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暑熱環境での運動による筋肉、肝臓、腎臓のダメージを複合サプリで抑制できる可能性

暑熱環境下での運動によるストレスに対する、複合サプリメント、ブドウ糖、または水を摂取することの影響を検討した研究結果が報告された。複合サプリには、筋肉や肝臓、腎臓の障害マーカーの上昇を抑制するというデータを得られたという。

暑熱環境での運動による筋肉、肝臓、腎臓のダメージを複合サプリで抑制できる可能性

男性アスリートを3群に分類し、単盲検比較試験

暑熱環境による身体へのストレスは、とくに肉体労働者とスポーツアスリートにとって深刻な問題となりやすい。数多くの研究が、暑熱環境が身体能力および認知機能を低下させると結論づけている。

また、発汗で失われるミネラルやビタミンを補給することが、身体能力などの低下を抑制するとする研究結果も複数報告されている。その一方で、通常の食事を摂っていれば、追加でそれらを摂取することにメリットはないとする研究報告もあり、結論に一貫性がみられない。さらに、何らかの栄養素が暑熱環境によるダメージを抑制するとしても、なにか一つの栄養素が単独でそのような効果を発揮するのではなく、複数の栄養素の相互作用によって発揮される可能性がある。本論文の著者らは、その可能性、および、仮に単一の栄養素がメリットをもたらすのであればブドウ糖にそのような有用性があることを想定。複合栄養素サプリメントと、ブドウ糖単独、それに水分補給単独という計3条件で、暑熱環境下での運動によるダメージを抑制し得るかを検討した。中国の研究者らの報告。

単回摂取と短期間連続摂取の2パターンの単盲検無作為化試験

この研究は、90人のトレーニング習慣のある18~32歳の男性を対象とする単盲検無作為化比較試験として実施された。サプリ等を単回摂取した場合と、7日連続で摂取した場合の、計2回の検討を行っている。

研究参加者を、複合サプリ群、ブドウ糖群、および水を摂取する群の件3群に無作為に分類。単回摂取試験の複合サプリには、ブドウ糖13.5g、フルクトース6.5g、マルトース10.0g、ナトリウム7.5mmol、タウリン3.5gのほかに、ビタミンB1、B2、ビタミンCが含まれており、連続摂取試験ではこれにビタミンKも追加された複合サプリが利用された。ブドウ糖群は30gのブドウ糖だった。

3群の年齢、BMI、体脂肪率、トレーニング歴、心拍数、血圧、肝機能・腎機能マーカーなど、評価した指標に有意差のあるものはなかった。研究参加者は、以下の試験を行う日の3日前から、激しい運動、カフェイン・アルコール・抗炎症薬の摂取、およびマッサージの利用を禁止し、また同じ食事を繰り返すように指示され、前日からは絶食とした。

単回摂取試験のプロトコル

単回摂取試験では、研究室到着後に採血を実施。割り付けられた飲料を500mL(20分間隔で250mLずつ)摂取し、その30分後に3kmランニングのタイムトライアルを実施。試験日の湿球黒球温度(wet bulb globe temperature;WBGT)は26~27°Cであり、熱中症リスクは「高い」と判定された。

連続摂取試験のプロトコル

連続摂取試験では、割り付けられ飲料を7日連続で摂取してもらい、7日目の前夜から絶食として、単回摂取試験と同様にタイムトライアルを行った。試験日の湿球黒球温度(WBGT)は32°Cであり、熱中症リスクは「きわめて高い」と判定された。

炎症反応と酸化ストレスの抑制を介して暑熱環境での運動によるダメージを抑制か

複合サプリ群で運動による筋肉・肝臓・腎臓への影響が軽減

連続摂取試験において、肝機能マーカーの一つであるASTのレベルは、ベースラインに比べ連続摂取後に上昇していた。その上昇幅は、水分単独群よりも複合サプリ群およびブドウ糖群のほうが有意に大きかった(p=0.010)。ただし、3kmトライアル後のAST値は、複合サプリ群が他の2群よりも有意に低くかった(p=0.012)。また、運動後に認められた複合サプリ群でのAST上昇反応の抑制は、単回摂取試験でも認められたが、その抑制の幅は連続摂取試験のほうがより大きかった。

腎機能マーカーのうちBUNの運動による上昇幅は、単回摂取試験において複合サプリ群やブドウ糖群より水分単独群のほうが有意に大きかった(p<0.01)。また、複合サプリ群では運動後のクレアチニンおよび尿酸値の変化が、他の2群より有意に少なかった(いずれもp<0.01)。連続摂取試験では有意性が消失したものの、同様の傾向にあった。運動後のCKの変化は、複合サプリ群で他の2群より有意に低値だった。

このほか、LDHの変動にも有意な群間差が認められた。

複合サプリ群で運動による炎症や酸化ストレスへの影響が軽減

IL-6、TNF-α、SOD、8-iso-PGF2αなどの炎症や酸化ストレスマーカーの変動の解析から、複合サプリ群は運動後の炎症反応や酸化ストレスが他の2に比べて抑制されていることがわかった。

なお、連続摂取試験でのタイムトライアルの成績は、水分単独群とブドウ糖群では有意な変化がなかったが、複合サプリ群ではわずかながら有意にタイムが短くなっていた。ただし群間差は非有意だった。自覚的運動強度にも有意差がなく、また、重篤な消化器症状や研究中の脱落は発生しなかった。

以上の結果を総括して著者らは、「複数の栄養素の補給が、おそらく、暑熱環境での激しい運動によって引き起こされる、炎症反応と酸化ストレスの増加を抑制することを通じて、筋肉のダメージの回復を促進し、肝臓と腎臓の機能低下を抑えることが示唆される」と述べている。

文献情報

原題のタイトルは、「Effect of Multiple-Nutrient Supplement on Muscle Damage, Liver, and Kidney Function After Exercising Under Heat: Based on a Pilot Study and a Randomised Controlled Trial」。〔Front Nutr. 2021 Dec 23;8:740741〕
原文はこちら(Frontiers Media)

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