暑熱環境における内部冷却の効果を検証 パフォーマンス、自覚的・生理学的指標への影響
暑熱環境下でのスポーツに際して、氷を摂取したりメントールを口に含んでからだの内部から体温を下げる「内部冷却」を行った場合の、パフォーマンスや主観的な暑熱感覚、生理学的パラメーターなどへの影響を、既報研究を対象とするメタ解析で検討した結果が報告された。内部冷却の手法によって異なるが、多くのパラメーターにプラスの影響が認められたという。

外部冷却と内部冷却、物理的冷却と知覚的冷却
暑熱環境で生じる深部体温の上昇は熱中症のリスク上昇となり、かつアスリートの場合はパフォーマンスの低下にもつながる。これに対してとられる体温を下げるための戦略は、外部冷却と内部冷却という二つに大別される。
外部冷却
外部冷却は、体表面からからだを冷やそうとするもので、アイスベストの使用や冷水浸漬が該当する。この手法を競技本番に利用するにはいくつかの条件をクリアする必要があり、競技会での使用が認められていることはもちろん、機器や設備を競技スタート地点近くに搬入できるかいなかやコストなどがネックとなる。
外部冷却の有効性は、多くの研究で報告されている。ただし研究室で行われた結果を実際のレースで再現可能かは、上記の条件に影響される。また、とくに冷水浸漬については競技時間が長時間に及ぶ場合、後半になると効果が低下する可能性がある。
内部冷却
それに対して内部冷却は体内からからだを冷やそうとするもので、物理的冷却と知覚的冷却という二つに細分化される。
物理的冷却
物理的冷却は、氷や冷水を摂取することで深部体温を下げようとするもの。既に氷スラリーを用いた研究のメタ解析が行われており、パフォーマンスの向上との関連が報告されている。
ただし、深部体温が低下することで発汗が抑制される可能性があるとの理由で、高温多湿の条件では構わないが、高温ながらも乾燥している条件では推奨されないとする意見もある。この意見に対しては、発汗量の減少はわずかであり深部体温低下の効果を相殺するほどのものでなく、かつ発汗量の減少は脱水を防ぐという点からは有利に働くとする主張もみられる。
知覚的冷却
一方、知覚的冷却は、清涼感を誘発することで主観的な暑熱感覚を抑制しようとするもの。一般的にメントールが用いられることが多く、これを口に含んで含嗽(うがい)する、またはスプレーを鼻腔内に噴射するという方法がとられる。研究によると、これによって脳の三叉神経領域の活動にも影響が及び、知覚的冷却の効果を得られることが報告されている。ただし、パフォーマンスへの影響のエビデンスはまだ少ない。内部冷却の効果に焦点を絞ったメタ解析
本論文の著者によると、これまでのところ、アスリートの冷却戦略の有効性を検討したシステマティックレビューは行われているが、それらの大半は外部冷却と内部冷却を区別しておらず、また内部冷却の手法による違いの影響も検討されていないという。これを背景として著者らは、内部冷却に的を絞り、アスリートへの影響を、冷却に用いた手法の違いなどにも考慮したシステマティックレビューとメタ解析を行った。
47報の研究報告、研究参加者数500人弱を対象とするメタ解析
システマティックレビューとメタ解析のガイドライン(PRISMA)に準拠して、PubMedを用いて2021年12月17日に検索が実行された。558報がヒットし、タイトルとアブストラクトに基づくスクリーニングで101報に絞り込み、全文精査の結果、最終的に47報の研究をメタ解析の対象とした。
それらの研究参加者数は合計486人で、平均年齢は20~42歳の範囲であり、女性が13.7%。研究時の環境条件は、気温が22~49.6℃、相対湿度は15.4~80%の範囲だった。
氷や冷水を用いた研究は、運動前の評価が17件、運動中の評価が16件、運動前と運動中の双方での評価が9件で行われており、氷・冷水の摂取量は1.25~30g/kgの範囲だった。メントールを用いた研究は、運動前の評価が4件、運動前と運動中の双方での評価が3件で行われており、用いられたメントールの量は2.5~200mgの範囲であり、すべて摂取ではなく含嗽で行われていた。
疲労困憊に至るまでの時間、心拍数、自覚的運動強度などに有意な影響
この研究ではパフォーマンスへの影響、生理学的パラメーターへの影響、主観的な評価指標への影響などを、全体的な解析とともに内部冷却に用いた手法別の解析も行っている。本稿では主に全体的な解析の結果を紹介する。
パフォーマンスへの影響
タイムトライアルのパフォーマンスに対する内部冷却の影響については、7件の研究がメタ解析の対象とされた。解析の結果は、境界域のパフォーマンス低下が認められるというものだった(標準化平均差〈standardized mean difference;SMD〉-0.31〈95%CI;-0.60~-0.02〉、p=0.06)。著者によると、タイムトライアルで評価した場合のパフォーマンスの低下の理由は、運動中に氷または冷水を使用するというタイムロスによって説明されるという。
疲労困憊に至るまでの時間に対する内部冷却の影響については、12件の研究がメタ解析の対象とされた。解析の結果は、疲労困憊に至るまでの時間を有意に延長するというものだった(SMD0.40〈0.13~0.67〉、p<0.01)。ただし、この効果は、運動の前に氷や冷水を摂取した場合のみ有意だった。
平均パワーについては15件の研究が解析対象となった。内部冷却により、境界域のプラス効果が認められた(SMD0.22〈0.00~0.44〉、p=0.05)。
生理学的パラメーターへの影響
深部体温については35件の研究が解析対象となった。内部冷却により、有意な深部体温低下効果が認められた(SMD-0.19〈-0.34~-0.05〉、p<0.05)。同様に、発汗量については33件の研究が解析対象となり、内部冷却により有意な発汗量の減少が認められた(SMD-0.20〈-0.34~-0.06〉、p<0.05)。
心拍数については内部冷却による、わずかに非有意な低下が認められた(SMD-0.13〈-0.27~0.01〉、p=0.06)。皮膚温と乳酸値には、内部冷却の有意な影響が認められなかった。
主観的評価指標への影響
自覚的運動強度(rate of perceived exertion;RPE)については25件の研究が解析対象となった。内部冷却により、境界域のRPE抑制効果が認められた(SMD-0.16〈-0.31~-0.00〉、p=0.05)。
暑熱感覚については23件の研究が解析対象となった。内部冷却により、暑熱感覚の有意な抑制効果が認められた(SMD-0.17〈-0.33~-0.01〉、p<0.05)。
一方、快適さの指標には有意な影響はみられなかった。
著者らは、「持久力パフォーマンスといくつかの生理学的パラメーター、および主観的パラメーターに、内部冷却戦略はプラスの影響を与える可能性がある。ただし、その有効性は用いられる方法と実施するタイミングによって異なる。また今後の研究では、持久系スポーツ以外での検討や、女性アスリートを対象とする検討が必要とされる」とまとめている。
文献情報
原題のタイトルは、「Effects of internal cooling on physical performance, physiological and perceptional parameters when exercising in the heat: A systematic review with meta-analyses」。〔Front Physiol. 2023 Apr 11;14:1125969〕
原文はこちら(Frontiers Media)
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