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スポーツ栄養士によるオンラインでの介入で、女性アスリートのREDs関連症状が改善

女性アスリートに対してオンラインによりスポーツ栄養士が栄養指導を行ったところ、スポーツにおける相対的エネルギー不足(REDs)に関連する症状が有意に改善し、半年後や1年後の追跡調査でもその効果が確認されたとする研究結果が発表された。欧州4カ国で多施設共同研究として行われたもの。

スポーツ栄養士によるオンラインでの介入で、女性アスリートのREDs関連症状が改善

16週間のオンラインによる栄養介入

この研究で行われた栄養介入は、「FUEL」と命名されたプログラム。「Food and nUtrition for Endurance athletes—a Learning program(持久系アスリートのための食事と栄養―学習プログラム)」を略した名称で、本論文の著者らによって開発された。スポーツ栄養士を含む研究者が作成した全16回の講義と隔週での個別カウンセリングが、16週間にわたりすべてオンラインで提供されるというもの。

講義の視聴時間は1回あたり25.0±8.4分で、内容は、スポーツにおける相対的エネルギー不足(relative energy deficiency in sport;REDs)関連情報、健康とパフォーマンスのための月経周期の重要性、持久系アスリート向けの主要栄養素の推奨事項、および栄養のピリオダイゼーションなど。栄養カウンセリングは経験豊富なスポーツ栄養士によってZoomを介して行われ、初回は1.5時間、2回目以降の計7回は1時間の枠が設定される。本研究での実際の所要時間は初回が73±15分、2回目以降は55±6分だった。スポーツ栄養士は、研究参加アスリートの国籍にあわせてノルウェー人3人、スウェーデン人4人、アイルランド人2人、ドイツ人1人があたった。

欧州4カ国の女性アスリートが研究参加

研究参加者は、前記の4カ国の持久系競技団体のサイトやソーシャルメディアを通じて募集された。適格条件として、(1)競技力のある女性持久系アスリート、(2)18~35歳、(3)トレーニングを週5回以上行っている、(4)研究参加前の少なくとも6週間はホルモン避妊薬を使用していない、(5)慢性疾患がなく、利用可能エネルギー不足(low energy availability;LEA)とは関連のない月経障害がない、(6)非喫煙者、(7)妊娠中でない、および妊娠の予定がない――などが設定されていた。

208人が募集に応じ、適格条件に基づき141人が除外され、その他、プロトコルからの逸脱や介入中の脱落(新型コロナウイルス感染症罹患も含まれる)などにより、解析はFUEL介入群30人、介入を行わない対照群15人となった。国籍はドイツ12人、スウェーデン17人、ノルウェー11人、アイルランド5人で、競技はランニング14人、トライアスロン12人、オリエンテーリング7人、バイアスロン6人、自転車5人など。なお、介入前(ベースライン)において、年齢やBMI、トレーニング時間、競技レベルなどに有意な群間差はなかった。

評価項目

評価項目は以下の三つで、介入前、介入直後、および、FUEL介入群に対しては6カ月後、12カ月後に追跡調査が行われた。

利用可能エネルギー不足(LEA)のリスク

LEAを把握する精度検証済みのスクリーニングツール(Low Energy Availability in Females Questionnaire;LEAF-Q)により評価し、8点以上の場合をLEAのリスクありと判定した。本研究では研究参加条件が8点以上であったため、ベースラインでは全参加者がリスクありに該当した。

摂食障害のリスク

摂食障害のリスク判定精度がアスリートにおいても検証済みのスクリーニングツール(Eating Disorder Examination Questionnaire;EDE-Q)により評価し、2.5点以上の場合を食行動が乱れていると判定した。本研究では研究参加条件が2.5点以上であったため、ベースラインでは全参加者がこれに該当した。

運動依存症のリスク

運動依存症のリスクを運動依存症調査票(Exercise Addiction Inventory;EAI)により評価し、24点以上の場合にリスクありと判定した。

介入直後だけではなく、長期追跡後にも改善が持続していることが確認される

LEAリスクの変化

介入の短期評価

結果について、まず介入前と介入終了直後で利用可能エネルギー不足(LEA)症状を比較してみると、LEAF-QのスコアはFUEL群が12.0±2.8から9.8±4.3に低下、対照群は11.0±3.0から10.3±2.5に低下し、この変化に有意差はなかった。ただし、介入後にスコアが8点未満(LEAリスクなし)であった割合は、同順に37%、13%であり、FUEL群のほうが有意に高かった。

月経が正常と報告した割合は、FUEL群では30%から67%に増加したのに対して、対照群では73%から53%へと減少。またベースラインで月経異常を報告したFUEL群のアスリート14人中5人(36%)は介入後に月経が正常と報告したのに対して、ベースラインで月経異常を報告した対照群のアスリートの中で、改善を報告したアスリートはいなかった。

介入の長期評価

次に、FUEL群における追跡調査時のLEAF-Qのスコアをみると、6カ月時点でスコア8点未満の割合は45%、12カ月時点では21%だった。介入前に続発性無月経状態にあった2人のアスリートは、6カ月時点では2人とも改善していなかったが、12カ月時点では1人が正常に回復していた。

その他、LEAF-Qの下位尺度である、消化器症状のスコアについても改善が持続していた。ただし傷害のスコアは、介入直後および追跡調査時点ともに、介入前と変化がなかった。

摂食障害リスクや運動依存症のリスクにも有意な影響

このほかにも本研究では上述のとおり、摂食障害リスクや運動依存症のリスクへの影響も評価され、それらについてもFUEL群で介入によりスコアが改善して長期間持続し、少なくとも悪影響のないことが示されている。

著者らは、「FUEL介入は月経機能を含むRED関連症状の持続的な改善につながり、また長期の追跡調査で摂食障害の症状に悪影響を与えないことが示唆された。本研究において対照群については追跡調査を行っていないことから、これらの結果を慎重に解釈する必要があるものの、FUEL介入は女性持久系アスリートのRED関連症状に対する介入手段として有望と思われる」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Short-term effects and long-term changes of FUEL—a digital sports nutrition intervention on REDs related symptoms in female athletes」。〔Front Sports Act Living. 2023 Dec 18:5:1254210〕
原文はこちら(Frontiers Media)

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