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米国小児科学会、小児や未成年の低炭水化物ダイエットに懸念を表明するリリースを発行

米国小児科学会(American Academy of Pediatrics;AAP)はこのほど、糖尿病またはそのリスクのある小児や未成年が低炭水化物ダイエットを行うことに対して、安全上の懸念が存在するとするレポートをまとめ、かつ注意喚起のためニュースリリースを発行した。低炭水化物ダイエットは成人の間で実践者が増えているが、この年代でのエビデンスはほとんどないことを理由としている。以下、リリースの内容を中心に紹介する。

米国小児科学会、小児や未成年の低炭水化物ダイエットに懸念を表明するリリースを発行

成人の糖尿病の管理目的での低炭水化物ダイエットやケトジェニックダイエットの人気が高まっている。しかし、未成年の糖尿病患者または糖尿病予備群の該当者が、体重や血糖値をコントロールするために炭水化物の摂取を制限しようとする場合、安全上の懸念について考慮する必要がある。

米国小児科学会(AAP)は、新しい臨床報告「Low-Carbohydrate Diets in Children and Adolescents With or at Risk for Diabetes(糖尿病または糖尿病のリスクのある小児および青少年における低炭水化物食)」の中で、糖尿病を患っている、または糖尿病を発症するリスクがある小児および青少年に対する低炭水化物食の使用に対して警告し、過度に制限的な食事パターンが健康にどのような影響を与えるかについての懸念を挙げている。

その臨床報告では、保護者や医師に対し、この年代の子どもたちに対しては、栄養価の低い加工スナックや加糖飲料の摂取を減らすことに重点を置くよう促している。代わりに、野菜、果物、および、全粒穀物、豆類が含まれる健康的な炭水化物を摂取すべきである。この報告書の内容は、1型および2型糖尿病、肥満、または前糖尿病の若者に対する炭水化物の推奨事項を提供している。

報告書の著者陣の一人でAAPのフェローであるTamara Hannon氏は、「有名人が低炭水化物ダイエットやケトジェニックダイエットによる炭水化物制限を支持しているのをよく見かけるが、子どもや十代の若者に対するこれらの食事パターンの身体的、代謝的、心理的影響に関するエビデンスは限られている」と話す。また、「今回の声明は、食事制限に関するものではない。臨床医が情報に基づいた決定を下す際に保護者や家族をサポートできるように、エビデンスの現状を示すものだ。あなた(低炭水化物食を行おうとしている子どもや保護者)の疑問を小児科医に必ず伝えるべきだ。小児科医はあなたのことを最もよく知っており、健康的な食事計画についてのアドバイスを提供してくれるだろう」。

炭水化物の摂取量は1日の総エネルギー量の45~65%程度とすることが推奨されるが、低炭水化物ダイエットはそれ以下に制限する。また超低炭水化物ダイエットでは、1日あたりの炭水化物摂取量を20~50gとし、さらにケトジェニックダイエットでは一般に1日あたり20g未満とする。子どもや十代の若者にとって、こうした食事制限が成長の鈍化、栄養不足、骨の健康状態の悪化、食行動の乱れにつながるのではないかという懸念が存在する。

米国糖尿病協会(American Diabetes Association;ADA)も国際小児・青少年糖尿病学会(International Society for Pediatric and Adolescent Diabetes;ISPAD))も、1型糖尿病の成長期の小児および青少年に対する低炭水化物食の一般的な使用を支持していない。

AAPは、子どもや青少年に超低炭水化物ダイエットやケトジェニックダイエットを選択した家族は、学際的なチームによって注意深くモニタリングされるべきだと主張している。また、次の推奨事項を掲げている。

米国小児科学会(AAP)の具体的な推奨

  • 4~18歳の子どもは、正常な成長と発達をサポートするために、総エネルギー摂取量の10~30%をタンパク質として摂取する必要がある。また、摂取エネルギー量の25~35%は脂質から摂取する必要があり、その多くは多価不飽和脂肪酸または一価不飽和脂肪酸とし、飽和脂肪酸から摂取されるのは10%未満とする。炭水化物は残りの45~65%のエネルギーとするが、添加糖から得るエネルギーは1日あたり10%未満であることが推奨される。
  • 炭水化物のエネルギーの大半は、果物、野菜、全粒穀物、豆類、乳製品から摂取する必要がある。
  • 1型糖尿病、前糖尿病、および2型糖尿病の小児および青少年の家族には、健康的な食事パターン戦略(「米国人の食事ガイドライン」の推奨)に従い、かつ1日あたり60分間の中程度から高強度の有酸素運動に努めるようアドバイスされている。
  • すべての小児糖尿病患者に対して、一般の小児科医だけでなく、学際的な糖尿病ケアチームが専門分野を超えたコミュニケーションを図りながらフォローする必要がある。食事の推奨とサポートは幅広く強化されるべき。
  • 社会経済的に不利な立場にある患者は、前糖尿病や2型糖尿病のリスクが高く、「米国人の食事ガイドライン」に従うことや加工食品を制限することへの障壁に直面している。小児科医は、この状況を改善する政策を提唱する立場にある。

関連情報

American Academy of Pediatrics Issues Policy on Low-Carbohydrate Diets for Children and Adolescents With or At Risk of Diabetes(米国小児科学会(AAP))

文献情報

原題のタイトルは、「Low-Carbohydrate Diets in Children and Adolescents With or at Risk for Diabetes」。〔Pediatrics. 2023 Oct 1;152(4):e2023063755〕
原文はこちら(American Academy of Pediatrics)

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