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2,500METs/週の運動が、COVID-19パンデミック時のメンタルを維持 中国での縦断調査

2020年10月24日

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)パンデミックに伴う外出自粛が、一般生活者の精神的負荷を強めていることが多くの国から報告されている。ただしそれらの報告の多くは、一時点の横断的調査の結果であり、COVID-19感染拡大の規模との関連は明らかでない。こうしたなか中国から、COVID-19による精神的な影響を、大学生を対象に縦断的に調査した結果が報告された。COVID-19による死亡者数が増えるにつれて、睡眠の質が低下するなどの相関が認められたという。また、身体活動はCOVID-19による精神的な影響の緩和になり、2,500METs/週の運動でその効果が最大化する可能性が示された。

2,500METs/週の運動が、COVID-19パンデミック時のメンタルを維持 中国での縦断調査

中国で大学生を対象にオンラインで3回継続して実施

この調査は、中国においてCOVID-19がまだ拡大局面にあった2020年2~3月に、大学生を対象としたオンラインアンケートによって行われた。回答者は66名で、前記期間中に3回の回答が求められた。

アンケートの内容は、以下のとおり。国際標準化身体活動質問票の簡易版(International Physical Activity Questionnaire;IPAQ-S)による身体活動量。ピッツバーグ睡眠質問票(Pittsburgh Sleep Quality Index;PSQI)による睡眠の質(5点以下を異常なしと判定)。うつ病不安ストレス21(Depression Anxiety Stress Scales-21;DASS-21)によるストレス、不安、うつレベルの判定(それぞれ10点以下、7点以下、9点以下を異常なしと判定)。Buss-Perry攻撃性質問票(Buss-Perry Aggressive Questionnaire;BPAQ)による攻撃性の評価。

回答者の背景

回答者の年齢は20.70±2.11歳で、62.12%が女性、BMIは21.11±2.92、大半(77.27%)は都市部に住んでいて、身体活動量は932.35METs・分/週であり、喫煙者はいなかった。

COVID-19に対し、84.84%が「心配」または「非常に心配」と回答し、「あまり心配していない」「気にしない」は15.15%だった。ストレス、不安、うつレベルに問題ありと判定された割合は、それぞれ28.79%、45.45%、22.73%だった。

COVID-19による死亡者が増えるほど睡眠の質が低下

縦断的な検討により、COVID-19の流行拡大による死亡者数と各評価指標との関連を解析した結果、死亡者数が増加するに従い睡眠の質を表すPSQIのスコアが上昇するという有意な関連が認められた。具体的にはCOVID-19による死亡者が1,000人増えるごとにPSQIスコアは1.37(95%CI:0.55~2.19)ずつ上昇していた。PSQIの評価項目をより細かくみると、睡眠時間や入眠潜時および睡眠障害のスコアとの相関は有意でなく、睡眠効率スコアが有意に相関していた(死亡者が1,000人増えるごとに0.29〈95%CI:0.15~0.44〉の増加)。

BPAQにより評価した攻撃性は、COVID-19死亡者数の増加に伴い低下していた(死亡者が1,000人増えるごとに-6.57(95%CI:-12.78~-0.36)。DASS-21により評価した、ストレス、不安、うつレベルは、COVID-19による死亡者数の変化との有意な関連は認められなかった。

身体活動によるCOVID-19に伴うメンタルヘルスへの影響の緩和

COVID-19感染拡大に伴うこれらのメンタルヘルス状態への影響は、身体活動によって抑制されるという関連が認められた。例えば、身体活動量が100METs・分/週多いごとに、DASS総合スコアは-0.12(95%CI:-0.22~-0.010)低いという有意な関連があった。DASSの評価項目をより細かくみると、ストレスや不安のスコアとの相関は有意でなく、うつスコアが有意に逆相関していた(身体活動量が100METs・分/週多いごとに-0.44〈95%CI:-0.080~-0.0022〉)。

身体活動量と睡眠の質や攻撃性との間には、有意な関連がみられなかった。

2,500METs・分/週の運動が否定的な感情を最小化する

身体活動量とメンタルヘルス状態は非線形の関連があり、統計的解析により2,500METs・分/週の運動がCOVID-19パンデミックによる否定的な感情を最小化すると推測された。これは、毎日の108分の軽強度運動または、80分の中強度運動、または45分の高強度運動に該当し、COVID-19発生以前の研究で推奨値として提案されていた1日あたり60分の中~高強度運動に比較し若干多い。この違いの理由は恐らく、COVID-19パンデミックという特殊条件が関係しており、人々は感染リスクの負担と社会的距離の維持によって生じる心理的気負荷を相殺するために、より多くの運動量が必要と考えられる。

まとめ

要約すると、COVID-19の感染拡大は若年者のメンタルヘルスに影響を及ぼし、睡眠の質が媒介する。否定的な感情の抑制のために身体活動量を増やし、良い睡眠を維持することが、費用効果が高く実用的な対処法である。COVID-19パンデミックは、人々の攻撃性を低下させた。恐らくこれは、人々が生命の脆弱性を認識し、日々の生活をかけがえのないものだと捉えるようになったことによると考えられる。COVID-19パンデミックは一般市民の精神的健康に、一様に悪影響を及ぼしたとは言い切れない。

文献情報

原題のタイトルは、「Mental Health Problems during the COVID-19 Pandemics and the Mitigation Effects of Exercise: A Longitudinal Study of College Students in China」。〔Int J Environ Res Public Health. 2020 May 25;17(10):3722〕
原文はこちら(MDPI)

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