BCAA摂取の影響に性差 筋力に関しては男性で効果が高く、筋肉痛と倦怠感に関しては女性も有効
分岐鎖アミノ酸(BCAA)の効果には性差があり、筋力増強は男性で顕著であり、遅発性筋肉痛や倦怠感の抑制効果については女性でも高いことを示すデータが報告された。介入期間6カ月のRCTの結果であり、イタリアの研究者らによる論文。
BCAA摂取の影響の性差を6カ月のRCTで検討
ロイシン、イソロイシン、バリンという3種類の必須アミノ酸である分岐鎖アミノ酸(branched-chain amino acid;BCAA)は、筋タンパク質合成刺激や遅発性筋肉痛(delayed onset muscle soreness;DOMS)、回復促進などの作用を有することが知られている。これらの作用のうち、筋タンパク質合成刺激作用の一部には男性ホルモンのテストステロンが関与することから、女性よりも男性でBCAA摂取の有効性が高いと考えられることなど、摂取の影響に性差が存在する可能性が報告されている。ただし詳細は明らかになっていない。そこで本論文の著者らは、背景因子が同等な男性と女性に対して、同様のBCAA介入を行い、その影響の差の有無を検討した。
ウェイトリフティング経験者を性別で2群、計4群に分け、BCAA/プラセボで介入
この研究は、レクリエーションレベルでウェイトリフティングを行っている20~48歳の成人100人(男性と女性が各50人)を対象に実施された。適格条件として、過去3年以上ウェイトリフティングを継続していることなどが設定され、除外条件として、喫煙者・前喫煙者、プロテインサプリ・クレアチン・アナボリックステロイド・その他サプリメントの利用者、筋骨格系の障害などが設定されていた。介入期間は6カ月で、この間、飲酒は禁止し、また介入前後に実施したパフォーマンステストの48時間前からの運動、12時間前からのカフェイン摂取を禁止した。
男性と女性を無作為に2群(計4群)に分け、性別ごとに1群にはBCAA(ロイシン500mg、イソロイシン250mg、バリン250mgのカプセル)、他の1群にはプラセボを、それぞれを1日5回し摂取してもらった。また介入期間中は13種類のウェイトトレーニングをプロトコルにそって継続してもらった。
研究参加者全員が6カ月の介入を終了し、脱落はなかった。介入期間中のトレーニング量は4.5±2.1時/週であり、遵守率は95%超だった。研究からの脱落が発生しなかったことについて論文には、参加者全員が過去3年以上にわたりウェイトトレーニングを行っていて介入法自体が彼らの日常と一致し怪我のリスクが低かったこと、および介入期間が春~夏であって感染症のリスクも低い期間であったことが理由ではないかと記されている。
評価項目
介入前のベースライン時と6カ月間の介入後に、体組成、身体的パフォーマンス、回復への影響を評価した。
これらのうち、体組成は生体インピーダンス法で把握した。身体的パフォーマンスは、スクワット、ベンチプレス、デッドリフトにおける、1回だけ施行可能な最大負荷量(repetition maximum;1RM)で評価した。回復への影響は、1RMを評価したテストの後に、遅発性筋肉痛(DOMS)の程度を100mmのビジュアルアナログスケール(VAS)で、倦怠感を0~10点の11段階のスケール(rating of fatigue;ROF)で評価した。
筋力への効果は男性でより顕著
ベースライン時の年齢、トレーニング歴、BMI、体脂肪率、筋肉量などは、各群よく一致していた。
体組成への影響
介入前後で、体重はBCAA群がΔ-2.06±3.9kg、プラセボ群がΔ-3.3±2.1kg、除脂肪量は同順にΔ1.1±1.2kg、Δ-0.5±2.3kg、脂肪量はΔ-2.3±2.5kg、Δ-2.7±2.0kg、筋肉量はΔ2.2±1.3kg、Δ-0.6±2.3kgとなっていた。
これを性別にみると、女性では、除脂肪量(BCAA群Δ1.1±1.5kg、プラセボ群Δ-0.37±0.5kg)と、筋肉量(同順にΔ2.1±1.7kg、-0.2±2.7kg)という2項目に有意差が観察され(いずれもp<0.001)、有意差のみられた変化はBCAA群のほうが好ましいものだった。
一方、男性では、体重(Δ0.18±1.7kg、Δ-2.8±1.8kg)、除脂肪量(Δ1.01±0.5kg、Δ-0.53±0.7kg)、および筋肉量(Δ2.2±1.0kg、Δ-1.0±1.8kg)という3項目に有意差が観察され(いずれもp<0.001)、有意差のみられた変化はBCAA群のほうが好ましいものだった。
身体的パフォーマンスへの影響
介入前後で、スクワットの1RMはBCAA群がΔ9.4±3.3kg、プラセボ群がΔ6.4±1.7kg、ベンチプレスの1RMは同順にΔ7.6±3.2kg、Δ7.7±1.3kg、デッドリフトの1RMはΔ10.3±2.4kg、Δ7.8±1.6kgとなっていた。
これを性別にみると、女性では、デッドリフトの1RM(BCAA群Δ9.4±2.1kg、プラセボ群7.6±1.7kg、p=0.009)の1項目のみ有意差が観察され、BCAA群のほうがより好ましい変化だった。
一方、男性では、スクワットの1RM(同順にΔ11.2±3.5kg、Δ6.5±0.8kg、p<0.001)、ベンチプレスの1RM(Δ9.5±3.4kg、Δ4.7±1.8kg)、およびデッドリフトの1RM(Δ11.3±2.2kg、Δ8.1±1.4kg)という3項目すべてに有意差が観察され(いずれもp<0.001)、いずれもBCAA群のほうがより好ましい変化だった。
回復への影響
介入前後で、DOMS(VAS)はBCAA群がΔ-20.0±10.2、プラセボ群がΔ-0.5±0.9、倦怠感(ROF)は同順にΔ-4.4±2.6、Δ-0.6±0.6となっていた。
これを性別にみると、女性では、DOMS(BCAA群Δ-18.1±9.4、プラセボ群Δ-0.8±1.2)、および、ROF(同順にΔ-2.6±1.5、Δ-0.6±0.7)であり、二つの指標ともにBCAA群で回復が促進していたことを示していた(いずれもp<0.001)。
一方、男性においても、DOMS(Δ-23.6±10.4、Δ-0.1±0.7)、および、ROF(Δ-3.0±2.1、Δ-0.4±0.4)であり、二つの指標ともにBCAA群で回復が促進していたことを示していた(いずれもp<0.001)。
文献情報
原題のタイトルは、「Sex-Based Effects of Branched-Chain Amino Acids on Strength Training Performance and Body Composition」。〔Sports (Basel). 2024 Oct 11;12(10):275〕
原文はこちら(MDPI)