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相対的エネルギー不足「REDs」を回避し、アスリートの健康的で快適な生活を守ろう

サッカーなどの多くのスポーツでは、悪質な反則行為に対して「レッド(RED)カード」が出され一発退場となり、その試合はもちろん、その後の試合にも出場できなくなる。もちろんのこと、アスリートはこのような事態を極力避けなければならない。しかし、アスリートが避けるべき、別の「レッド(REDs)カード」もあり、そのカードが出されると選手生命が絶たれたり、引退後にも健康障害の後遺症が残ったりしてしまうこともあるようだ。昨年9月の英国スポーツ運動医学会「British Journal of Sports Medicine」誌でのREDsに関する特集の巻頭言を紹介する。

相対的エネルギー不足「REDs」を回避し、アスリートの健康的で快適な生活を守ろう

健康はスポーツを続ける必須条件

REDsとは、「relative energy deficiency in sport」の略で、「スポーツにおける相対的エネルギー不足」のこと。利用可能エネルギー不足(low energy availability;LEA)のために、アスリートの健康とパフォーマンスに悪影響が生じた状態だ。

エリートレベルのスポーツで長期にわたって競争力を維持するには、十分な質と量のトレーニングを続けることと、健康であることが重要。トレーニングで消費するエネルギーが食事で補われていない場合、LEAとなりREDsを発症して健康が損なわれる。ただし、このバランスを正確に知ることは実際には難しいことが多く、アスリートは眼前の目標のために健康を犠牲にしてトレーニングに励むリスクを抱えている。

REDsは、女性アスリートの三主徴(トライアド。エネルギー不足、無月経、骨粗鬆症)を拡張するかたちで、2014年に国際オリンピック委員会(International Olympic Committee;IOC)のコンセンサスステートメントで導入された。現在では女性アスリートばかりでなく男性アスリートにも、LEAに伴う健康障害が生じていること、LEA状態においてはとくに炭水化物の摂取量が少なすぎることの影響が問題であること(low carbohydrate availability;LCA.利用可能な炭水化物の不足)、REDsではメンタルヘルスの不調も来し得ることなどの理解が深まっている。また、オーバートレーニング症候群(overtraining syndrome;OTS)とは病態がオーバーラップすることも認識されている。

現在のREDsの定義は、「アスリートが長期間または重度の利用可能エネルギー不足(LEA)に曝されることによって引き起こされた、生理的・心理的な機能が損われる症候群」と定義され、REDsによる健康障害として、「エネルギー代謝調節障害、生殖機能障害、筋骨格系の障害、消化管機能障害、免疫能低下、心血管系の障害、造血機能障害、およびスポーツパフォーマンスの低下などが挙げられ、さらに悪影響はこれらに限定されるものではなく、かつ、これらは相乗的にリスクを高めることがある」とまとめられている。

REDsカード回避の努力:「健康第一、パフォーマンスは第二」という文化を育む

スポーツのパフォーマンスを最大限に高めながらアスリートの健康を守るためには、「REDsカード」を回避する必要がある。それには、アスリートを支えるスタッフ全員でのチームによる努力が欠かせない。

さらに、スポーツ関連の団体・組織もREDsの問題への対応が求められる。例えば、アスリートがスポーツパフォーマンス上の目標を達成するための食事やトレーニング負荷に関する意思決定に影響を与え得るルールの変更(一例を挙げるならば、体重別階級のある競技において、より安全な計量のルール)を考慮すべきだろう。アスリート、コーチ、その他のスタッフを含むチーム全体が、不健康な体組成の目標や持続が不可能な体格を目指して努力するという誤ったプレッシャーを取り除くために、「健康第一」であってパフォーマンスは「二の次」とする文化を育むための、重要な役割を担っている。

また、アスリートの医療チームは、REDsの二次予防と三次予防のための臨床アプローチを欠くことができない。REDsの二次予防とは早期発見と診断であり、三次予防は診断後の治療である。

一方、一次予防のため、アスリート本人がREDs回避に必要な健康的な栄養補給とトレーニング負荷のバランスの大切さに関する知識を有していなければならない。

我々全員に果たすべき役割がある

この記事では、上記のようにREDs研究の変遷と現在の理解を要約しながら、全体的にはスポーツの世界からREDsを一掃するために動き出そうとする、読者に対する呼びかけるような内容にまとめられている。記事の文末は以下のように、まさにそのような呼びかけのかたちで結ばれている。

「我々全員に果たすべき役割がある。自分自身を教育し、スポーツにおける影響力の役割を通じて行動し、REDsを認識し、その有害事象を防ぎ、軽減する。『REDsカード』を回避することは、最終的にはスポーツパフォーマンスの安全な最適化だけでなく、短期的および長期的なアスリートの健康と福祉の向上にもつながる」。

文献情報

原題のタイトルは、「Avoiding the ‘REDs Card’. We all have a role in the mitigation of REDs in athletes」。〔Br J Sports Med. 2023 Sep;57(17):1063-1064〕
原文はこちら(BMJ Publishing Group Ltd & British Association of Sport and Exercise Medicine)

SNDJ特集「相対的エネルギー不足 REDs」

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