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相対的エネルギー不足「REDs」に関する国際オリンピック委員会の2023年コンセンサスステートメント

スポーツにおける相対的エネルギー不足(relative energy deficiency in sport;REDs、RED-S)に関する国際オリンピック委員会(IOC)のコンセンサスステートメントが、英国スポーツ運動医学会の「British Journal of Sports Medicine」に掲載された。以下はその要旨。

IOCが相対的エネルギー不足「REDs」に関する2023年コンセンサスステートメント

イントロダクション

REDsは、国際オリンピック委員会(International Olympic Committee;IOC)の専門委員会によって、利用可能エネルギー不足(low energy availability;LEA)の状態にあるアスリートの健康とパフォーマンスに悪影響が生じた状態を表す症候群として、2014年に提唱され、2018年にはエビデンスに基づきコンセンサスリポートの改訂が行われた。

その後、このトピックに関して170件を超える新たな研究発表があり、メンタルヘルスとの関連や男性アスリートのLEAの問題などで研究の進展がみられる。これを背景としてIOC専門委員会は、再度コンセンサスリポートを改訂した。このコンセンサスは以下の五つのセクションで構成されている。

  1. REDsとは何か
  2. 方法論と結果
  3. 2018年のREDsコンセンサス以降の主な科学的進歩
  4. 実際への適用
  5. 今後の研究方法のガイドライン

REDsとは何か?

スポーツ科学では、さまざまな生物学的機能を満たす利用可能エネルギー(energy availability;EA)とは、運動によるエネルギー需要を考慮した上での摂取エネルギー量(energy intake;EI)の残りのエネルギー量とされる。EAが不十分な場合、生体では成長や生殖、健康の維持に必要とされるエネルギー量を抑制するという帳尻合わせが行われる。ヒトも他の動物と同様に、一時的には必要性の優先度が高くない生物学的プロセスを下方制御することによって、利用可能エネルギー不足(LEA)状態に対処するように適応してきた。

一方、人類は、身体的に活動的になるように進化してきた。ただし、現代のエリートレベルのすべてのアスリートのトレーニングに耐えられるほどには進化していない。例えば持久力スポーツ(多くの場合、週に30時間以上のトレーニングが行われる)がこれに該当する。人間の消化管のエネルギー吸収能力を超える運動によるエネルギーの消費(exercise energy expenditure;EEE)が発生することがあり、LEA状態となり得る。

REDsとは、LEAへの曝露による健康とパフォーマンスへの有害な結果が臨床的に診断された多因子症候群である。

方法論と結果

デルファイ法(意見を集約するためにステートメントの候補を作成したうえで、合意と再検討を繰り返す手法)にてコンセンサスが形成された。これにかかわった専門家は、スポーツ医学者、スポーツ内分泌学者、スポーツ栄養士、スポーツ生理学者、アスリート、コーチ、メンタルパフォーマンスコンサルタントなど、4大陸から女性10人、男性7人。このメンバーの80%が同意し反対意見がない場合を「合意」、80%以上が同意しているが反対者が存在する場合は「少数の合意」、同意者が80%未満の場合は「非合意」とした。2回の投票ラウンドを経て、144件のステートメント中、117件が合意に至った。

2018年のREDsコンセンサス以降の主な科学的進歩

前回のコンセンサス改訂から、LEAがREDsの根本的な病因であることを明確に示す研究の数は大幅に増加している。新たな主要なテーマは以下の6つ。

  • (1)REDsの発症における低炭水化物の利用可能性の低さとLEAの相加的影響
  • (2)REDsとオーバートレーニング症候群の症状のオーバーラップ
  • (3)RED発症とLEAのバイオマーカーの経時的変化
  • (4)REDsのメンタルヘルスとの関連の理解
  • (5)男性アスリート
  • (6)パラアスリートにおけるREDsに関する知見の蓄積

炭水化物が最も不足しやすい

(1)については、研究参加者の間ではLEAには炭水化物摂取量の大幅な減少を伴うことが報告されている。炭水化物の不足の程度はLEAのレベルに応じて25~60%。リアルワールドでは、カロリー制限中にタンパク質摂取量は比較的保たれることから、炭水化物はより不足している可能性が想定される。

性欲低下と早朝勃起の消失は男性REDsの存在を表している可能性

(5)に関しては、2014年および2018年のコンセンサスステートメントでも言及はなされていたものの、当時、このトピックに関する知見は限られていた。2018年以降に研究数は増加している。ただしそれでも2018~2022年の間に発表された研究のうち、男性のREDsを対象とする研究はわずか20%に過ぎない。女性のREDsリスクの生じる閾値として30kcal/kg FFM/日というカットオフ値が提案されている一方で、男性のREDsリスクについてはそのような数値の提案もなされていない。性欲の低下と早朝勃起の消失が、男性REDsの潜在的指標である可能性が指摘されている。

また、パラアスリートにおけるREDsの有病率は不明であるが、健常者アスリートよりも問題のあるLEAのリスクがより高いのではないかとの懸念がある。米国のパラアスリートのうち、62%がパフォーマンスを向上させるために体重や体組成の変更を試み、32%が摂食障害検査質問票(EDE-Q)でスコア上昇が認められ、女性パラアスリートの44%に月経不順がみられるとの報告がある。パラアスリートのLEAは、骨密度低下を介した身体機能への影響が懸念され、パラアスリート集団に適した骨密度の基準値を設定するための研究が求められる。

実際への適用

REDsのリスク評価には、女性アスリートの場合は原発性無月経、男性アスリートの場合はテストステロン低値(基準範囲未満)が指標となり、そのほか希発月経、うつ/不安、低血糖、インスリンレベルの低下、コルチゾール上昇、起立性低血圧、徐脈、睡眠障害、性欲低下、早朝勃起消失などが副次的な指標となり得る。

一方、緊急の医学的介入が必要な状態として、BMIが性・年齢別中央値の75%以下、電解質異常(低カリウム血症、低ナトリウム血症、低リン血症など)、心電図以上(QT間隔延長、重度の徐脈〈成人30bpm以下、未成年45bpm以下〉など)、重度の低血圧(90/45mmHg以下)、起立不耐症(仰臥位から​​立位で収縮期血圧が20mmHg以上、拡張期血圧が10mmHg以上低下)、外来治療で好転しない摂食障害、栄養失調による急性合併症(失神、発作、心不全、膵炎など)などが挙げられる。

文献情報

原題のタイトルは、「2023 International Olympic Committee’s (IOC) consensus statement on Relative Energy Deficiency in Sport (REDs)」。〔Br J Sports Med. 2023 Sep;57(17):1073-1097〕
原文はこちら(BMJ Publishing Group Ltd & British Association of Sport and Exercise Medicine)

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