女性ランナーの月経周期の乱れには、”特別な食事スタイル”の実践が関与
女性レクリエーションランナー(市民ランナー、趣味でマラソンや駅伝などを楽しむ人のこと)は、非ランナーに比較して月経周期の乱れが多いという実態を示すデータが、ポーランドから報告された。また、そのような月経周期の乱れと関連する唯一の因子として、何らかの特別な食事療法を行っていることが抽出されたという。
レクリエーションレベルの女性ランナーの月経周期の乱れの実態は?
1992年に、摂食障害、無月経、骨粗鬆症の三つが相互に関連している状態として定義された「女性アスリートの三主徴(female athlete triad;FAT)」はその後、エネルギーの可用性低下(low energy availability;LEA)の影響を重視した「スポーツにおける相対的エネルギー不足(relative energy deficiency in sports;RED-S)」として認識されるように変遷してきた。FATやLEA、RED-Sに関する研究は少なくないが、本格的なトレーニングを行っているアスリートで検討された研究が主体。
一方、ランニングは代表的なレクリエーションスポーツと言え、実践者数はスポーツの中でもとくに多く、また、さまざまな競技のパフォーマンス向上のための基礎的なトレーニングの一つでもある。
このことから、本研究では女性レクリエーションランナーの月経周期の乱れの実態を把握するため、以下の調査を行った。
30歳代前半のランナーと非ランナーを比較
調査は、レクリエーションランナーと、ランニングを行っていない一般生活者を比較するという手法で行われた。レクリエーションランナー群(以下、ランナー群)は217人で32.1±8.4歳、対照群は143人で31.9±8.8歳。この年齢に有意差はなかったが、BMIは中央値が同順に21.63、23.34であり、ランナー群のほうが有意に低値だった(p<0.001)。
ランナー群のトレーニング歴は中央値4年で、週に3~4回、1回あたり1時間(中央値)ランニングをしており、トレーニングでの走行距離は5~15kmの範囲だった。対して対照群は約90%が、スポーツ活動を習慣としていないと回答した。
なお、両群ともに、妊娠中、閉経後、ホルモン避妊薬使用、子宮摘出術の既往が該当する人、および月経周期に影響を及ぼすその他の既知の要因のある人は除外されている。
レクリエーションランナーは月経周期が有意に短い
それでは結果だが、まず月経周期について、24日以下の割合はランナー群10.14%、対照群3.50%、25~31日の割合は75.58%、86.71%、31日以上の割合は14.29%、9.79%であり、ランナー群は頻発月経の傾向が認められた(p=0.020)。一方、調査前年の定期的な月経回数はランナー群9.62±3.27回、対照群11.00±1.42回であり、ランナー群のほうが有意に少なく(p<0.001)、標準偏差(ばらつき)は大きかった。
月経期間中の痛みについては、「痛まない」がランナー群23.96%、対照群7.69%、「初めは痛む」は70.97%、84.62%、「常に痛む」は5.07%、7.69%であり、ランナー群は痛む期間が短い傾向があった。ただし、痛みの程度には有意差がなかった。
初経年齢は有意差がなかった。
ランナーのみに対する質問として、月経痛に対するトレーニングの影響を尋ねたところ、「影響はない」が56.68%を占めたが、「トレーニングで痛みが和らぐ」も30.41%と3割を超えていた。その他、「月経期間中はトレーニングをしない」が11.98%、「トレーニングで痛みが増す」が0.92%だった。
ランナー群の約3割が、何らかの特別な食事療法を行っている
何らかの特別な食事療法を行っている割合は、ランナー群28.70%、対照群13.29%で、ランナー群のほうが有意に高かった(p<0.001)。
特別な食事のなかで最も多い食事スタイルは、ベジタリアンまたはビーガンであり、特別な食事療法を行っているランナーの40.32%を占めていた。続いて「バランスのとれた食事」との回答が16.13%、低カロリー食が12.90%、高タンパク食が6.45%、グルテンフリー食が4.84%、ケトジェニック食が3.23%などが挙げられた。
特別な食事スタイルが、月経周期の乱れの唯一の関連因子
次に、ランナー群のみを対象として、月経周期の乱れを目的変数、年齢、BMI、トレーニング歴、1週間あたりのトレーニング回数、1回のトレーニング時間・走行距離、水分摂取量、および、何らかの特別な食事療法を行っているか否かを説明変数とする回帰分析を施行。その結果、何らかの特別な食事療法を行っていることが、月経周期の乱れと有意に関連する唯一の因子として抽出された(p=0.007)。
このほかに本調査では、女性アスリートの三主徴(FAT)の認知度も調べた。
「女性アスリートの三主徴とは何か知っているか?」との質問に、75.93%は「何も知らない」と回答。その他は、無月経(15.74%)、またはエネルギーの不均衡や摂食障害(2.77%)などといった断片的な回答であり、3因子を挙げて相互関係まで述べることができたのは5.56%のみだった。
論文のまとめとしては、「スポーツをしてない対照群の女性と比較して、レクリエーションランナーは月経周期が短く、規則的でなかった。また、何らかの特別な食事スタイルを堅持することが、月経の乱れに関連していると結論づけられる」と述べられている。
文献情報
原題のタイトルは、「The Female Athlete Triad—the impact of running and type of diet on the regularity of the menstrual cycle assessed for recreational runners」。〔PeerJ. 2022 Mar 2;10:e12903〕
原文はこちら(PeerJ)