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体力が高いサッカーの審判は誤審が少ない スペイン全国カテゴリーの男性審判で調査

2024年02月10日

サッカーの審判の体力がジャッジの正確さと有意に関連していることが明らかになった。体力テストのスコアが高い審判は正審率が高いという。スペインのセミプロレベルでジャッジしている男性審判を対象に行われた研究の結果として報告された。

サッカーは審判のジャッジが試合を決定づけることがある

サッカーは世界で最も競技人口の多いスポーツとされ、試合では90分にわたる持久力を要し、かつ瞬発的で複雑な動作を含む高強度の負荷が断続的に発生する。試合の得点数は概して低く、わずかなスコアによって勝敗が決まることが多い。また、しばしばペナルティーに伴うセットプレーが得点につながる。このため審判の判断が重要となり、微妙な判断が試合の結果を左右することも少なくない。

審判が正確な判定を下すためには、ボールと選手の動きをみて常に最適な位置に移動し続ける必要がある。そのため審判も選手同様、長い距離の走行が求められ、1試合での走行距離は9~13kmであり、その4~8%は高速スプリントで占められるというデータもある。またサッカーでは疲労の蓄積する後半のゲーム終了が近づくほどラフプレーが増加する傾向があり、審判自身も疲れが溜まった状態で、より多くのジャッジを求められるようになる。

このように、サッカーでは90分間にわたって正確なジャッジを続けるため、審判にも高い体力が要求され、日常のトレーニングが欠かせない。仮に審判の体力が十分でない場合、適切なポジションを維持できず、誤審につながる可能性がある。

スペイン国内戦の審判22人の誤審率と体力やトレーニング時間との関連を解析

以上を背景として、この研究は以下の三つの仮説の下で行われた。

  • 仮説1)審判のトレーニング時間は、体力テストのスコアと相関する
  • 仮説2)審判のトレーニング時間は、試合での正審率と相関する
  • 仮説3)審判の体力テストのスコアは、試合でのジャッジ数と相関する

この仮説を検証するため、スペインで同国のセミプロにあたる全国カテゴリーでジャッジをしている男性審判22人を対象とする研究が行われた。なお、研究参加の的確条件として、年齢や経験の差による結果への影響を抑えるために30歳以下であることが設定された。また、国内カテゴリーで2年以上の経験があり、習慣的にトレーニングを行っていることなども適格条件に含めた。

仮説1の検証には、過去8週間での週あたりのトレーニング時間と、Yo-Yoテストや筋力テストを含む体力テストのスコアとの相関を解析した。仮説2の検証では、研究参加者がジャッジした6試合の動画をナショナルレベルの2人の審判が観察して、イエローカードやレッドカード、ペナルティーキックなどのジャッジの正確さ(判定の正誤、およびジャッジすべき行為の見逃しがないかなど)を評価し正審率を割り出して、トレーニング時間および体力テストスコアとの相関を解析した。仮説3の検証では、試合の経過時間とジャッジ件数との関連を検討した。

参加者のおもな特徴は、年齢23.35±3.99歳で、週あたりのトレーニング時間は、筋力トレーニング(strength training)が3.53±3.02時間、レジスタンストレーニング(resistance training)が2.35±1.48時間、速度トレーニング(velocity training)が1.65±2.14時間であった。また体力テストのスコアは1.60±0.94点であり、解析対象試合で提示したカードの枚数は5.16±0.80枚で、1試合あたりの走行距離は8.67±2.10kmだった

三つの説がほぼ立証される

それでは、仮説の順序に従って検証結果をみていこう。

仮説1の検証結果:トレーニング時間は、体力テストのスコアと相関する

体力テストのスコアは、速度トレーニングの時間の長さと有意に正相関し(ρ=0.54、p<0.01)、筋力トレーニングの時間の長さとの間に境界域の正相関がみられた(ρ=0.46、p=0.05)。

また、体力テストのスコアが高いほど、試合中の走行距離が長いという有意な正相関も認められた(ρ=0.633、p=0.006)。一方、レジスタンストレーニングの時間の長さと体力テストのスコアとの間には、有意な関連がみられなかった(ρ=0.05、p=0.84)。

仮説2の検証結果:トレーニング時間は、試合での正審率と相関する

試合での正審率は、筋力トレーニングの時間の長さ(ρ=0.907、p=0.006)、および、速度トレーニングの時間の長さ(ρ=0.732、p=0.049)と有意に正相関していた。

また、体力テストのスコアが高いほど、正審率が高いという有意な正相関も認められた(r=0.737、p=0.047)。一方、レジスタンストレーニングの時間の長さと正審率との間には、有意な関連がみられなかった(ρ=0.34、p=0.26)。

仮説3の検証結果:審判の体力テストのスコアは、試合後半でのジャッジ数と相関する

ジャッジ件数は、試合の前半が16件、後半は32件であり、前半の正審率は44%、後半の正審率は59%だった。

前半のジャッジ数は体力テストのスコアと有意に逆相関した(ρ=-0.84、p=0.02)。しかし、疲労の影響が顕著になると考えられる後半では、体力テストのスコアとジャッジ数が有意に正相関していた(ρ=0.80、p=0.03)。

また後半の45分を15分ずつの3ブロックに分けて、ジャッジ数と正審率の推移をみると、後半スタートから60分までのジャッジ数は9件で正審率は77.8%、60~75分の15分間では5件で40.0%であった。そして試合終了間際の15分のジャッジ件数は18件であり、前半45分の件数よりも多くの判定がなされていた。その正審率は55.6%だった。

以上を基に著者らは、「セミプロレベルのサッカー審判では、筋力とスピードに関するトレーニング時間の長さが、正しい判定に関連していることが示された。また、試合終了近くの数分間で誤審率が増加することもわかった」とまとめている。

文献情報

原題のタイトルは、「Influence of physical fitness on decision-making of soccer referees throughout the match」。〔Heliyon. 2023 Sep 6;9(9):e19702〕
原文はこちら(Elsevier)

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