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IOC策定、暑熱環境でのスポーツイベントの推奨事項と規制に関するコンセンサスステートメント

国際オリンピック委員会(Comité international olympique;CIO)は、暑熱環境でのスポーツイベントの推奨事項と規制に関するコンセンサスステートメントを策定。さきごろ英国スポーツ医学会発行の「British journal of sports medicine」にその論文が掲載された。

IOC策定、暑熱環境でのスポーツイベントの推奨事項と規制に関するコンセンサスステートメント

東京2020対策として策定作業が開始されたステートメント

身体活動の開始に伴い熱産生が生じて、わずか数分で深部体温が上昇する。この変化は環境にかかわりなく生じるものではあるが、暑熱環境では当然その影響が大きい。スポーツの最大のイベントである夏季五輪は、近年では1年で最も暑い時期に開催されることが通例となった。

今回IOCが策定したコンセンサスステートメントも、近代五輪史上、最も過酷な暑熱環境となることが予測されていた東京2020への対策として、同大会の開催3年前から専門部会で策定作業が開始されていた。コンセンサスを得るプロセスはデルファイ法(意見を集約するためにステートメントの候補を作成したうえで、合意と再検討を繰り返す手法)が用いられた。

コンセンサスステートメント全体は、四つのセクションで構成されている。一つ目は「主催者によるリスク軽減のための推奨事項」で、二つ目は「アスリートによるリスク軽減のための推奨事項」、続いて三つ目が「医療サービスと管理に関する考慮事項」であり、最後の四つ目は「国際競技連盟によるリスク分析とポリシー策定のガイドライン」。全体で20ページ以上に及ぶ論文の中から、ここではセクション1と2の中の推奨(ステートメント)の一部を抜粋して紹介する。

セクション1:主催者によるリスク軽減のための推奨事項

環境モニタリング

都市/地域の過去の気象データ(少なくとも温度と湿度)は、少なくとも10年以上さかのぼって収集し、イベント開催地決定以前に提示する必要がある。過去に極端な高温が記録されている場合、その場所での開催決定から競技期間中にわたり、国際競技連盟(International Sports Federations;IF)が継続的にモニタリングする必要がある。

氷の供給

すべての関係者(IF、アスリート、スタッフ、医療、メディアなど)に氷が必要とされ、熱関連の問題が発生した場合に氷が不足することのないよう考慮されるべき。競技会場のコーディネーターは、会場の医療担当者のニーズに応じて、氷の輸送、財務、セキュリティーを含む計画立案の権限を付与されなければならない。

競技中の確実な水分補給を可能とする

スペース、電源の確保、冷却装置の設置に必要なセキュリティー認証を計画する。すべてのスポーツで可能とは言えないが、競技の待機時間や休憩時間などには日陰などに入れるように計画する。

競技距離や期間の短縮

暑熱対策として競技の距離や期間を短縮することが考慮されるが、その実施に伴い医療サービスの質が変わる懸念があるため、当初からそのような変更の可能性が計画に組み込まれており、医療担当者によって承認されている場合を除き推奨されない。ただし、イベントでのケアレベルを変更することなく、熱に関連するリスクを大幅に軽減できる場合は、競技の距離や時間を短縮することを検討可能。

ミストファン

ミストファンの有効性は設置場所や環境条件によって異なるが、とくに湿度が低く、空気の動きが少ない高温での大規模な集会や観客に冷却効果を提供するのに適している。ウォームアップエリア、試合中の休憩エリアでの冷却効果を提供するのに適している可能性もあるが、それを使用するか否かをアスリートが判断できるように配置する必要がある。

セクション2:アスリートによるリスク軽減のための推奨事項

馴化

アスリートは、暑熱環境で競技する前に熱順応を行う必要がある。その理想的な方法は、イベント条件と同様の環境でトレーニングすること。それができない場合は、深部体温と皮膚温を上げ、発汗を刺激し、皮膚の血流を増加させる他の方法(例えば、厚着をしてのトレーニング、受動的な熱への曝露)を代替として用いる。

順応するための最適な期間は、少なくとも2週間、1日あたり60~90分だが、それより短い期間でも熱順応を引き起こす可能性があり、それらが最適ではないという前提の下で「行わない」という選択はすべきでない。推奨頻度は、熱馴化のために少なくとも週に4回のセッション、馴化後の維持に週に2回のセッション。

水分補給の原則

競技中の水分補給の機会は限られる。よってアスリートは、トレーニングや競技の前日からの水分補給状態を確認する必要がある。水分補給状態をモニタリングする簡便な方法は、体重、尿色、口渇感であり、体重変化は1~2%未満を維持する必要がある。

セクション2ではこのほかに、競技中の水分摂取、回復のための水分摂取、電解質補正の考え方、炭水化物摂取、ウエア、日焼け対策、サングラスなどについて、エビデンスのまとめとそれに基づくステートメントが掲げられている。

また、ステートメント全体の要点が「キーポイント」として、以下の5項目にまとめられている。

コンセンサスステートメントのキーポイント

  1. 暑熱環境でのスポーツイベント中に、選手の健康と安全を守るには、開催地の組織委員会、国内および国際競技連盟(IF)、選手とそのスタッフ、医療チームの関与と協力が必要とされる。
  2. 開催地の主催者は、イベントの開催前から開催期間中を通して環境条件をモニタリングして公表し、十分な氷と水分を提供して、適切な熱ストレス緩和施設(日陰や回復エリアなど)を提供する必要がある。
  3. アスリートは、予想される環境条件に備え、イベント前に暑熱順化を含めて健康状態をコントロールし、予想されるリスクに応じて水分補給、冷却、ウォームアップ、ウエアを計画する必要がある。
  4. 医療提供者は、暑熱関連事象の早期発見と診断(直腸温の評価を含む)、および現場での急速な全身冷却に努める。
  5. 国際競技連盟(IF)は、リスクのレベルと関連する対策について、明確なコミュニケーションツールを備えた対策を策定することが奨励される(例えば、熱ストレスを1~5のレベルにスケール分類して色分けして提示する)。

文献情報

原題のタイトルは、「IOC consensus statement on recommendations and regulations for sport events in the heat」。〔Br J Sports Med. 2022 Sep 23;bjsports-2022-105942.〕
原文はこちら(BMJ Publishing Group Ltd & British Association of Sport and Exercise Medicine)

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