子どもたちが自ら考えて熱中症を予防するためのアニメを制作・公開 早稲田大学・新潟大学
ヒトの体温調節機能として重要な汗について、小・中学生が理解しやすいように解説したアニメーション動画が公開された。早稲田大学スポーツ科学学術院と新潟大学人文社会科学系の研究グループが制作したもので、早稲田大学webサイトで公開している。子ども自身が主体的に身を守る行動を考え、熱中症を自発的に予防する実践力を身に着けることを目的としており、日頃から汗ばむ程度の運動(遊び)により徐々に体を暑さに慣れさせること(暑熱順化)が熱中症の予防につながり、安全でアクティブな生活習慣を維持できるようになると解説されている。
「からだと水分」に続く第二弾として「汗のやくわり」を公開
公開された動画は2分36秒のアニメーションで、タイトルは「汗のやくわり」。同研究グループは、学校の子どもたち(小学校~中学校)が自ら考え行動して、熱中症を予防できるような新しい教育構築を目標として研究を進めており、2021年度には「からだと水分」という約3分のアニメーション動画を公開している。今回の「汗のやくわり」はそれに続く第二弾となる作品。
子ども自身が、自分の身体の状態を的確に認識し、主体的に身を守る行動を考え、熱中症を自発的に予防する実践力を身に付けるけるために、体温調節機能(行動によって熱中症を回避する能力と、発汗などの生理機能によって熱中症を回避する機能)への理解を深めることを目的に制作されている。
本格的な夏を迎える前に、熱中症予防教育の一環として、学校などの教育現場や家庭などで本動画を広く大人も子どもも一緒に視聴することで、日常的な身体運動の重要性を多くの方が認識し、一人でも多くの人たちが熱中症から身を守ることができるようになることを目指している。
動画リンク
動画制作の背景:知識を実践につなげるために伝え方を工夫
熱中症のリスクは老若男女、スポーツする人・しない人にかかわらず存在する。近年では気候変動の影響で、日本においても真夏日や猛暑日の発生頻度が増えており、極端な暑さによる健康被害は今後さらに顕在化することが予想される。
研究グループではこれまでに熱中症予防対策セミナーを、主にスポーツ関係者や学校関係者に行ってきたが、いずれの現場においても、漠然と水分補給や脱水予防の重要性は理解しているものの、具体的な行動に移せていないという障壁がみられた。第一弾動画「からだと水分」はこのような背景から制作され、子どもたちに適切な水分補給習慣の実践を促すことを意識した構成にした。熱中症予防に関連づけて水分補給の重要性を唱える資料は世の中に多く存在するが、本研究グループの制作した動画は、小学生低学年でも容易に理解できること、水分補給を実践するために子どもたちでもできる具体的な方法を明示している点にオリジナリティーがある。
今回の動画で実現しようとしたこと:運動(遊び)による暑熱順化の重要性も解説
今年制作された第二弾動画の「汗のやくわり」は、一見難解と思われがちなテーマながら、熱中症予防に重要な発汗機能の説明や、発汗を通じた体温調節機能を維持するためには適度な運動習慣が重要である点などについて、わかりやすく解説している。本動画では、日頃から汗ばむ程度の運動(遊び)をすることが結果として熱中症予防にもつながる点についても触れることで、徐々に体を暑さに慣れさせていく「暑熱順化」のコンセプトも反映した。
第一弾の「からだと水分」と第二弾の「汗のやくわり」の情報を統合することで、子どもたちには夏季においても安全にアクティブな生活習慣を心がけてもらえるよう意識した。研究グループでは、「これらの動画は、主に小学校やユーススポーツクラブなどの子どもたちを対象に視聴していただくことで、具体的な熱中症予防を子どもたちが自ら実践するきっかけになることを期待している。動画はより多くの方に活用していただけるよう、オンラインで一般公開している。小学校低学年の子どもには理解の難しい言葉も一部含まれているので、対象者によっては指導者や保護者との対話の中で、本動画を活用していただくことを推奨する」と語っている。
関連情報
子どもたちの熱中症を予防する 動画「汗のやくわり」公開(早稲田大学)
子どもたちの熱中症を予防する動画「汗のやくわり」公開-猛暑予想の夏本番を迎える前に子どもが自ら考え行動して熱中症の予防が出来るように-(新潟大学)
シリーズ「熱中症を防ぐ」
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