食事を摂るシチュエーションによって栄養学的な質が変わる 日本人111人の生態学的瞬間評価
日本人成人の食事の種類(朝食、昼食、夕食)、同席者の有無、食事場所が、食事の栄養学的質と関連していることが明らかになった。東京大学の研究グループが行った、行動に関する情報をリアルタイムで繰り返し収集する「生態学的瞬間評価」という手法に基づく研究の結果であり、「European Journal of Nutrition」に論文が掲載されるとともに、同大学のサイトにプレスリリースが掲載された。研究グループでは、「本研究の成果は、栄養摂取状況を改善するための政策や介入の策定に貢献することが期待される」としている。
研究の目的と方法
食事の栄養学的質が低いと、心血管疾患、がん、2型糖尿病などの疾患リスクが増加すると考えられている。誰とどんな状況で食べるかといった食事場面の特性は、食事の栄養学的質と関連する重要な要因。例えば、外食は脂質や糖類が多い食事につながることが知られている。
これまでの研究では、異なる個人での食事の質と食事場面の特性との関係が主に検討されてきた。しかし、同一の個人においても食事の質はさまざまであり、個人内での食事の質の変動を規定する食事場面の特性については、十分に明らかになっていなかった。
このような関連性を探るためには、参加者の行動に関する情報をリアルタイムで繰り返し収集する「生態学的瞬間評価」という手法が役に立つと考えられる。そこで、本研究は、食事の質と食事場面の特性との関連を、生態学的瞬間評価を用いて検討することを目的とした(図1)。
図1 本研究の仮説
研究の参加者は、30~76歳の日本人男女各111人。秤量法による食事記録を依頼し、4日間の飲食内容をすべて計量、記録してもらった。さらに、各食事場面の特性として、勤務日かどうか、食事の種類(朝食/昼食/夕食)、同伴者の有無、食事場所(自宅/外出先)、食事中のスクリーン使用(スマートフォンの操作やテレビ視聴)の有無を記録してもらった。
登場回数が少なかった間食を除外した後、男性1,295食、女性1,317食を解析対象とした。各食事の栄養学的質の評価には、Healthy Eating Index-2020(HEI-2020)を用いた。この指標は、「米国人のための食事ガイドライン」の順守の程度を測る指標であり、100点満点で表され、点数が高いほうが食事の栄養学的質が高いことを意味する。
研究の結果と結論
男性の結果を図2に、女性の結果を図3に示す。
男性においては朝食に比べて昼食の食事の質が低く、夕食の食事の質が高いことが明らかになった。また、男性は、一人で食べるときよりも誰かと一緒に食べるときのほうが食事の質が高いことが示された。女性に関しては、朝食に比べて夕食の食事の質が高く、自宅での食事よりも外食のほうが食事の質が高いことがわかった。
勤務日かどうか、および、食事中のスクリーン使用の有無は、食事の質との間に有意な関連がみられなかった。個人の特性に関しては、男女ともに年齢が高いことと非喫煙者であることが、高い食事の質と関連することがわかった。さらに、女性ではBMIが高いほど食事の質が高いことがわかった。
図2 日本人成人男性111人における各食事の栄養学的質に関連する要因
図3 日本人成人女性111人における各食事の栄養学的質に関連する要因
本研究は、成人における食事の栄養学的質と食事場面の特性との関連を、生態学的瞬間評価を用いて調べた初めての研究。この研究の結果は、食事の質を改善するための栄養教育や介入に貢献することが期待される。なお、この研究は、やずや食と健康研究所の支援により実施された。
プレスリリース
日本人成人における食事場面の特性と食事の栄養学的質との関連(東京大学)
文献情報
原題のタイトルは、「Association between meal context and meal quality: an ecological momentary assessment in Japanese adults」。〔Eur J Nutr. 2024 May 3〕
原文はこちら(Springer Nature)