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食生活と「健康関連の生活の質」(HRQOL)との関連を検討した系統的レビュー

健康関連の生活の質(health related quality of life;HRQOL)と食生活の関連は、研究者間で古くから関心がもたれ議論が続いているトピック。単一の栄養素または食品とHRQOLとの関連を検討したのでは、栄養素間の複雑な相互作用が考慮されないため、食生活全般を評価したことにならない。一方、食事パターンとHRQOLの関係に関するこれまでの研究結果には一貫性が欠ける。本研究では、食事パターンとHRQOLとの関係に関する既報を対象とするシステマティックレビューを行い、この点を改めて検討した。

食生活と「健康関連の生活の質」(HRQOL)との関連を検討した系統的レビューる

抽出された論文は13件で、対象者は合計4万3,445人

文献検索には、PubMed、Scopus、Web of Sciences、Google scholarという4件のデータベースを用い、それぞれのデータベースの開始から2020年3月までに公開された論文を対象とした。キーワードとして、食事パターン、食事OR、因子、クラスター分析、主成分分析、QOL、HRQOLなどを設定し検索した結果、1,274件がヒットした。これらに手動検索による5件を追加した後、重複を削除し805件をタイトルとアブストラクトによるスクリーニング対象とした。

スクリーニングには独立した2名の著者があたり、事前に設定した以下の選択基準に該当するものを抽出した。意見の不一致は両者のディスカッションにより採否を決定した。

選択基準は、ヒトを対象とした観察研究(横断研究、コホート研究、症例対照研究)で食事パターンとHRQOLの関係を検討したものであり、介入研究やケースレポート、システマティックレビュー/メタアナリシスは除外した。また、食生活全体(食事パターン)との関連を明らかにする目的から、単一の栄養素、単一の食品、または単一の食品群との関連を評価した研究は除外した。

これらの文献検索工程は、PRISMA(preferred reporting items for systematic reviews.システマティックレビューとメタ解析のための優先報告事項)に準拠し行われた。

抽出された論文の特徴

最終的に、2016~19年に公開された13件の論文が抽出され、それらの研究対象者は192~1万6,939人で合計4万3,445人だった。13件中8件は地中海食とHRQOLの関連を検討したもので、他の5件は、「西洋式の食事パターン」などとの関連を検討していた。アジアの国々の食事パターン、例えば日本食や中国の食事スタイル、および北欧やフランスの食生活との関連を検討した報告は含まれなかった。

研究デザインについては、13件中9件は横断的研究であり、4件は縦断的研究(そのうちの2件はベースラインデータの解析)だった。

健康的な食事パターンは、身体的・精神的なHRQOLと関連している

結果は、13件中3件の研究を除き、食事パターンとHRQOLの有意な関連を報告していた。対象者を一定期間追跡した縦断研究の2件は、スペインと米国から報告されていた。

スペインでの研究は、2016年に報告されたもので、中等度の心血管リスクのある被験者(35〜74歳、女性159人、男性155人)を対象とし、地中海食スコアで食事パターンを評価していた。年齢、性別、高血圧、脂質異常症、チャールソン併存疾患指数で調整後、地中海食スコアが高いほど社会的機能スコアが高いという有意な関連が認められたと報告していた。

米国での研究は、18歳以上の結腸直腸癌患者192人を対象とし2017年に報告されたもので、「西洋式の食事」、「果物と野菜」、「パンとバター」、「高炭水化物」という四つの食事パターンを、性別、年齢、腫瘍病期・腫瘍部位で調整のうえ比較していた。結果は、「西洋式の食事」をしている患者は、術後12カ月間で、身体機能、便秘、下痢が改善する可能性が低いことが示された。「果物と野菜」の食事を続けた患者は、下痢スコアの改善が示された。

これらの検討の結果として、著書らは結論を「地中海食をはじめとする健康的な食事パターンは、身体的および精神的な面の双方のHRQOLのより良いスコアと関連している。また、「西洋式の食事」などの不健康な食事パターンは、HRQOLのスコアが低いことに関連している。潜在的な交絡因子を調整することで、この結果を因果の推論に利用できる可能性もある」とまとめている。その一方で、「抽出された研究の方法論的アプローチ、デザイン、および結果には大きな異質性があり、メタ解析を施行できなかった。食事パターンとHRQOLとの関連を明らかにするには、さらなる縦断的研究が必要」と述べている。

日本食や北欧の食事の特徴

また、前述のように抽出された研究に日本食や北欧、フランスの食事パターンの研究が含まれていなかったことも本検討の限界点であり、著者らは若干の考察を加えている。

例えば、北欧の食事は、根菜、穀物、ベリー、ナッツ、シーフードの摂取量が多く、地中海食に似ているが、オリーブオイルよりもキャノーラ油が使われることが多い。そして日本の伝統的な食事の「side dishes(おかず)」には、高品質の蛋白源やω-3脂肪酸が豊富な魚が頻用されると、特徴を解説している。

文献情報

原題のタイトルは、「A systematic review of the association between dietary patterns and health-related quality of life」。〔Health Qual Life Outcomes. 2020 Oct 12;18(1):337〕
原文はこちら(Springer Nature)

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