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低炭水化物ダイエットの長期的な減量効果を調査 米国の12万人を4年間追跡

低炭水化物ダイエットの体重への長期的な影響を検討した研究結果が、米国医師会の「JAMA Network Open」に掲載された。4年間の追跡で、植物性食品からのタンパク質を増やし、炭水化物は全粒穀物などの精製度の低いものを摂取して、良質な脂質を摂取するという食事パターンでのみ、長期間の明確で有意な減量効果が認められたという。

低炭水化物ダイエットの長期的な減量効果を検討 12万人を4年間追跡調査

低炭水化物ダイエットの減量効果はいまだ不明

低炭水化物ダイエット(low-carbohydrate diet;LCD)は減量や代謝性疾患の管理に有効と言われ人気が高まっているが、実際のところ継続が困難なこともあって、減量効果が長期間続くのかどうかはよくわかっていない。また、減らした炭水化物をどのような食品に置き換えて摂取しているかという違いによる減量効果の差異については、ほとんど研究されていない。

この研究は、米国で医療職者を対象に現在も行われている、3件の大規模前向きコホート研究のデータを用いて行われた。一つは30~55歳の看護師対象に1976年にスタートした「Nurses' Health Study;NHS」、別の一つはNHSより若年の25~42歳の看護師を対象に1989年にスタートした「NHS II」、残りの一つは40~75歳の男性医療従事者を対象に1986年にスタートした「Health Professionals Follow-up Study;HPFS」。

食事スタイルを5種類の指標で評価し、4年間追跡して体重変化との関連を解析

各コホート研究参加者のうち、ベースライン時に65歳以上の人、糖尿病を含む慢性疾患を有していた人、食事摂取量が極端に過大(女性は3,500kca/日以上、男性は4,200kcal/日以上)または過少(女性は600kcal/日未満、男性は800kcal/日未満)の人を除外し、計12万3,332人(45.0±9.7歳、女性83.8%)を解析対象とした。なお、65歳以上を除外した理由は、高齢期は加齢に伴う除脂肪体重の減少の影響が強くなり、食事スタイルの減量効果を評価しにくくなるため。

低炭水化物ダイエット(LCD)を評価する5種類の指標

食事スタイルは、半定量的な食物摂取頻度調査票(food frequency questionnaire;FFQ)によって、以下の5種類の指標で評価した。各評価指標は0~30点の間でスコア化され、スコアが高いほど、よりその食事スタイルに準拠した食習慣であることを意味する。

5種類の指標

  • TLCD(total LCD);全体的な炭水化物摂取量の少なさの指標
  • ALCD(animal-based LCD);動物性食品からのタンパク質および脂質が多いことを特徴とする食事パターンの指標
  • VLCD(vegetable-based LCD);植物性食品からのタンパク質および脂質が多いことを特徴とする食事パターンの指標
  • HLCD(healthy LCD);炭水化物は精製度の低いものとし、植物性食品からのタンパク質、および健康的な脂質が多いことを特徴とする食事パターンの指標
  • ULCD(unhealthy LCD);全粒穀物などの健康的な炭水化物の摂取が少なく、動物性食品からのタンパク質、および非健康的な脂質が多いことを特徴とする食事パターンの指標

HLCDとULCDという2パターンの食事スタイルで体重に対する明確な影響

追跡期間は4年間であり、解析結果に際しては影響を及ぼし得る交絡因子(年齢、人種/民族、糖尿病の家族歴、および、ベースラインでのBMI、高血圧・高コレステロール血症の既往、摂取エネルギー量、ならびに、ベースラインと追跡期間中の喫煙・飲酒・運動習慣の変化、経口避妊薬の使用、閉経後のホルモン療法の施行)を調整した。

解析手法は、各評価指標の4年間での変化量の五分位で全体を5群に群分けして、第3五分位群(スコアの変化量が最も少ない20%)を基準として、他群の体重変化を比較するというもの。では、評価指標ごとの結果をみていこう。

