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米国陸軍のほぼ半数がハイリスクサプリを利用 専門家のアドバイスの有無で利用率に有意差なし

米国の陸軍の現役軍人を対象に行われた調査の結果、テストステロンや抗エストロゲン薬などの有害事象発生リスクの高いサプリメントを利用している軍人が半数に上る可能性のあることが明らかになった。また、医療専門家にアドバイスを求めているのはわずか27%であり、しかも、アドバイスを受けた群と受けていない群とで、ハイリスクサプリメントの使用率に有意差がなかったという。

米国陸軍のほぼ半数がハイリスクサプリを利用 専門家のアドバイスの有無で利用率に有意差なし

サプリ利用率が高い軍人は、ハイリスクサプリの利用率も高い可能性がある

米国ではサプリメントを利用する人が年々増加している。米疾病対策センター(Centers for Disease Control and Prevention;CDC)によると、少なくとも1種類のサプリを利用している米国成人は、2007/08年時点で48.4%だったものが、2017/18年には56.7%になっていたという。

違法なサプリも多く流通している。2019年には米国毒物管理センターに約7万件の通報があり、2022年に食品医薬品局(Food and Drug Administration;FDA)が、異物が混入されたサプリを販売していたとして警告を発出した対象は11社に上り、2021年にはFDAに対する申請を詐称して同化ステロイドをサプリとして販売した男性が有罪判決を受けるといった事件が発生している。

サプリの利用率は、一般人口に比較して身体的負荷の大きいアスリートや軍人でより高いことが報告されており、利用率の高さとともにハイリスクのサプリを摂取する機会が増加すると考えられる。このような事態に対して、米国防総省は関係機関と協力して、「Operation Supplement Safety;OPSS(サプリの安全性作戦)」を2012年の段階でスタートしている。

今回紹介する論文は、現役の軍人におけるハイリスクサプリの利用状況を調査した結果であり、性別や軍隊内での階級別の比較などが行われている。

1個大隊の人員のほぼ半数がハイリスクサプリを利用している

この調査は、テキサス州にある陸軍1個大隊の軍人に対して、任意かつ匿名での回答を求めるアンケートとして実施された。226人が回答し(大隊の約50%に相当)、うち2件は回答内容の不確実性のため除外、224人の回答を解析した。回答者の年齢は平均25.7歳(範囲18~48)で女性が14.3%であり、女性の割合は米国陸軍の平均である15.5%に近似していた。

性別や階級で利用率に有意差

テストステロンブースターやエストロゲン遮断薬、大麻などを含むサプリを「ハイリスクサプリ」とすると、111人(49.6%)とほぼ半数がこれを利用していた。性別で比較すると、男性の利用率は54.3%、女性は28.1%で有意差が存在した(p=0.0017)。

軍隊の階級で比較した場合、下位から順に、Junior Enlisted(二等兵、一等兵、上等兵など最下位にあたる4階級)は40.2%、下士官は67.2%、上級下士官は33.3%、尉官(少尉、中尉、大尉)は63.6%であり、下士官はJunior Enlistedより有意に高かった(p=0.0037)。なお、佐官(少佐、中佐、大佐)以上の階級は、アンケートに回答していなかった。

利用に際して専門家のアドバイスを求めた割合は、男性では1割

ハイリスクサプリを利用していると回答した111人のうち、その利用に際して安全性や有効性に関する情報を医療専門家に求めたのは、30人(27%)にとどまった。性別で比較すると、女性は28.1%、男性は10.6%であり、男性は10人に1人しか専門的なアドバイスを受けておらず、性別間に有意差がみられた(p=0.0202)。

階級で比較した場合、本アンケートの回答者の中では最高位のカテゴリーにあたる尉官では40.9%と、医療専門家に助言を求めた割合が高く一方、最下位のカテゴリーであるJunior Enlistedは8.3%のみであり、有意差がみられた(p=0.0018)。

ただし、医療専門家に助言を求めた軍人とそうでない軍人のハイリスクサプリ利用率には、有意差がなかった(p=0.6982)。これについては著者らも、「この研究で注目すべき点」としている。

3%が有害事象を経験

サプリ(ハイリスクサプリと限定しない)の利用によって何らかの有害事象を経験したことがあるとの回答は、3%にみられた。主な事象は、胃腸の不調、疲労、不安、傾眠、下痢、掻痒、過敏症、性欲亢進、体重増加などだった。

著者らは、「本研究には、単一の大隊を対象としていてサンプル数が少なく、かつ回答が任意という限界点がある。より大規模な研究が求められる」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Sources of Information Utilized by Active Duty Service Members for Nutritional Supplement Safety and Efficacy」。〔Mil Med. 2023 Aug 23;usad328〕
原文はこちら(Oxford University Press)

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