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相対湿度ではなく絶対湿度が一定なら、高気温のパフォーマンスへの影響はそれほどでもない

持久力パフォーマンスへの気温と湿度の独立した影響を検討した結果が報告された。これまでに行われてきた大半の研究は湿度を相対湿度で評価しており、高気温によってパフォーマンスが大きく損なわれると報告しているが、絶対湿度が同じであれば高気温の影響はそれほど大きなものではないという。

相対湿度ではなく絶対湿度が一定なら、高気温のパフォーマンスへの影響は、それほどでもない

相対湿度が一定では、気温の差による影響は評価不能

冬季より夏季では屋外の持久系スポーツの記録が伸びにくいとすることに、多くの人が同意するだろう。学術的な研究からも、熱ストレスによって持久力パフォーマンスが損なわれることが示されている。ただしそれらの研究は、気温の影響と湿度の影響を区別せずに検討しているものが多く、区別していたとしても、大半は湿度を相対湿度で評価している。

気温が高い場合、空気中に多くの水分を含むことができるようになるため、水分量が同じなら相対湿度は低下する。相対湿度を一定に保ちながら気温の影響を調べたとしても、外気温または実験室内の室温の変化にあわせて空気中の水分量も変動するため、気温のみの影響を評価していることにはならない。

今回紹介する論文の研究背景として述べられているところによると、これまでに湿度を絶対湿度で評価してパフォーマンスへの影響を検討した研究は、1件のみだという。その研究では、高温条件では皮膚温が上昇するのにもかかわらず、パフォーマンスの低下は限定的だったという。ただし、その研究は条件間の温度の差が少なく、運動負荷時間も40分未満であったことが、結果に影響を及ぼしている可能性もあるとのことだ。

以上を背景として本論文の著者らは、より顕著な条件間の差を設定した研究を行った。

絶対湿度を一定にして室温のみを変えたクロスオーバー試験

この研究は、4条件の無作為化クロスオーバー試験として実施された。研究参加者は、有酸素運動のトレーニングを行っている14人(28±13歳、男性・女性が7人ずつ、体表面積1.78±0.12m2)。研究参加前に暑熱馴化が行われていないこと、週に3回以上トレーニングを行っていることが適格条件であり、VO2peakは55±9m/kg/分だった。研究参加前24時間以降は激しい運動とアルコール摂取を禁止し、また参加前2回の食事とカフェイン摂取量は標準化された。女性は黄体期に試行した。

4種類の設定条件について

4条件の試行は、オタゴ大学(ニュージーランド)の研究室内で7~10月に実施された。すべての施行は概日リズムの影響を抑えるために、±0.5時間以内の同じ時間帯に行った。設定された4条件は以下のとおり。

  • 低温条件:1.96kPaで18°C(相対湿度95%)、風速4.5m/秒
  • 中程度温条件:1.96kPaで27°C(相対湿度55%)、風速4.5m/秒
  • 高温条件:1.96kPaで36°C(相対湿度33%)、風速4.5m/秒
  • 高温多湿条件:3.92kPaで36°C(相対湿度66%)、風速4.5m/秒

各試行では、まず自転車エルゴメーターにより70%VO2peakで45分間の負荷をかけた後、20kmのタイムトライアルを実施。走行時間のほかに、皮膚温、直腸温、発汗速度、心拍数、血圧の変化を把握するとともに、自覚的運動強度(rating of perceived exertion;RPE)、熱感覚、高温による不快感などを評価した。

なお、実際の試行環境は、前記の設定条件と比較し、1名の参加者に対する低温条件が0.21kPa(11%)低かったことを除いて、ほぼ条件どおりの環境が再現されていた。

暑熱環境下でのスポーツや作業に伴うリスク評価は、絶対湿度の把握が必要

20kmタイムトライアルの記録は、低温であるほうが好記録だった。最も良好な記録は低温条件で達成された。ただし、中程度温条件との差は非有意だった(p=0.263)。高温条件は低温条件より走行に要した時間が2.2分長く、有意差が認められた(p<0.001)。タイムの差としては、6%と3.6%だった。高温多湿条件は、高温条件よりさらに長時間を要した(p=0.006)。

室温の上昇に伴い、皮膚温の上昇(0.5°C/°C)、心拍数の上昇(1bpm/°C)、発汗量の増加(0.04L/時/°C)の有意な変化が観察された(いずれもp<0.001)。深部体温も上昇する傾向はあったがわずかであり、関連は非有意だった(0.01°C未満/°C,p=0.053)。

著者によると、この研究は湿度と独立した気温の影響を検討した研究として2報目であり、同一の研究室内で温度と湿度の影響を比較した研究としては初めてものだという。また、女性のパフォーマンスに対する熱ストレスの影響も調査した数少ない研究の一つでもあるとしている。

前記の結果を総括して、「気温の上昇は熱負荷を増加させ、有酸素運動のパフォーマンスを低下させた。しかしその影響の程度は、これまで報告されてきているほど大きいものではなかった」と述べている。加えて、「今回の研究から得られた知見は、激しい熱ストレス下で運動または作業する際の絶対湿度の評価の重要性を浮き彫りにしている。熱ストレスに関する今後の研究では、結果に対する湿度の交絡の影響を考慮する必要がある」としている。

文献情報

原題のタイトルは、「Delineating the impacts of air temperature and humidity for endurance exercise」。〔Exp Physiol. 2023 Feb;108(2):207-220〕
原文はこちら(John Wiley & Sons)

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