が生じた可能性もある。このトピックを追求し、生理学的理由、例えば他の潜在的な内分泌因子が影響を及ぼしている可能性を判断するため、さらなる研究が必要」と述べている。

男性アスリートのLEA判定値を探る研究が必要

著者らはこれらの結果から、以下のような考察を加えている。

「健康リスクを生じ得るLEAのカットオフ値は、ほぼ女性でのみ実施された研究に基づいて提唱されている。男性と女性とではエネルギー需要が異なることから、男性のLEAのリスクの評価に女性ベースの研究で得られたカットオフ値、すなわち30kcal/kgFFMという値を用いることに疑問を呈することは合理的と言える。

過去には、男性アスリートの場合は20~25kcal/kgFFMが適切なカットオフ値である可能性を示す報告があり、また15kcal/kgFFMであってもRED-Sでみられるようなテストステロン、インスリン様成長因子-1(IGF-1)などの変化は認められないとする報告がある。男性の内分泌状態の変化を引き起こすLEAのレベルは女性よりも低い値である可能性がある」。

結論としては、「トレーニングを行っている男性持久系レクリエーションアスリートでは、女性対象研究に基づいて定義されているLESではRED-Sの兆候は見られない。30kcal/kgFFMというカットオフ値はこの検討対象では適切でないと考えられる」として、この領域の研究の必要性を強調している。

文献情報

原題のタイトルは、「Energy Availability and RED-S Risk Factors in Competitive, Non-elite Male Endurance Athletes」。〔Transl Med Exerc Prescr. 2021;1(1):25-32〕
原文はこちら(Epub)

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