TLCDスコアのプラスの変化は体重増加と関連

全体的な炭水化物摂取量が少ないことを表すTLCDスコアのプラスの変化(炭水化物摂取量がより少なくなること)は、体重の増加と関連していた(傾向性p<0.0001)。スコアのプラスの変化量が1標準偏差大きいごとに、体重は0.06(95%CI;0.04~0.08)kg増加していた。

ALCDスコアのプラスの変化も体重増加と関連

動物性食品からのタンパク質および脂質が多いことを表すALCDスコアのプラスの変化も、上述のTLCDスコアと同様に体重の増加と関連していた(傾向性p<0.0001)。スコアのプラスの変化量が1標準偏差大きいごとに、体重は0.13(0.11~0.14)kg増加し、TLCDスコアよりも強い関連が観察された。

VLCDスコアの変化は体重増加と逆U字型に関連する傾向

植物性食品からのタンパク質および脂質が多いことを表すVLCDスコアの変化は、体重変化と非有意ながら、逆U字型に関連する傾向が認められた(傾向性p=0.16)。ただし、スコアのプラスの変化量が1標準偏差大きいごとに、体重は-0.03(-0.04~-0.01)kg減少するという有意な関連が確認された。これは、第1五分位群(スコアが最も大きく減少していた20%)の減量幅(-0.17〈-0.22~-0.12〉kg)より、第5五分位群(スコアが最も大きく増加していた20%)の減量幅(-0.21〈-0.26~-0.17〉kg)のほうが大きいことからもわかる。

HLCDスコアのプラスの変化は体重減少と関連

炭水化物は精製度の低いものとし、植物性食品からのタンパク質、および健康的な脂質が多いことを表すHLCDスコアのプラスの変化は、体重の減少と関連していた(傾向性p<0.0001)。スコアのプラスの変化量が1標準偏差大きいごとに、体重は-0.36(-0.38~-0.35)kg減少していた。各五分位群での比較では線形の関連が認められ、スコアがより大きく上昇しているほど減量幅が大きく、スコアがより大きく低下するほど体重が増加していた。

ULCDスコアのプラスの変化は体重増加と関連

動物性食品からのタンパク質および脂質が多いことを表すULCDスコアのプラスの変化も、上述のTLCDスコアやALCDスコアと同様に体重の増加と関連していた(傾向性p<0.0001)。スコアのプラスの変化量が1標準偏差大きいごとに、体重は0.39(0.37~0.40)kg増加し、前述のTLCDスコア、あるいはALCDスコアよりもさらに強い関連が観察された。また、TLCDスコアやALCDスコアでは、一部に非線形の関連があったが、このALCDスコアに関しては、上述のHLCDスコアとは正反対の線形の一貫した関連が認められた。

低炭水化物ダイエットの効果は、主要栄養素の摂取量のみでは評価できない可能性

以上をまとめると、低炭水化物ダイエットの影響を体重増加抑制という視点で評価する場合、代替のエネルギー源は動物性タンパク質ではなく植物性タンパク質とするほうが良い可能性があり、それだけでなく脂質も良質なものにする必要があることを示唆する結果と言えそうだ。論文の結論は以下のように総括されている。

「このコホート研究の結果は、体重管理に関してはLCDの食事の質の重要性を強調している。植物性食品由来のタンパク質と健康的な脂質が豊富な高品質のLCDは、体重増加が遅いことと関連していた。しかし、低品質のLCDは逆の結果と関連していた。全体としてこの研究結果は、体重管理における主要栄養素の量のみに焦点を当てることに注意を促し、栄養素の質が重要な役割を果たしていることを示唆している。今後の研究では、より多様な集団でこれらの知見を検証し、認められた関連の根底にあるメカニズムを解明する必要がある」。

文献情報

原題のタイトルは、「Low-Carbohydrate Diet Macronutrient Quality and Weight Change」。〔JAMA Netw Open. 2023 Dec 1;6(12):e2349552〕
原文はこちら(American Medical Association)

SNDJ特集「相対的エネルギー不足 REDs」

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