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女性ボディビルダーの食事とサプリの摂取状況 インシーズンとオフシーズンの比較

女性ボディビルダーの食事摂取とサプリメントの利用状況を、インシーズンとオフシーズンで調査した結果が報告された。すべての選手がタンパク質を過剰に摂取し、またオフシーズンには摂取エネルギー量がやや不足する傾向にあるという。米国の研究報告。

女性ボディビルダーの食事とサプリの摂取状況 インシーズンとオフシーズンの比較

食事とサプリの摂取状況をシーズンサイクル別に調査

20世紀の終盤から、女性ボディビルダーが世界的に急増している。しかし、女性ボディビルダーの栄養素摂取量やサプリメントの利用状況に関する情報は、男性ボディビルダーに関する情報に比べて極めて不足している。これまでに複数の報告がなされているが、本論文の著者によると、食事またはサプリの摂取状況のみが調査されていて、それら両者を同一対象で調査した研究が少なく、さらにボディビルのシーズンサイクルを考慮した調査は限られているという。

ボディビルのシーズンは一般に、インシーズンとオフシーズンに分けられる。前者は競技準備に専念する期間で、通常、摂取エネルギー量を制限して「カット」または「カット出し」と呼ばれる、見栄えを強調するための行為が行われる。一方、後者では、筋肥大のためのレジスタンストレーニングと摂取エネルギーの増大により筋肉量を増やす、いわゆる「バルキング」が行われる。このほかに、「ピーク週」とされる競技会直前の短期間には、炭水化物負荷(カーボローディング)などが行われる。

今回紹介する論文の研究は、このようなシーズンサイクルに留意しながら、食事とサプリによる栄養素摂取量を網羅的に調査している。

競技会参加レベルの女性ボディビルダー対象にネット調査

この調査は、競技会参加レベルの女性ボディビルダーを対象とするオンラインアンケートとして実施された。FacebookやInstagramなどのSNSを用いてスノーボール方式で参加者を募集。適格条件は18歳以上であり、前年以降に競技会に参加経験があるか、翌年に参加の予定があること。まず、それらの基本的な情報を送信してもらい、参加基準を満たすか否かを検討。満たす場合にのみアンケート回答ページのアドレスを送信して回答を依頼した。

食事摂取状況は、非連続の4日(平日3日と休日1日)の24時間リコール法で把握した。これに回答するインセンティブとして、100米ドルが支払われた。食事の質の評価には、健康的な食事指数2015(Healthy Eating Index 2015;HEI-2015)を用いた。

女性ボディビルダーの食生活の実態が浮き彫りに

アンレートの回答を開始したのは334人だったが、4回の24時間リコール法を完了しなかった人などを除外し、解析対象は227人(インシーズンの回答が112人、オフシーズンが115人)となった。

インシーズンの身体活動量は平均4,829.2MET分/週、オフシーズンは3,935.3MET分/週であり、インシーズンにはオフシーズンに比較し有酸素トレーニング(2,658.2MET分/週)が有意に多く行われていた(p<0.001)。ただし、レジスタンストレーニングはシーズンサイクルによる違いはなかった。

体重はインシーズンが平均58.6kgであり、これはオフシーズンの62.6kgより有意に低値だった(p<0.001)。

オフシーズンはタンパク質が約4割、インシーズンは脂質が約2割過剰

調査に回答した女性ボディビルダーは全員、エネルギー・栄養素摂取量が既報研究の推奨(DOI: 10.3390/sports7070154)を満たしていた(超過も含む)。唯一、オフシーズンの摂取エネルギー量のみ、約10%不足していた。ただし、インシーズンの脂質摂取量とオフシーズンのタンパク質摂取量が過剰だった。詳細は以下のとおり。

インシーズンは、摂取エネルギー量33.3kcal/kg、タンパク質2.9g/kg(推奨1.8~2.7/充足度100%)、炭水化物2.9g/kg(同2~5/100%)、脂質1.1g/kg(0.4~0.9/121.6%)。オフシーズンは、摂取エネルギー量38.0kcal/kg(42~48/90.4%)、タンパク質2.6g/kg(推奨1.5~1.9/138.9%)、炭水化物3.7g/kg(3~5/100%)、脂質1.3g/kg(同0.2~1.5/100%)。

食事の質(HEI-2015スコア)は、インシーズン70.2点、オフシーズンが68.2点で有意差はなかった(p=0.480)。ただし、下位尺度を個別に比較すると、野菜、魚介類および植物性タンパク質、添加糖のスコアがインシーズンのほうが高く(良好であり)、ナトリウムについてはオフシーズンのほうがスコアが高かった。

サプリを含めれば微量栄養素はすべて推奨量以上を摂取

微量栄養素に関しては、ビタミンAがインシーズンに有意に多く摂取されていた(1,544.7 vs 1090.8µgt〈レチノール活性当量;RAE〉、p=0.001)。その他の微量栄養素はシーズンサイクルによる摂取量の有意差はみられず、シーズンサイクルを問わず、すべてが推奨量を満たしていた。

この点について著者らは、先行研究との差異を指摘している。すなわち、先行研究の多くは、女性ボディビルダーのいくつかの微量栄養素摂取量は推奨を満たしていないと報告している。それらと本研究の大きな違いは、サプリからの摂取量(後述)を把握しているか否かによるものと考えられるとのことだ。

全員がサプリを利用

アンケートに回答したすべての女性ボディビルダーが、過去12カ月以内になんらかのサプリを利用していた。利用されていたサプリの種類は合計60種類で、1人平均13.1種類を利用していた。

全ボディビルダーのうち50%以上が使用していたサプリは、ホエイプロテインパウダー、マルチビタミン、クレアチン、エナジードリンク、魚油、分岐鎖アミノ酸(BCAA)、プロバイオティクス、ビタミンDだった。

著者らは、「女性ボディビルダーの栄養素摂取量推奨事項の達成と食事の質改善、および安全かつ効果的なサプリメントの使用について、教育介入を行う余地がある」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Dietary Intake and Supplement Use in Competitive Women Bodybuilders」。〔Sports (Basel). 2023 Aug 18;11(8):158〕
原文はこちら(MDPI)

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