運動中の暑熱対策でマウスウォッシュに使うメントールの最適濃度は0.01~0.1%
暑熱環境での運動中に、メントールのマウスウォッシュによりパフォーマンスを維持しようとする場合の、最適なメントール濃度を検討した研究結果が報告された。指摘濃度は0.01~0.1%の範囲であり、それ以下では無効、それ以上では刺激感等の負の影響により効果が相殺される可能性があるという。

暑熱対策として最適なメントール濃度を探る研究
唐辛子の辛味成分であるカプサイシンなどは温かい・熱いという感覚を引き起こすのとは反対に、メントールは冷たさの感覚を引き起こす。この特性を利用して、アスリートが暑熱環境で試合に参加する際に、メントール溶液の肌への塗布やマウスウォッシュ(口すすぎ)により、パフォーマンス低下を防ぐ対策がとられることがある。
一方、メントールの利用によって冷却だけでなく、チクチクするような痛みの刺激感覚が生じることがある。これはメントールが高濃度のときに起こりやすく、不快感となりパフォーマンスに負の影響をもたらす可能性がある。これまでのところ、アスリートのパフォーマンスのための最適なメントールの濃度は研究されていない。今回紹介する論文の研究は、以上のような背景のもとで実施された。
試行環境の条件を固定し、さまざまなメントール濃度でパフォーマンスへの影響を比較
この研究は、三つのパートからなる。
一つ目のパートでは、研究参加者にさまざまなメントール濃度の溶液でマウスウォッシュをしてもらい、有効かつ刺激の強さが許容できる範囲の濃度を特定した。二つ目のパートでは、暑熱環境下で一定の運動強度を維持した状態で、さまざまな濃度のメントール溶液のマウスウォッシュをしてもらい、パフォーマンス指標などへの影響の違いを検討した。三つ目のパートでは、運動中に濃度を変えたマウスウォッシュを複数回することによって効果が異なるのかを検討した。
すべての研究は英国の冬季にあたる11~4月に行われ、各試験条件の試行には72時間以上のウォッシュアウト期間(研究1のみ24時間以上)を設けて実施された。試験の試行時間帯は最初の試験から±2時間の範囲内に管理された。また試行の24時間前からは、カフェイン、アルコール、激しい運動を禁止した。
研究2と3は室温35.0±0.8℃、相対湿度30±3.3%のチャンバー内で、自転車エルゴメーターを用いて行われた。また試行前に尿浸透圧が測定され、体内水分量が適切であることが確認された。
研究デザインはすべて無作為化クロスオーバー法が用いられた。メントール水溶液は25mLで無色透明であり、10秒間うがい(含漱)してから吐き出すように指示した。水溶液は受動的に31℃になるまで加温されてから含漱された。
研究1:有効な範囲の探索
研究1の参加者は38人の男性(36±3歳)。実験室の温度は20±0.6℃に管理されていた。メントール濃度は、0.001%、0.01%、0.1%、0.5%、1%とし、10秒間の含漱後に吐き出し、30秒間口を閉じた状態(蒸発の影響を抑えるため)で待機したのち、冷たさや心地よさ、刺激感などを評価してもらった。
その結果、冷たさは0.01~0.5%の範囲が最大で、0.5%以上では刺激感が過剰になり、0.1%を超えると心地よさが減衰することがわかった。このことから、研究2と3では、0.01%、0.1%、0.5%の3条件が試行された。
研究2:0.01%、0.1%、0.5%の3条件でのクロスオーバー試験
研究の2および3の参加者は31人で、全員、暑熱馴化を受けておらず、過去3カ月以内に暑熱地域への訪問歴がない男性(21±2歳)。このうち16人が研究2に参加し、15人が研究3に参加した。
研究に先立ち、自覚的運動強度(rating of perceived exertion;RPE)を一定に保つためのトレーニングが行われた。具体的には自転車エルゴメーターで、120Wから開始し、ボルグスケールが16(非常にきつい)となる強度±10Wを3分間維持できるようになるまで習熟が重ねられた。平均3回のトレーニングが必要だった。
習熟終了後に、前記の条件のチャンバー内で、3種類の濃度のメントール溶液およびプラセボ(ノンカロリー人工甘味料)のマウスウォッシュを10分間隔で行い、パワーが初期値の70%以下の状態が2分間続くまで継続された。研究3では、メントールの濃度を漸増させるプロトコル、漸減させるプロトコル、一定とするプロトコルが試行された。
濃度0.5%ではピークパワーがより上昇するものの、総仕事量は有意に減少する
論文ではさまざまな条件下での複数のパフォーマンス指標への影響が詳細に述べられているが、ここではポイントのみを紹介する。
ピークパワーはプラセボ条件と比較して、0.01%および0.1%の濃度では約6%、有意に増大し、0.5%の条件では約9%有意に増大していた。それに対して運動の総仕事量は、濃度0.01%条件では約5%、濃度0.1%条件では約3%、それぞれ有意に増大していたが、濃度0.5%条件では約-10%と有意に減少し、負の影響が観察された。
濃度漸増プロトコルと漸減プロトコル、および濃度一定プロトコルで、有意差は認められなかった。なお、体幹温度や心拍数には、条件間の有意差はみられなかった。
これらの結果を基に論文の結論は、「暑熱対策としてメントールのマウスウォッシュを行う場合の至適濃度は0.01~0.1%であり、これより低濃度では有効性が低く、高濃度では刺激が大きすぎてプラスに働かない可能性がある」とまとめられている。
文献情報
原題のタイトルは、「Determination of the optimal dose and dosing strategy for effective l-menthol oral rinsing during exercise in hot environments」。〔Eur J Appl Physiol. 2024 Oct 5〕
原文はこちら(Springer Nature)
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